マガジンのカバー画像

怪異・怪談・怖い話・不思議な話

235
運営しているクリエイター

2024年8月の記事一覧

岩塩と青LEDに封じられた怨念【怪談・怖い話】

これは、あるIT企業に勤める竹内さん(仮名)から聞いた話だ。 竹内さんが駆け出しのシステムエンジニアだった頃、Windows XPからWindows 7への移行が盛んに行われていた。彼が担当したのは、小規模な製造業を営むA社での作業だった。小規模とはいえ、200台近いパソコンの移行作業を、数人のチームで一日で終わらせるというタイトな計画が組まれていた。 A社の事務所に初めて足を踏み入れたとき、竹内さんは不思議な違和感を覚えたという。事務所内には金属と油のにおいが充満し、そ

ジェレミー・バンバー【怪談・怖い話】

これは、ジェレミー・バンバーという男が引き起こした惨劇について、地元では知られた話である。 多くの人々は、彼が遺産目当てで家族を皆殺しにしたと信じている。しかし、この事件の背後には、単なる金銭欲とは異なる、深い憎悪が隠されていたという。 ホワイト・ハウス・ファームと呼ばれる農場は、美しい田園風景の中にひっそりと佇んでいるが、その静けさは、この家で起こった惨事を覆い隠すにはあまりに薄っぺらいものだった。 ある日、ジェレミーの通報を受けた警察が現場に駆けつけたとき、家の中は

静寂に潜む背信の霊章【怪談・怖い話】

これは、かつて私が勤めていた会社で実際にあった話だ。 その会社は中規模で、社長はワンマン、上司たちはイエスマンばかり。社内の雰囲気は悪く、陰湿なイジメが蔓延していた。そんな中で唯一の友人がいた。彼は30代の渋い男前で、どこか陰のある人物だった。飲みに行く仲になると、彼はかつて長い付き合いだった彼女を事故で亡くしたと話してくれた。婚約していたが、結婚前に彼女は死んでしまい、葬儀や墓の手配は彼女の実家が行ったという。「遠方で墓参りにもあまり行ってない」と言う彼は、彼女からもらっ

量子的人形論【怪談・怖い話】

これは、友人から聞いた話だ。 彼は人形作りが趣味で、週末になると自宅の小さな工房で精巧な人形を作っていた。材料を選び、顔を彫り、細かい表情まで丹念に作り上げる。その作業は、まるで人形に魂を吹き込むかのような慎重さと集中力を要したという。 ある日、彼は新しい人形を作り始めた。特に目元にこだわり、どこか憂いを帯びた表情に仕上げたのだという。だが、その人形が完成した後から、彼の周囲で奇妙な出来事が起こり始めた。最初は小さな異変だった。例えば、工房に置いていた工具の位置が勝手に変

降頭の兵隊【怪談・怖い話】

これは、ある人物から聞いた話だ。 彼が最初にこの話を書き込んだのは3年前。当時、ガンプラを盗もうとして入った店での出来事がきっかけで、占いの勉強を始めたという。 高校3年の受験が終わり、合格発表で浮かれていた頃、彼は引っ越しの準備で忙しい中、久しぶりに恩師を訪ねた。 大学合格の報告も兼ねていたが、恩師のお見舞いが主な目的だった。3年前に書き込んだ時、恩師は既に体調を崩しており、当時の恩師はさらに痩せてやつれていた。 彼が訪れた際、恩師はパジャマ姿で寝ていた。彼はそんな恩

青黒い犬【怪談・怖い話】

これは、青森県にある弘前市の奥深くに佇む烏森家にまつわる、異様で陰鬱な話だ。 かつては地元で名を馳せた地主の家系だったが、今ではその一族は解散し、家名も忘れ去られた。しかし、家系に伝わる忌まわしい運命だけは、今もなお消えることなく語り継がれている。 烏森家の男たちは、代々《青黒い犬》と呼ばれる怪異に取り憑かれていた。これは、ただの噂話や子供を脅かす作り話ではない。 誰一人として逃れることができず、例外なく追い詰められ、そして消えていった。青森の寒風が吹き荒ぶ山間にあるその

北朝鮮国境【怪談・怖い話】

これは、ある日本人旅行者がフィリピンの小さな露店バーで、韓国から来た一人旅の青年Dと出会ったときに聞いた話だ。 そのバーは、茹だるようなフィリピンの暑さの中で、南国特有の湿気が体にまとわりつき、冷たいビールが唯一の慰めだったという。Dは、K-POPアイドルのような派手さはなく、むしろチャン・ドンゴンを彷彿とさせる爽やかなイケメンで、すぐに打ち解けた二人は、自然と怪談話に花を咲かせることになった。 Dが話し始めたのは、彼が大学生の頃に徴兵され、北朝鮮との国境地帯での経験だっ

古民家の解体工事【怪談・怖い話】

これは、奈良県で家屋の解体業を営む山田さん(仮名)から聞いた話だ。 十数年前、彼が手掛けた古民家の解体工事は、他の現場とは一線を画す異様な雰囲気に包まれていたという。解体する家は、奈良の田舎にぽつんと佇む、時の流れを忘れたかのような古い家屋だった。天井が高く、木造の梁がむき出しになったその屋内に、一歩足を踏み入れると、何かしらの不穏な気配が漂っているのを感じた。山田さんとその仲間たちは、まず屋根瓦を落とすために二階の天井をぶち抜いた。だが、その瞬間、彼らの目に飛び込んできた

「闇に消えた山の記憶【怪談・怖い話】

これは、10年前に仕事で出張していた時に、ある同僚から聞いた話だ。 その男、仮にYとしよう。彼は地方の山奥にあるラブホテル街へ、仕事の打ち合わせで訪れたという。Yは現場での打ち合わせが終われば、そのまま市内で美味しい夕食を楽しんで帰ろうと、軽い気持ちでいた。しかし、現場は予想外に手間取ってしまい、時計の針が夜の7時を回っても終わらなかった。 疲れた体を引きずりながら、Yは車に乗って食事を探しに行こうとした。その時、ふと目に入ったのが、ホテルの裏手に広がる山の中腹に見えた数

窓の向こうに潜む影【怪談・怖い話】

これは、専門学生の独り暮らしの若者が実際に経験した恐ろしい話だ。 彼が住んでいるのは、アパートの一階の角部屋。南向きの窓と東向きの出窓があり、その東向きの出窓はアパートの駐輪場に面している。出窓には大家が取り付けたプラスチックの板があるが、完全には隙間を覆っておらず、夜になるとその隙間から妙な気配を感じることがあった。 ある深夜のこと、彼は眠ろうとして布団に入ったが、どうしても眠れない。心臓がざわざわし、何かが自分を見つめているような気がして仕方がなかった。すると、突然「

艮の神(丑寅の神)【怪談・怖い話】

これは、私の叔母から聞いた話だ。 かつて、東北の奥深くには「ウシトラの神」と呼ばれる強大な神が封印されていたという。 話は私がまだ幼かった頃、正月の家族の集まりで起きた。祖父母や叔母を含め、皆でお雑煮を囲んでいたそのとき、ふと叔母が私にお雑煮を食べさせまいとしたのだ。理由を尋ねると、叔母はおぞましい伝説を語り始めた。 「お雑煮というものは、実は古代の闇の勢力が封印された神の体を切り刻み、何も知らない民衆に食べさせるための呪術的な儀式なのだ」と、叔母は言う。日本に渡来した

多摩川の夜の異影【怪談・怖い話】

これは、東京の多摩川沿いに住んでいた大学生から聞いた話だ。 彼が住んでいたアパートは23区外で、最寄りのコンビニまで歩いて10分以上かかるような場所にあった。15年ほど前、彼はしばしば夜更かしをしていて、その夜もお腹が空いて駅前のコンビニへ向かおうと深夜に外出した。しかし、何となく気まぐれで、遠回りして多摩川の土手を歩くことにしたのだ。 土手の北側にはマンションが建っており、その明かりで土手の上はそれほど暗くはなかった。しかし、深夜ということもあり、人通りは全くなく、自分

橋の下の笑顔【怪談・怖い話】

これは、自分が勤めている会社の先輩、新関さんから聞いた話だ。 自分の勤め先の事業所は、周囲に人家もまばらな田舎の地にある。そこから徒歩十五分ほどのところに独身寮があり、私はそこに住んでいる。最近、寮に住む秋場さんという先輩が亡くなり、葬式が執り行われた。その死に関して、新関さんから聞いた話は実に不気味で、今でも背筋が寒くなる。 秋場さんは、その日、事業所の裏門を抜け、住宅街を通り抜けるいつもの帰宅ルートを辿っていた。その道中、県道にかかる小さな橋を渡るのだが、その橋の下の

国有鉄道の宿舎【怪談・怖い話】

これは、私の知り合いが体験した話だ。 かつて国有鉄道の職員宿舎として利用されていた一軒家が、山の中腹にぽつんと佇んでいた。管理局からの転勤命令で、その家に父親が単身赴任することとなった。山といっても、その街の繁華街からほど近く、駅前の賑わいからは想像もつかない静寂がその家を包んでいた。斜面を少し登ったところにあるその宿舎は、昭和の終わり頃でも既に古びており、建物の木製窓枠や、屋内のどこかカビ臭い匂いが歴史の重みを感じさせた。 中学生だった私は、母と共にその宿舎に入った。荷