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紀伊國屋書店アカデミック・ラウンジでロンダ・シービンガー先生トークイベントを開催しました

2024年11月19日、紀伊國屋書店新宿本店アカデミック・ラウンジでロンダ・シービンガー先生のトークイベントが行なわれました。おかげさまで、会場の椅子席定員を大きく超える盛況となりました!
シービンガー先生は、ジェンダー視点で科学史を分析する歴史学者であり、2010年代からは科学技術に性差や交差性の視点を組み込むジェンダード・イノベーション・プロジェクトの活動にとりくんできました。
今回のトークイベントは、先生の5冊目の単著
『奴隷たちの秘密の薬』(工作舎)と、日本の研究者の論考と先生の講演録をまとめた『ジェンダード・イノベーションの可能性』(明石書店)の刊行を記念して、明石書店さんと工作舎が共同で開催したものです。

東北大学と東京大学の招聘で来日したシービンガー先生は、連日超多忙なスケジュールのなか精力的に活動しておられました。
トークイベントの当日昼間は企業訪問をこなし、その前夜は⽇本科学史学会 ⽣物学史分科会のシンポジウムにご出席。お疲れだろうなあ……と心配しながら、先生の到着を今か今かと待っていました。そこへ、あざやかな真紅のカーディガンをまとったシービンガー先生が登場! 満場の参加者の方々から拍手で迎えられて席につくと、あとは聞き手や通訳との呼吸もぴったりのトークが展開されました。

写真提供:明石書店様
写真提供:明石書店様

聞き手を務めてくださったのは、並河葉子先生(神戸市外国語大学外国語学部教授)と鶴田想人先生(大阪大学社会技術共創研究センター特任研究員)。通訳は東京大学大学院総合文化研究科の岡本隣さんにお願いしました。
「女性研究者が長くキャリアを続けるための秘訣は?」「科学史家である先生がジェンダード・イノベーション(GI)という社会課題プロジェクトの主導者になったのはなぜ?」などの質問に、シービンガー先生は明快に、ときにユーモアを交えながら答えていきました。
デビュー作『科学史から消された女性たち』で、近代科学の発展期に女性が科学の場から排除されていくプロセスを探究。そこを出発点に、「哺乳類」という概念(『女性を弄ぶ博物学』)、植民地に伝わる薬の知識や奴隷を使った医学実験(『植物と帝国』『奴隷たちの秘密の薬』)へと、ジェンダーや人種に焦点を当てる独自の研究テーマを掘り下げていったシービンガー先生。科学の公正中立性にひそむバイアスを探る歴史研究が、ジェンダー視点を取り入れた科学研究の提唱(『ジェンダーは科学を変える!?』)につながっていき、より実践的なGIに発展していったことをお話しされました。
後半の質疑応答では、英国の作家メアリ・シェリーに言及して科学とジェンダーの関係を問いかける英文学の研究者の方や、GIをどのように工学分野に組み込んでいくべきかを尋ねる工学部の学生の方など、さまざまな方が質問を投げかけ、そのひとつひとつにシービンガー先生は丁寧にコメントしてくださいました。
 
トークイベントにご参加くださった皆様、ありがとうございました。アテンドしてくださった小川眞里子先生(東海ジェンダー研究所理事・三重大学名誉教授)によると、「ホテルへ帰るタクシーの中でロンダは終始上機嫌でした」とのことです。
日本の読者の方々とのコミュニケーションの機会は、シービンガー先生にとっても楽しく充実した時間となったようです。

写真提供:明石書店様

このトークイベントと連動して、11月初旬から約1ヵ月間にわたって紀伊國屋書店新宿本店3階の歴史コーナーで、植民地主義、医学史、カリブ海、奴隷制などのキーワードで選書した『奴隷たちの秘密の薬』関連書フェアを展開していただきました。無料配布のブックリストも好評でした。

トークイベントから数日後に開催された国際会議「東京フォーラム2024」では、「ジェンダード・イノベーションの描く未来」と題したパネルディスカッションが行なわれ、シービンガー先生がパネリストとして参加されました。
今回のシービンガー先生の来日ではメディア取材も多く、日本におけるGIへの社会的注目度がこれまでになく高まっていることを感じました!

『ジェンダード・イノベーションの可能性』(明石書店)の詳細はこちらロンダ・シービンガー『奴隷たちの秘密の薬』の詳細はこちら。シービンガー先生のこれまでの単著もすべて在庫ございます。お近くの書店にない場合はご注文ください。

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