見出し画像

「らしさ」のつくり方:能力の高さと肯定感は一致しない

「どうすれば、人から認められる?」

子どもから大人まで、人から認められたい気持ちは万国共通です。
賢くなれば、オシャレになれば、お金を稼げば、痩せれば、鍛えれば……人から認められて、自分を認められそうな気がします。

「ありのままの自分を認めることが大切だ」と言われても、いまいちピンときません。それよりも、まず何か「実績」を作ってしまった方が、自分を認められそうな気がします。

東京の大学生のりおちゃんも、かつてはそんな女の子でした。

画像1

◆ ハイスペック女子高生の本音

りおちゃんの実績を聞くと、「すごい学生」の印象が強く残ります。

・高校は県内2位の名門校
・学生団体の立ち上げは5つ
・オーケストラではコンサートにも出演
・新聞やテレビの取材経験も多数

「やってみたい!」と思ったことを実行に移せる能力を、りおちゃんは備えていました。それなりに能力が高い華の女子高生には、無限の興味と好奇心が広がります。
しかも、学校には憧れの先輩もたくさんいます。

「Hさんは、雰囲気が柔らかくて、愛嬌があってかわいい!」
「Oさんは、凛として自立しててかわ位い!」
「Mさんは、明るくて人気者でかわいい!」

理想の女の子像も膨らむばかり。
高い能力は、可愛らしく見せるための勉強にも役立ちました。いろんな人から注目され、気に入られ、りおちゃんは悪くない高校生活を過ごしました。

(でも、本当の自分って、何なんだろう?)

ただ、憧れに近いたり、人に好かれたりするだけでは、ふとした時に疑問が残ります。その不安が何なのかわからないまま、りおちゃんは関東の大学に進学しました。

◆ 憧れの人になるほど、突きつけられる現実

「誰かの元気になるような仕事ができたらいいな」
大学生になったりおちゃんは、進路やキャリアのことも現実的に考え始めました。子どもの頃から「声」を使う楽しさを感じていたので、アナウンサーを目指しました。

画像2

芸能事務所に所属し、アナウンサーに近づくべく、選抜オーディションを受け始めました。憧れの人になりきり、万全の体制で迎えた選抜オーディション。

そこで待っていたのは、あまりにも厳しい現実でした。

「見た目も中身も、40点だね」
「可愛くないのに、よく受けに来れたね」
「見る人が見れば、わかるんだよね」

完璧に準備したはずのオーディション、りおちゃんへのフィードバックは辛辣でした。表面的なファッションや振る舞いは真似できても、自信がない部分で必ずボロが出ます。

台本の暗記が飛び、笑顔が引きつり、自分の名前すら間違う始末……何度オーディションを受け直しても、なかなか次へ進めません。

「何が問題なんだろう?」
りおちゃんには反省できるだけの知性も備わっています。
頭を働かせ、美容の研究やレッスンに力を入れました。

・半年かけて10kgの減量に成功
・服装やヘアメイクはさらにキラキラふわふわに
・サークル活動もいくつも掛け持ちして自己PR力アップ

りおちゃんががんばるほど、大学の友人の評価はよくなっていきました。

「ふわふわしてて女の子らしいね」
「控えめでとっても可愛い!」
「痩せてまた綺麗になったんじゃない?」

しかし、磨いても磨いても、心の中の不安はなかなかぬぐえません。
(でも、本当の自分って、何なんだろう?)

画像6

オーディーションを30回以上受けた結果、次へ進めたことは一度としてありませんでした。

「……こっちの道じゃなかったのかもしれない」

憧れを目指して進んできたりおちゃんでしたが、ようやくここで自分を見つめ直し始めました。はっきりと挫折したことがかえって良かったのかもしれません。

プロの世界では、自分を演じても評価されることはない。これだけ全力でがんばっても先へ進めないなら、自分の態度や行動の何かが間違ってる。そう思えたのは、自分を深く理解してくれる友だちがいたからかもしれません。

「りおは行動力があって、芯が強いから」
「ほんとはあんまり女の子らしくないのにね」
「もっと素直な自分をそのまま出したら?」

本当の自分は、「世間に見せたい自分像」とは違うのかもしれない。
(偽ったって、どうせバレるなら……)

りおちゃんは開き直って、なるべく素の自分を普段から見せるようにしていきました。

原稿を一字一句覚えるような努力をやめ、可愛さアピールのファッションをやめ、無謀なダイエットをやめ……なるべく見せないようにしていた自分を見せるようになっていきました。

そうして迎えた、ラジオパーソナリティのオーディション。「こんな状態で大丈夫かな」と思っていたら、

画像3

今度は意外とあっさりパスしてしまいました。

(もしかして、素の自分が一番魅力がある?)
こうしてりおちゃんの本当の人生は、次のステージへ進み始めました。
本当の魅力に気付き始める頃には、もう成人式も目前に迫っていました。

◆ 大人になって少しずつ気付いていく「現実」

素の自分を出すようになったからといって、必ずしもすべてうまくいくわけではありません。

飾ることをやめた結果、ラジオでは緊張しすぎて放送事故を起こしました。
「前の方がよかったのに」と、離れていく人もいました。
不安定な時期は、「こんな自分でいいのかな」と弱気にもなりました。

それでも、仲の良い友だちには「その方がりおらしいね」と言ってもらえました。そして、仕事で一緒になる年上の人たちには、気に入られることが増えました。

画像7

ラジオのゲストに来てくれた人から出会いが広がったり、仕事が増えたりして、りおちゃんは少しずつ自分をありのまま認めることができてきました。

(素の自分で、どこまで通用するんだろう?)

そうして大学3年になる時には、休学を決意しました。「学生の肩書きをなくして、個人でどこまで通用するのか試したい!」との想いからです。

ナレーション、料理研究、ライター、食事指導のトレーナー、インターンシップ……興味を惹かれたことはとにかく何でも飛び込んでみました。やってみて見えてきたのは、

「実社会でも、素の自分を出しても大丈夫」という現実でした。

画像4

◆ 本当は、最初から気付いていたのかもしれない

休学を経て大学へ戻り、学生最後の年になると、りおちゃんは今までを振り返りました。

自分じゃない誰かになろうとした。
憧れの理想像に近付こうとした。
誰かと比べて良くなろうとした。

でも、その先には未来がなかった。
よくよく考えれば、「本当の自分」は最初からここにいたのかもしれない。
際限なく自分を変えようとするより、今の自分を素直に認めればよかったのかもしれない。

「誰かになるより、自分を生きる」

それが幸せな人生や社会につながっているんじゃないかと信じて、
りおちゃんはこれから社会人として「第三の人生」を歩み始めました。
(To be continued…)

画像5

(執筆責任:勉強を教えない塾福幸塾)



サポートがあると、自信と意欲にますます火がつきます。物語も人生も、一緒に楽しんでくださって、ありがとうございます。