シングルグループ学習とダブルループ学習
クリス・アージリス(Chris Argyris)とドナルド・ショーン(Donald Schön)は、1978年に共著「組織学習: 行為理論的アプローチ」(Organizational Learning: A Theory of Action Perspective)を出版しました。この著作の中で、彼らはシングルループ学習とダブルループ学習の概念を詳細に説明しています。これらの学習理論は、組織がどのように問題を認識し、解決するかを説明するものです:
シングルループ学習:既存の枠組みや価値観の中で問題解決を図る方法。
ダブルループ学習:問題の根本原因を探り、組織の基本的な前提や価値観を見直し、必要に応じて変更する学習方法。
アージリスとショーンの理論は、組織学習と組織開発の分野で非常に影響力があり、現在も広く参照されています。彼らの研究は、組織が効果的に学習し、変化に適応する方法を理解する上で重要な基礎を提供しました。
1. シングルループ学習(Single-Loop Learning)
意味とプロセス:
シングルループ学習は、「目標を達成するための方法や手段」を改善するための学習プロセスです。これは、フィードバックを受け取った後、現状の行動や戦略の範囲内で修正や改善を行うという単一の循環(ループ)を指します。
たとえば、サーモスタットが設定された温度に基づいてヒーターをオン/オフするような動作です。目標(設定温度)は固定されており、行動(オン/オフ)だけが変わります。ループの説明:
シングルループ学習では、外部からのフィードバックを受けて、行動の結果に基づき、単一の調整を行います。目標や前提はそのまま維持され、行動だけが修正されます。したがって、1つのループ(行動とその修正)が存在します。
2. ダブルループ学習(Double-Loop Learning)
意味とプロセス:
ダブルループ学習は、「目標そのものやその目標を設定する背景となる前提、価値観、信念」を見直すプロセスを含む学習方法です。このプロセスでは、単に行動を修正するだけでなく、行動の背後にある根本的な要素、例えば目標設定の意義や戦略そのものの妥当性を再評価し、必要に応じてそれらを変更することが求められます。ループの説明:
ダブルループ学習では、最初のループ(行動の修正)に加えて、もう一つのループ(目標や前提の見直し)が存在します。これにより、2つのフィードバックループ(行動の修正と目標の見直し)があるため、「ダブルループ」と呼ばれています。
なぜ「ダブルループ」というのか?
「ダブルループ」という名称は、学習プロセスにおける「2つのフィードバックループ」を表現するためのものです。
1つ目のループ(シングルループ): 行動や戦略の修正 — 直接的な問題解決のためのアクションを見直す。
2つ目のループ(ダブルループ): 目標や前提の見直し — その行動や戦略の根本的な背景や目的そのものを再考し、必要に応じて変える。
このように、ダブルループ学習では、単に「どう行動するか」だけでなく、「なぜその行動が必要なのか」を問い直すため、2つのループを経て学習が深まるという意味で「ダブルループ」と呼ばれています。
まとめ
シングルループ学習は、既存の枠組み内での行動修正にとどまる。
ダブルループ学習は、その枠組み自体を見直し、根本的な変化を促す学習方法を指す。
そのため、「ダブルループ」とは、2つの学習プロセスが重なっていることを意味しています。
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