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初恋は甘酸っぱいと言うけれど。

不仲の両親を見て育ったわたしは、一生結婚もしないし、当然子どももいらないという信念を持っていた。けれど、恋の力は想定を超えていた。

いわゆる「追い出しコンパ」のように

2月には大学は春休みになる。四回生の中には1月で下宿を引き上げる人もいる。社学研の活動は年末の宴会で終わることになる。

今の四回生が卒業すると社学研にはわたししかいなくなる。だから年末の宴会は実質上、本気のサヨナラ打ち上げになる。

宴会は日頃から交流のある別の大学の社学研と合同で行われる。三大学共同の宴会は大学から離れた都会の居酒屋で行われた。

去年は社学研の卒業生がいなかったので、わたしは参加しなかった。今年は三人が卒業する。

一昨年の参加者で覚えているのは、たまごちゃんと呼ばれた一回生の女の子だけだった。今の四回生がたまごちゃんという呼び名をつけた。顔がゆで卵のように白くて可愛かったからだ。

可愛くなくてすみませんねと言うわたしに、いや、こうちゃんは性格がいいからいいんだよとフォローにならないフォローをされた。

思いもかけず再会して

でも、こういう宴会は苦手だった。なんとなく女子が気を回さないといけない雰囲気になるからだ。気の利かないわたしは、他の人の指示に従って動く。このテーブルを動かすから手伝って、と言われて振り向くと、見覚えのある顔の人がいた。えっ?

なんと。高校時代に友達が好きだった先輩だ。(と、突然運動部モードになる。)Gさん!と言いかけて黙った。わたしたちはグラウンドで見ていただけで、話したこともない遠い存在だったからだ。

言われた通りにテーブルを動かした。

しかしわたしの頭は謎でいっぱいだった。

Gさんは野球をやっているハズだった。どうしてここにいるんだろう。

宴会も進んで、酔っ払いモードになってきた時に、四回生に連れられてわたしはGさんのグループに挨拶に行った。するとGさんは三回生だった。一浪して大学に進んだので、同級生になっていた。

来年は就職活動で忙しくなるという話をした。Gさんはわたしのことを知らない。でもわたしはいろいろ知っている。なんだかドキドキしながら話し続けた。

苦手だったはずなのに

高校生の時、わたしはGさんが苦手だった。野球部のピッチャーで4番で勉強も出来て男前だった。だからモテモテだった、と思う。

少なくともNちゃんはファンだった。Gさんとこっそり呼んでいた。Gさんと書いているけれど、わたしたちは本当に「じーさん」と呼んでいた。名字から取ったのだけれど、半分ふざけてつけたあだ名だった。

だいたいここまで読んできたらおわかりのように、わたしはGさんに恋をした。よくある話だ。でも理由はあった。

Gさんは大学で世界史を専攻していた。支配者からの歴史ではなく民衆の側からの世界史を研究していた。こういう話にわたしは弱い。社学研に入ったのも世界史を多方面から勉強するためだった。こういうのにも弱い。

ここから先は面倒なので省いてしまって。結論から言うと、

なんとわたしは「卒業したらGさんと結婚する!」と言い出したのだ。

よっぽど、と言われて

友達はわたしが結婚すると言うので、雨が降る、雪が降る、日本沈没だ、というくらいにびっくりした。

ただひとりTちゃんだけが「よっぽど好きなんやな」と冷静に言った。わたし以上に恋愛とは縁がないと思われていたTちゃんがそう言ったので、びっくりした。

よっぽど好き。そうだろう。たぶんわたしはもうこれ以上好きになれる人に出会えないと思って盛り上がっていた。

この辺りは、もしかして少女漫画の読み過ぎに原因があったかもしれない。

とはいえ、思い通りにならないのも初恋の行く末だ。けれど、恋が完全に終わるのは、この宴会から2年経ってのこととなる。


この辺り、ありきたりな話だと判断して飛ばしています。思い出したくない、というのはさすがになくなりました。遠い過去のことなので。





シリーズ

【坂道を上ると次も坂道だった】

でした。


画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借りしました。

この頃のわたしの気持ちにぴったりきたので選びました。素敵な写真をありがとうございます。


地味に生きておりますが、たまには電車に乗って出かけたいと思います。でもヘルパーさんの電車賃がかかるので、よかったらサポートお願いします。(とか書いておりますが気にしないで下さい。何か書いた方がいいと聞いたので)