リチャード・クーのバランスシート不況
リチャード・クー氏が、過去、バランスシート不況と言ってました。
「バランスシート不況」とはリチャード・クー氏が初めていい始めた言葉らしいです。
今までの経済学の基本は、企業は利益の最大化を目指して活動するという前提があります。
会社は、営利を求めるので、営利を求めて、継続性があるのが会社であるので、それは、当たり前です。
しかし、リチャード・クー氏は、日本やドイツやアメリカで見られる現象は利益の最大化ではなく債務の最小化と言うのです。
しかし、債務の最小化を前提としたマクロ経済理論はリチャード・クー氏によると一切ないらしいです。
そういうことは、あり得ないらしいのです。
なぜ、債務の最小化があり得るようになったかというと、
だいたいバランスシート不況になる前には、
大きな資産価格の下落があると言っています。
バブルの時は借金してでもどんどんものを買い、
バブルが崩壊すると借金を残したまま資産価格が下がり、
多くの企業が債務超過のような状況になると言っています。
本業がしっかりしていれば、本業のキャッシュフローで借金返済ができ、
そういう行動を個々の企業が取り始め、
キャッシュフローで痛んだバランスシートを修復しようとすることは正しいことであるが、
全員が同時に同じことをすると全く別のことが起きてくると言って、
これが「合成の誤謬」と呼ばれる現象で、
どんどん景気が悪化する現象だと言うのです。
リチャード・クー氏は一国の経済というのは、
家計が貯金して、それを企業が借りて使うということで円滑に回るという解釈をしていまして、
その真ん中に証券会社とか銀行があると言ってます。
企業が一斉に借金返済にまわったら、家計の貯金はまったく使われないわけで、
そうすると企業の借金返済と家計の貯蓄を合わせた額が銀行に入ってきて、
二度と出ていかないということになりますという論理で、
これがデフレギャップなんだと言っています。
リチャード・クー氏は少なく見積もっても35兆円から40兆円あると言っていて、
世間的には、20兆円から100兆円と言われてます。
ということは、誰かがこれを使わないと経済はどんどん縮小してしまうわけで、
それをリチャード・クー氏は、バランスシート不況と呼んでいます。
今の日本企業は、すでに十数年間借金返済を続けて、
かなり有利子負債残高が落ちている状況で資産価値の下落があまりにも大きく、
もう少し借金返済をしないと安心できないというのが今の状況らしいです。
それが、昨今、銀行の金余りに繋がってるんだなと思いますけど、
やはり、リフレ派が言うように、
デフレギャップを埋める政策は、
日銀が国債を引き受けるしかないと思いますが、
リチャード・クー氏は日本は1989年末からの土地と株式の下落で1500兆円の富を失い、
これは、GDPの3年分に達っし、
かつて米国が大恐慌で失った富はGDPの1年分だから、
日本のほうがはるかに深刻な打撃をこうむっているが、
日本がバブル崩壊後、市街地価格指数が87%も下落するなど資産価格が暴落したにもかかわらず、
GDPが拡大を続けたという事実こそ、
米国など世界にとっての唯一の希望だとリチャード・クー氏は言ってます。
ところで、バランスシート不況をどうやって乗り越えるの?という点は、
バランスシート不況を日本がうまく切り抜けたのは、マクロ経済的に見た貯蓄を政府が使ったからだと指摘しています。
クー氏は、税収が落ちたのに、政府は逆に歳出を増やし、
それがGDPの拡大をもたらしたと言っていて、
もしも、政府が国債を発行して公共事業などをしなかったら、
GDPは半分になったり、3分の1になっていただろうと推測しています。
平和のままで経済が回復したのは日本が初めてだとクー氏は言ってます。
これを、素直に聞くと、バランスシート不況を脱出するには、公共事業等の財政出動を図り、
総需要を上げるなどの、ケインズ経済学の有効需要の創出で解決を図るということを理解し、
公共事業であれば、問題ないと判断しますが、
自由の経済学からは、何か、疑問符がつくところもあります。
この論点をクー氏は、10年前に述べていました。