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多摩川の夜の異影【怪談・怖い話】

これは、東京の多摩川沿いに住んでいた大学生から聞いた話だ。

彼が住んでいたアパートは23区外で、最寄りのコンビニまで歩いて10分以上かかるような場所にあった。15年ほど前、彼はしばしば夜更かしをしていて、その夜もお腹が空いて駅前のコンビニへ向かおうと深夜に外出した。しかし、何となく気まぐれで、遠回りして多摩川の土手を歩くことにしたのだ。

土手の北側にはマンションが建っており、その明かりで土手の上はそれほど暗くはなかった。しかし、深夜ということもあり、人通りは全くなく、自分が不審者のように感じたと彼は言う。数分歩いた頃、彼は川側の土手の下からガサガサと音がするのに気づいた。

音の方向を見ても、土手が影になって光が届かず、真っ暗で何も見えない。彼は光に背を向け、目が慣れるまで待ったが、その間もガサガサという音は止まらなかった。薄ら寒いものを感じながらも、好奇心が勝ち、彼は音の正体を確かめようとした。

目が慣れてくると、草むらの中で何か白っぽい影が走り回っているのが見えた。一瞬、それが犬か何かと思ったが、その影は直径2メートルほどの狭い範囲を、延々とぐるぐると走り続けていたのだ。ぐるぐるガサガサ、ぐるぐるガサガサと。

その光景を認識した瞬間、彼の全身に鳥肌が立ち、これはやばいと思ったという。とにかく、その「何か」に気づかれないように、彼はゆっくりと後ずさりし、マンション側の土手の階段を降りてその場を後にした。コンビニまで逃げるように歩き、途中で何度も後ろを振り返ったが、幸い何もついて来なかった。

その後も、何か異変があったわけではないが、彼はあの夜の出来事が頭から離れなかった。あれは犬か何かの動物だったのか、あるいは人間だったのかと考えたが、どちらにせよ、夜中に土手下の草むらの中を延々と走り回るのは普通ではない。もしそれが人間だったとしたら、完全に頭のおかしいやつだと思ったという。

今でも、あれは何だったのだろうと気になってしまうが、確かめなくて良かったとも思っている。もし、あなたが彼の立場だったら、確かめてみただろうか?

[出典:829 :本当にあった怖い名無し:2021/07/11(日) 02:00:53.54 ID:BWzpFvQN0.net]


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