【東京都（東京都庁）Ⅰ類A】　事務　専門記述試験　過去問解説　公共政策（令和6年～平成21年）

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令和6年度

問題

【問１】
　次の（1）～（4）について、それぞれ10行程度で説明せよ。なお、（2）については具体例を挙げて説明せよ。
（1）　仮想的市場評価法（Contingent Valuation Method）
（2）　枠組規制的手法
（3）　生態系サービスへの支払い（Paymentsfor Ecosystem Services）
（4）　ピーター・A.ホールの社会的学習（social learning）

解答

【問1】

(1) 仮想的市場評価法（Contingent Valuation Method） 仮想的市場評価法（CVM）は、環境資源や公共財の価値を評価するための手法です。この方法では、アンケート調査を通じて、対象となる環境資源の価値に対する人々の意向や意思を直接尋ねます。具体的には、仮想的なシナリオを提示し、そのシナリオに対していくら支払う意思があるか（支払意思額：Willingness to Pay, WTP）や、いくらで受け入れるか（受容意思額：Willingness to Accept, WTA）を尋ねます。この方法は、実際の市場取引が存在しない環境資源や公共財の価値を測定するために広く用いられていますが、回答者のバイアスや仮定の正確性に対する懸念もあります。

(2) 枠組規制的手法 枠組規制的手法とは、政府が企業や個人に対して環境保護や公衆衛生のための行動を義務付ける法規制の一種です。具体的には、排出基準の設定、技術的な標準の導入、特定の行動の禁止などが含まれます。例えば、自動車の排出ガス規制は、特定の排出基準を満たさない車両の販売や使用を禁止することにより、大気汚染を減少させることを目指します。この手法は、環境目標を達成するために直接的かつ強制力がある一方、柔軟性に欠けることや企業のコスト負担が増加することが懸念される場合もあります。

(3) 生態系サービスへの支払い（Payments for Ecosystem Services） 生態系サービスへの支払い（PES）は、自然資源の保護や回復を目的とした経済的インセンティブの提供手法です。具体的には、森林の保護、水源の保全、生物多様性の保全などを行う土地所有者やコミュニティに対して、保護活動に対する報酬を支払います。これにより、自然資源の持続可能な管理を促進し、生態系サービスの提供を維持することを目的としています。例えば、上流の森林を保護することで下流の水質を改善するプロジェクトに対して、下流地域の住民や企業が資金を提供するケースがPESの一例です。

(4) ピーター・A.ホールの社会的学習（social learning） ピーター・A.ホールの社会的学習（social learning）は、政策形成過程における知識の共有と相互学習のプロセスを強調する概念です。社会的学習は、異なるステークホルダー（政策決定者、専門家、市民など）が共に学び、知識を交換し合うことで、政策の効果性や適応性を高めることを目指します。ホールの理論では、政策変化の3つのレベル（政策手段の調整、政策目標の修正、政策の根本的な枠組みの転換）を提案しており、特に第3のレベルでは、社会的学習が重要な役割を果たします。社会的学習は、持続可能な政策形成や問題解決において、協調的なアプローチを促進する手段として評価されています。