日本の心。
『トン、トン、トン、トン。』
小刻みに奏でられる包丁の音と、細胞に染み渡る様な出汁の香り。実家で目覚める朝はいつも幸せに包まれていた。
仕事を始めてからは、朝食を食べる時間があるなら寝ていたいくらい時間に追われ、ゆっくり味噌汁を飲む時間など無くなっていた。一杯の味噌汁を飲む余裕もない。今思うと、とても切なくなる。
味噌汁といえど、地方ごとや家庭ごとに特徴があり、好みも人それぞれ。出汁、具、味噌。このシンプルな組み合わせには無限の可能性がある。そしてその中から生まれた一品が自分の味覚を築き、日本人としての心を豊かにする。毎日の一杯が自分を育てていくのだ。だからこそ、その時間を大切にし、美味しいものを子供達にも伝えたい。『食育』とは、難しいことではなく、毎日の食事で届けられる。
出汁の取り方一つでもそう。手間はかかるが、自分で出汁をとる方がはるかに旨い。味噌汁を作るために出汁を取るのはめんどくさいかもしれないが、自分の子供を育てる為ならば、きっと愛情込めて作れるはず。
料理は作ることが目的ではなく、『誰に食べてもらい、どうなってもらいたいか』が大切だ。母の作る料理が心に残るのは、家族の事を思って作っているから。毎日家族を想う母の料理に敵うものはないのかもしれない。(僕の場合は母でしたが、父の場合も祖母の場合もあるでしょう。)
僕もそうですが、料理を作業にしてはいけない。食は身体を作り、心を育て、人生の歩を進めていく。
今日も大切なあの人の為に料理をしよう。
一杯の味噌汁でも人生は変わっていく。
皆様の優しさに救われてます泣