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天皇陛下のお正月

新年あけましておめでとうございます。本年もマイペースでnoteを書いていきたいと思います。更新が滞ることがあるかもしれませんがご容赦くださいませ。

さて、正月は我々日本国民にとって特別な行事でもありますが、それはとりもなおさず、天皇陛下あっての正月であるとも言えます。

我々が恙なく正月を迎えられ、清らかな気持ちで初詣ができている裏で、目立たないしあまり知られていないですが、天皇陛下はさまざまな宮中祭祀を正月から執り行っておられます。

12月31日 年越大祓  節折

1月1日 午前五時半頃  四方拝 その後歳旦祭

    午前中~   新年祝賀の儀(朝見の儀)※国事行為として

1月2日 皇居一般参賀(昨年・本年とも中止)

    (本年は元明天皇千三百年式年祭)

1月3日 元始祭

1月4日 奏事始の儀

1月7日 昭和天皇祭

1月14日頃 講書始の儀

1月15日頃 歌会始の儀(本年は18日)

1月30日 孝明天皇例祭

1月だけでもこれだけの祭祀、行事を行われていることが伺えます。また、本年は元明天皇の千三百年式年祭があったように、正月に限らず、その年に式年祭(100年目以降100年ごとに行う)を迎える歴代天皇の御霊を祀る祭祀も行われたりします。

特に注目されるのは「四方拝」。これは天皇陛下が宮中三殿の中の神嘉殿南庭に設けられた屏風と御座にお入りになり、以下の通りに祈りを捧げられます。

①北斗七星に御拝

②天皇の属星(北斗七星の中の生まれ年の星)を7回唱える

③※呪文を唱える

④伊勢神宮内宮・外宮を遙拝

⑤北・南・東・西の天神地祇に御拝

⑥神武天皇陵・先帝三代の各山陵、武蔵国一宮(氷川神社)、山城国一宮(賀茂別雷神社と賀茂御祖神社)、石清水八幡宮、熱田神宮、常陸国一宮(鹿島神宮)、下総国一宮(香取神宮)を遙拝

四方拝は時代によって変遷があり、呪文を唱える時代が長く続いたが、明治以降はその呪文は唱えられなくなったとも言われています(秘儀のために伝えられていない)。

また、天皇陛下が執り行う最重要儀式のため、御代拝が許されず、陛下御不予の時などは行われることはありません。

※呪文とは以下のようなもので、『内裏儀式』・『江家次第』によると次の通りである。
賊寇之中過度我身 ぞくこうしちゅうかどがしん(賊寇は必ず我が身を通して下さい)
毒魔之中過度我身 どくましちゅうかどがしん(毒魔は必ず我が身を通して下さい)
毒氣之中過度我身 どくけしちゅうかどがしん(毒氣は必ず我が身を通して下さい)
毀厄之中過度我身 きやくしちゅうかどがしん(毀厄は必ず我が身を通して下さい)
五危六害之中過度我身 ごきろくがいしちゅうかどがしん(五危六害は必ず我が身を通して下さい)
五兵六舌之中過度我身 ごへいろくぜつしちゅうかどがしん(五兵六舌は必ず我が身を通して下さい)
厭魅之中過度我身 えんみしちゅうかどがしん(厭魅は必ず我が身を通して下さい)
萬病除癒 まんびょうじょゆ(民のあらゆる病は、除かれ、癒やされますように)、
所欲随心 しょよくずいしん(民が欲することは、心のままに全てかないますように)、
急々如律令 きゅうきゅうにょりつりょう(この旨、すみやかに、律令のごとく正確に・しっかりと行われますように)

属星とは、北斗七星の星々にそれぞれの干支が配され、

子年 貪狼星、丑年と亥年 巨門星、寅年と戌年 禄存星、卯年と酉年 文曲星、辰年と申年 廉貞星、巳年と未年 武曲星、午年 破軍星

となっています。

諸説ありますが、この四方拝を陛下がなさることによって日本の国土や国民が慰撫され、祓い清められ、心清らかな状態で我々日本人は初詣で数々の願い事や祈願を受けることができると考えられます。これが陛下を以て日本最高の「祭祀王」と称される由縁であるとも言えます。

天皇陛下の一番のお勤めは政務よりも宮中祭祀であり、順徳天皇が著した「禁秘抄」にも ”天皇は神事を先にし、私事を後にする” という趣旨のことが書かれており、歴代の天皇陛下がこの教えを厳重に守ってこられたことが分かります。

なお、飛鳥・奈良時代以降の女性天皇(正確には明正天皇、後桜町天皇の御2方)は、宮中祭祀は「垂簾出御」という記録があるのみで、実際に宮中祭祀を執り行った記録がありません。

もっとも、宮中祭祀において女性天皇、女性皇族の参拝は制約があり、生理中や妊娠中の参加は特に禁忌とされています。また、男性皇族でも、近親者の不幸があり、服喪期間である場合も宮中祭祀に参列することができません。これは旧・皇室服喪令の定めにあったことをそのまま「従前の慣習に基づき」引き継いでいるからです。

この四方拝一つ取ってみても、宮中祭祀がいかに大変なことかがよく分かります。

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