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短編【ニーラカーラ物語《巨人と小鳥》】小説

ニーラカーラ島の伝説。

昔、むかしの大昔。
ニーラカーラ島の北の村にのろまだが力持ちの巨人がいました。
巨人は村人の為に川から水を引き田畑を作りました。
巨人は村人の言う事は何でも聞き、よく働きました。

ある日、この村に旅の占い師がやってきました。
占い師は言いました。

あの巨人を始末せよ。
さもなければ惨劇が起こる、と。

村人達は名も知らぬ占い師の不吉な予言に初めは広い心で笑って受け止めたていましたが、その予言がしつこく繰り返されると嫌な気持ちになってしまいました。

村人達は占い師を村から追いだしてしまいました。
ーあの巨人は我々の守り主なのだー
村人は巨人が大好きでした。
巨人の為に毎日穀物を捧げました。

その穀物を目当てに山の小鳥達はいつも巨人の周りを飛び回っていました。
巨人は惜しげもなく小鳥達に村人から貰った穀物を分け与え自分は一口も食べませんでした。
神様のように不思議な巨人でした。

巨人は小鳥達の為にも働きました。
小鳥達の巣作りをしたり鷹や梟等の天敵から守ったり。
小鳥たちはお礼に巨人の耳元で歌をうたいました。
巨人は小鳥達の歌が大好きでした。

やがて小鳥達は代を重ねるうちに巣作りを忘れ餌探しもしなくなってしまいました。
毎日、巨人の為に歌って暮らしました。
巨人さえいれば楽に暮らす事ができたのです。

いつしか小鳥達はこの素晴らしい巨人を自分たちの物にしようと考えるようになりました。
そのためには我が物顔で巨人を使う村人達が邪魔だでした。

人間さえいなければ…。
小鳥達は巨人から貰った穀物をつつきながらそう思いました。

ある日、小鳥達は歌うのを止めました。
巨人は何故歌わないのか訳を尋ねました。
小鳥達は答えました。
人間に歌声を盗まれたのだと……。

巨人は悲しみました。
巨人は村人達に小鳥達の歌声を返してくれるように懇願しました。

村人達は困りました。
小鳥達の歌声を盗んでなんかいないのです。
なので小鳥達の歌声など知らないと答えました。

その事を伝えるために巨人が山に入ると小鳥達が皆、地べたを歩いていました。
巨人は何故飛ばないのか訳を尋ねました。
小鳥達は答えました。
人間に飛び方を盗まれました、と。

巨人は悲しみました。
巨人は村人達に小鳥達の飛び方を返してくれるように懇願しました。

村人達は困りました。
小鳥達の飛び方を盗んでなんかいないからです。
なので小鳥達の飛び方など知らないと答えました。

それを聞いた巨人は村人を一人、ひょいと摘み上げました。
高く高く摘み上げて指を離しました。
村人は真っ逆さまに落ちて死んでしまいました。

小鳥達は言いました。
人間たちは空を飛ぶ。
飛び方を盗んだから。
空から落とせば羽を出す。
飛び方を盗んだのだから。

だけど村人落ちて死んでしまいました。
狂った!巨人が狂った!
村人達は叫び、ある者は逃げ、ある者は鍬や鋤を手に取りました。
占い師の予言が当たった!

村人達に襲われて巨人は山に向かって逃げました。
逃げながら山に行けば小鳥達が狂った村人達に殺されると思いました。
山には行けない。
小鳥達を狂った村人から守らなければ。

巨人は泣きました。
おんおん泣きました。
泣きながら村人を踏み潰しました。
踏み潰してはまた、おんおん泣きました。
やがて里から村人は逃げ去ってしまいました。

ついに小鳥達は村人から巨人を奪いとりました。
これで巨人は吾らのものだ。
歌えや踊れや踊れや歌え。

村人が居なくなり穀物を作る者も居なくなってしまいました。
そして、小鳥達は飢えて死んでしまいました。

独り残った巨人はおんおん泣きながら大きな岩になりました。

今でも北風が強く吹くころになるとガンダリ山にある巨人岩の裂け目から、おぉぉんおぉぉんと聞こえてきます。

おぉぉん。
おぉぉぉん。
と巨人の鳴き声が今でも響いてくるのです。


⇩⇩別の視点の物語⇩⇩

自由意志の行方

ニーラカーラ物語『樫の木の人形』


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