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製材会社の工場【怪談・怖い話】

これは、派遣社員として働いていた男性が体験した、ある山奥の製材工場での出来事だ。

彼が紹介されたのは、道東の山深い場所にある、冬季限定で稼働する製材工場だった。仕事はフォークリフトを使った製材の積込作業。職場は工場長と無口な作業員二人、そして飯場のおばちゃん、計四人だけ。条件は良く、三食付きで風呂も広く、テレビ付きの個室も与えられていたため、当初は快適な環境だと感じていた。

しかし、一つだけ奇妙なことがあった。話し相手が工場長しかいないのだ。無口な作業員たちに挨拶しても、風呂で一緒になっても、一言も返ってこない。飯場のおばちゃんも無口で、まるで周りの人々が存在していないかのように感じられた。工場長にそのことを尋ねても、「気にするな」とだけ言われ、深くは考えないようにした。

1ヶ月の契約が無事に終わり、工場を後にした彼は、営業係とともに御礼のため再び現地を訪れることになった。ところが、到着してみると、工場は無人で、雪に覆われていた。まるで長い間閉ざされていたかのように。昨日まで自分が働いていた工場とは思えない光景に、彼と営業係は呆然とした。

本社がある麓の町にも行ってみたが、そこも無人で廃墟同然だった。まるで、工場全体が忽然と消え去ったように感じられた。営業係は「やられたな」と呟き、彼もタダ働きを覚悟した。

しかし、数日後、奇妙なことが起きた。工場から満額の入金があったというのだ。本当に現金が振り込まれていたというその話を聞いて、彼は驚くとともに不気味さを感じた。あの無人の工場、一切の怪奇現象はなかったものの、全てが終わった後に残る違和感だけが、彼の胸に深く刻まれていた。

いまだに、彼はその出来事を思い出すたびに、あの山奥の工場を一人で気味悪く感じているという。

[出典:ディアス造船所@dias35424661/2022-07-13 22:15:37]



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