ラグビーの数合わせ的側面

久しぶりにマガジンに追加する記事です。
今回はラグビーの基本構造について書いていきたいと思います。
ラグビーは陣取り合戦では、キックを用いた縦のスペースのマネジメントについて解説しました。
今回は、パスを用いたアタックのベースとなる横のスペースの使い方について解説します。

今回の記事はプレーヤーの方々にとってはあまり新鮮味のあるものでは無いかもしれませんが、観戦時に一層意識するきっかけとなればと思っています。

また、今回のW杯で増えたであろう、にわかファンの方々に、もっとラグビーを楽しんで貰うためのコンテンツになれば幸いです。

横のスペース

ラグビーのグラウンドは、基本的に横幅は70mです。
その中で15人が攻撃をするとなると、単純計算で一人あたり4-5mが与えられることになります。(実際のゲームではラックなどがあるためもう少し広いですが)

ここでイメージして欲しいのですが、5m間隔に並んだ2人の人間の間を通り抜けるのは難しくありませんか?
ラグビー選手でも圧倒的なスピードやパワーがない限りこのスペースを通り抜けるのは困難です。

そこでチームとしてアタックする際には、この幅をどうマネジメントするべきかという戦術が生まれます。

数的有利

他のスポーツでもそうですが、人数が多い方がラグビーは有利です。
ただこれは、チームの人数を増やすということではありません。
15人vs15人のゲームの中で局地的に2vs1を生み出すということです。

これについて説明する前に、前提としてボール(パス)は人よりも速いということを頭に入れておいてほしいと思います。
同じ距離をボールと人が移動するときはボールの方が速いです。

つまり、自分の目の前の人がボールをパスしてからパスを受け取った相手にタックルに行くのはとても難しいということです。

2vs1で攻撃をすれば、パワーやスピードに関係なく攻撃が勝ちます。
一人目の選手がDFを引きつけて、二人目の選手にパスをすればDFは追いつきません。

この2vs1を生み出すという考えが基本的なラグビーの考え方となります。
3vs2、4vs3・・・なども分解していけば2vs1になります。

2vs1の作り方

これは色々な考え方があります。

パワフルな選手が多いチームは、攻撃1人に対して相手が2人、3人がかりでタックルしてくるかもしれません。これを繰り返すと必然的に数が合わなくなって2vs1が生まれます。

賢いチームは3vs3の局面を作っておいて、逆サイドから一人追加して、相手が追いつかない間に2vs1を作り出すかもしれません。

速いATが持ち味のチームはDFが追いつかなくなってきたところで2vs1を生み出すかもしれません。

このようにチーム次第で2vs1の作り方はたくさんあります。
ただ、これが常にうまくいくとは限りません。
3vs2や4vs3の局面を2vs1の局面にするためにはパスを何回かする必要性があります。
DFはここに目をつけて色々な作戦を使います。

DFのシステム

数的有利の項で、ボールがパスされてからパス先にタックルに行くのは難しいと説明しましたが、実際にはDFシステムでカバーすることができます。

まずは、相手がパスするのを待ってDFしていくシステムです。
あまり前進せずに(時には後退しながら)、相手の最後の選手にパスが渡るのを待ちます。

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赤がAT、青がDFです。

画像2

こちらは逆に4人目までパスをさせないというパターンです。
相手のパスのスピードが遅い、立っている幅が広い場合などに使うことがあります。
また、4vs3、5vs4と人数が増えていけばパス数が増えることになるので人が多い時に採用されやすいです。

このようにATは2vs1を作り、DFはそれに対応するようにシステムを使い分けます。

こうなった場合に攻守の鍵となるのが最初に述べた、横のスペースのマネジメントです。

DFのコントロール

数的有利を作ることを前提として考えたとしても相手のDFが良ければなかなか良いATをするのは難しいです。

そこで、数的有利の効果をアップさせるために、DFの選手が立つ間隔を広げたり、狭めたりします。

これは意外と簡単なことで、ATの幅が狭くなればDFの幅も狭くなり、逆もまた同様です。

この幅を変えられることでDFとしては、「ダッシュで前に行くと間を抜かれるかもしれないな」、「前に行かないとパスを繋がれて、外側の広いスペースを抜かれるかもしれないな」など色々なことを考えることになります。

結果として、システムに綻びが出てくることになります。


ラグビーの構造として、常にどこかしらにスペースは存在しているのでそこを突けるかどうか、そこに行かせないことが出来るかといった勝負が生まれます。
そして、そこに駆け引きが生まれてきます。
観戦する際は、「このチームはどこに数的有利、スペースを作ろうとしているのだろうか?」と考えてみると、一層ラグビーが楽しく感じられるのではないかと思いますので、ぜひ頭の片隅にでも残していただけると嬉しいです!

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