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東京都と区市町村のCIOが連携し、DXを推進:CIOフォーラム対談 with調布市

東京のDXを強力に推進するためには、東京都だけでなく、都内の区市町村ともタッグを組んで進めていかなくてはなりません。そのため、東京都と区市町村のCIO(情報統括責任者)が密接に連携し、協力を深めていくことを目的として「東京都・区市町村CIOフォーラム」を実施しています。

この度、CIOフォーラムにおける活動の一環として、各区市町村のCIOと東京都のCIOである宮坂副知事が、テクノロジーの情報や導入ナレッジの共有化のため、ざっくばらんに語り合う座談会を企画しました。

そこで、今回は「調布市CIO×東京都CIO対談」をお届けします!

令和3年8月16日に「東京都・区市町村CIOフォーラム座談会」として調布市CIOと都CIOの対談を実施しました。

【参加者(敬称略)】
調布市CIO:調布市副市長 伊藤 栄敏
調布市副市長:黒岩 幸三
東京都CIO:宮坂 学
東京都デジタルサービス局戦略部長:深井 稔

調布市最大の課題-窓口混雑の解消

図5

市民が選べる要素を増やすことが重要

調布市CIO:伊藤
調布市では、「行政のデジタル化」に向け、全庁横断的な推進体制を構築し、具体的な「戦略案」の検討を開始しました。特にデジタル人材の育成については、東京都やJ-LISに職員を派遣して先進的な取り組みや関連性を持ち、多様な主体と連携しながら、市民生活の利便性向上を目指し、スマートシティの実現に努めています。

―――調布市様より、デジタルの力で解決したい課題を教えてください。

伊藤
調布市の繁忙期の窓口では一日の来庁者が1,000人以上となり、市民一人が手続きをするのに2時間も要することがあり、混雑が深刻な状況です。コロナ禍という事情を考えると、特にこの問題を解決する必要があります。そのためには窓口手続をデジタル化し、窓口の滞留時間を減らすと共に、窓口に来なくても手続きができる環境作りが必要です。

東京都CIO:宮坂
デジタル化できる部分に関してはどんどんデジタル化していき、行政手続きのオンライン化などにより窓口に来る人の数を減らす、そして、来庁者に対してもデジタルを活用し一人あたりの滞在時間を減らすという2つの軸で進めていくといいかもしれないですね。ただ、すべてオンラインでできるということではないし、福祉関係など、対面も時には必要だと思います。

伊藤
そうですね。できるところからデジタル化に着手していき、窓口対応の時間を減らすなど努力していきたいと考えています。一方、福祉の相談など、対面で丁寧に行なうべきところに人材を充てていきたいと考えています。

宮坂
大事なのは市民が選べる要素を増やすことだと思います。オンラインを選びたい人はオンラインを選べばいいし、窓口を選びたい人は窓口を選べばいい。ただ、今はオンラインを選びたい人でも窓口になりがちですよね。

都もオンラインの比率を増やしていき、窓口を選びたい人だけが窓口に来るようになれば、窓口対応の品質をより上げることができると考えています。

―――デジタル化のみを目的とするのではなく、対面ならではの良さも活かした二刀流でいくことで、よりよい行政サービスを都民や市民の方々に提供することが大事ということですね。

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オンライン化を推進するための人材不足について

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顔の見える関係の構築が重要

―――また、調布市様はIT人材の育成も課題と考えているそうですね。

伊藤
調布市のデジタル化戦略を進めていくうえで、今年4月に全庁的にデジタル化を進めるため、デジタル行政推進課というのを作りました。そこの人間はしっかりとした専門分野の知識を持つべきなのですが、先ほど話題に上がった窓口のような現場でもIT知識を持つことが重要だと考えています。

東京都デジタルサービス局戦略部長:深井
人材育成は都の職員も同じ課題を抱えています。コアの人材だけでなく窓口対応している職員についてもどうすればレベルが上がるかについての方法など、情報交換できればいいなと思っています。

調布市副市長:黒岩
研修をするにしてもゴールや目指す姿があると分かりやすいというのが正直なところです。

宮坂
人材育成に関して、教育や研修がとても大事だなと思っています。公務員である以上、仕事の内容に共通する部分があるので、8割は同じことを勉強すると思います。我々もできるだけ研修や勉強会、セミナーを増やしたいと思っていますが、最前線でやっている現場の方も気軽に参加しやすいようにするには顔の見える関係を構築することが重要です。

東京都でも、もともと都庁職員向けに実施していた「都庁デジタルセミナー」を区市町村の職員にも門戸を広げています。今は難しいですが、いつかは勉強した後に一杯やりながら関係を深めたりできたらいいんですけどね(笑)

Vスマホ

デジタル環境の整備


スマホがデジタル・ガバメントの第一チャネルに

―――IT関連で、人材面だけではなく職員の業務環境面に関してはどうでしょうか。

宮坂
都は、デジタルで働きやすい環境を職員に届けたいと思っています。その中の一つがスマートフォンの配布です。都民が使っているメイン端末はどんどんスマートフォンに移行しています。ということは職員が自分たちのサービスをスマートフォンで作る練習をしていかないとユーザー目線に立てません。しかしBYOD(Bring Your Own Device)はセキュリティの面で問題はないでしょうか。調布市さんは何かそういった検討はしていますか?

伊藤
スマホで情報を簡略化して、情報をやりとりするというのはなかなか難しいのが現状ですね。そこまではいっていないですが、文章だけではなく要点を絵にまとめて説明するとか、文化が少しずつ変わってきている。この変化をスマートフォンへの移行とか、次のステップへ繋げていければいいと思います。

宮坂
都では一部の部署で試行実施して、スマホ文化に慣れてもらうつもりです。慣れていない中で急にサービスを作れと言われてもなかなかできません。プライベートではメッセンジャーを使っていても、仕事では使っていない職員もいます。試行実施の結果は、良いものだけでなく悪いものも含めて皆様にフィードバックしていきますね。

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黒岩
市役所は窓口や来庁者の数も多いです。デジタル機器の整備状況などの市部や区部の現状を踏まえて、デジタル化のモデル自治体のようなところを選んで徹底した支援をいただけると、モデルケースとなってよいのでないか、調布市としても、外からの視点、観点をいただいたうえでやっていきたいと思います。

システムの標準化に向けた財政支援と横展開(自治体等との連携推進)


一皿をみんなで分かち合う

伊藤
システム標準化に関しては、手続のオンライン化や業務の効率化、コスト削減など期待するところがありますが、課題意識も持っています。これまでは自治体独自でシステムや業務を進めてきたところで、国が17業務を標準化するということで、どうやって移行していくのか?財政的な経費をどう賄っていくのがよいのか?人材も不足している中ですし…。

宮坂
システム標準化の支援は考えていきたいですね。本当は都が各区市町村当たり2人くらいサポートできるといいですが、それだけで120人ぐらい必要になります。しかし、システムを標準化すれば、システム単位でサポートができるためそこまでの人員は必要なく、サポート側の専門性も高くなります。
併せて、区市町村の方と仕事をするにあたり、どうすれば同じシステムを横展開できるのか、ということが結構鍵になると思います。そういった話はぜひCIOフォーラムで聞きたいですね。今まではそういった枠組みがありませんでしたが、これからは、1団体でつくったものをフォーラムを通じて62団体へ横展開していきたいと思います。

伊藤
そうですね。今まできめ細かく作っていたサービスを標準化すると質が低下することもあるかもしれない。だからこそ、標準化から良いサービスを提供できるかというのを、横でもうまく連携しながらやりたいですね。

図7

宮坂
これからはそれぞれが一品料理を作るのではなく、一皿をみんなで分かち合う形で進めるべきです。そのための話し合う場がなかったので、今回CIOフォーラムを作りました。
システム標準化の究極はオープンソース化です。今はお互いが知ったこと・学んだことを分かち合うことしかできませんが、これはお金もかかりませんし、その上でシステムは独自に作ってもいいわけです。テレビで言うと「し◯じ◯先生」のように、成功事例だけでなく失敗事例も含め、みんなでどんどん共有できるような土台を少しずつ作りたいと思っています。

伊藤
多摩市の取組も進んでいると5月のCIOフォーラムでもあった。各市の発表会みたいなことをやれればいいですね。

宮坂
そうです、まさにそのイメージです!

―――活発ないい議論をしていたところですけれども、お時間も来たようですので、今回の座談会はこれで終了します。普段の会議とは違う、ざっくばらんな意見交換ができて非常にありがたく思っています。
本日はありがとうございました!


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