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都営地下鉄の車両の混雑予測を精緻にお知らせ!~開発までの道のりを聞く~

3月24日、東京都交通局は、都営地下鉄における平日全列車の車両別の混雑予測情報について、都営交通アプリでの提供を開始しました。

このアプリでは、これまでも、「列車別」の混雑予測を提供していましたが、これに加え、車両の重量データを活用することで、「何号車が空いているか」など、より精緻に混雑予測情報を提供することが可能となりました。

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この機会に、このアプリをダウンロードしてみてください!
(下記の画像をクリックすると、アプリのダウンロードページに移ります)

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官民連携チームでデジタルに感化される

新型コロナにより密に対する意識が高まる中、いかにして新たなサービスの導入を進めてきたのか。今回は、この取組を統括する交通局総務部企画調整課の増山裕信(ひろのぶ)課長代理にオンラインインタビューを敢行し、取組の背景や導入に至る経過に迫りました。

——最初に、増山さんのご経歴を簡単に教えていただけますか。

電気職として東京都に入庁し、現在15年目、交通局は8年目になります。現部署には3年前に配属され、技術的な視点から地下鉄やバス事業等の企画立案に携わっています。

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——増山さんは、デジタルに関する知見などは持っていたのですか?

一昨年、東京ベイエリアの将来ビジョンを検討する官民連携チームに参加し、デジタル分野への興味や関心が高まりました。そこで今年度開催された「デジタルシフト推進リーダー養成研修」を受講し、知識を蓄えてきました。

車両データから混雑を予測

——今回、混雑予測のバージョンアップに取り組んだのはなぜですか?

交通局では、これまで、ダイヤ改正等に活かすために混雑状況の調査を職員が実地で行っており、その結果を局のホームページで提供していました。列車が駅に停止するわずかな時間の間に混雑状況を判断しなければならず、職員のスキルに依存する作業でした。

新型コロナの感染拡大により、鉄軌道事業における感染防止対策のガイドラインが策定され、混雑情報の提供に努めることが求められました。お客様からも、混雑情報を提供してほしいという声が多く聞かれるようになってきたことから、現在の取組をバージョンアップするべく、昨年7月ごろから局内の各部と協力し、本格的に検討を始めました。

——どのような経緯で車両別の混雑予測を行うことになったのですか?

当初は、車両の重量センサーにより得られるデータを通信によってリアルタイムで把握し、車両別の混雑状況を可視化する方法や、駅のホームにカメラを設置して画像解析する方法など、様々な方法を検討しました。しかし、これらは、設備投資やサービス開発に時間・コストなどがかかり、スピード感をもって対応することが難しいと判断し、別の方法を検討することにしました。

そこで改めて”密を回避したい”というお客様のニーズに立ち戻り、どのような混雑情報を提供すべきか、ユーザー目線で再検討することにしました。

テレワークや時差出勤を行うかどうかの判断材料とする場合、リアルタイムな混雑情報よりも、乗る予定の列車はどれぐらいの混雑になるのかという予測的な情報の方が重要だと考えました。また、列車に乗る場合、少しでも空いている車両を選びたいというニーズも踏まえ、「車両別の混雑状況」を予測することとしました。

——どのように車両別の混雑状況を予測するのでしょうか?

元々、都営交通アプリでは、アプリの開発に携わっている民間事業者が人流等のビッグデータをもとに作成した列車別の混雑予測情報を提供していました。

この技術に、当局が車両から取得する各車両の重量データを組み合わせることにより、車両別の高精度な混雑予測を速やかに実現することができました。

自ら周囲に働きかけ、プロジェクトを推進

——どのようにプロジェクトを推進されたのか、教えてください。

いち早く混雑情報を提供すべく、局内の関係部署の担当者を集めた横断型のチームを立ち上げました。

混雑予測情報の提供方法については、他の鉄道事業者の取組に関する情報収集を行い、混雑の実地調査を担っていた担当やアプリの担当などと部署をまたいで議論しながら進めていきました。

また、車両の担当や電車運転の担当の協力のもと、昨年9月から本格的にデータ収集と解析を繰り返し、不足しているデータは何か、1つ1つ検討と改善を重ねることで徐々に解析精度を向上してきた結果、一定の精度の品質が担保できたことから、このたびアプリをバージョンアップすることになりました。

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デジタルの力で安心・安全な鉄道を維持していく

——今後のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進への意気込みを教えてください。

本取組の結果、より少ない労力でお客様により便利な情報を提供することができるようになりました。将来的な人口減少というリスクがある中でも、鉄道に求められる定時性や安定性は変わることはありません。デジタルの力を使って、今まで人間が担っていた業務をどうカバーしていくべきか、継続して考える必要があります。この取組に満足せず、今まで以上の安全やサービスの質を確保できるよう、引き続きチャレンジしていきたいと考えています。

交通局では、この他にも、電車やバスの運行情報や、運賃・時刻表、駅のバリアフリー情報などを、公共交通オープンデータセンター等を通じてオープンデータとして公開しています。

都営交通の安全・安心の確保に向け、交通局の取組は続きます。

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「シン・トセイ」戦略では、改革実践のキーワードとして「スピード」「オープン」「デザイン思考」「アジャイル」「見える化」の5つを掲げています。

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増山さんは、地下鉄を利用するお客様の目線に立ち(「デザイン思考」)、「スピード」感を重視して、早期に着手可能な混雑状況の提供へと「アジャイル」に方向転換しました。その結果、昨年9月のデータ収集開始から約半年で新たなサービスの提供を実現しました。

また、検討の過程では、部署の垣根を超えた議論はもとより、アプリを提供する事業者と「オープン」な議論を重ね、より精緻な情報提供に結びつけています。

こうした取組が他の職場にも波及していくよう、改革実践のキーワードを都政全体の新しいスタンダードとして定着させ、職員一人ひとりへの浸透を図っていきます!

今回ご紹介した交通局の取組は、「シン・トセイ」戦略(案)の各局リーディング・プロジェクトの1つ(「車両データを活用した地下鉄車内の混雑情報の提供プロジェクト」)です。2022年度には三田線に車両情報収集システムを導入し、混雑データを自動的に収集していく予定です。
他にも、各局が様々な取組を展開しておりますので、ぜひそちらもご確認ください!
【ご意見募集】
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