紫陽花がくれた気づき

小さな紫陽花を一輪、部屋に飾っている。なんのことはない、一輪挿しに水を張ってぶっさしているだけだ。
飾り始めて数日が経つが、窓の方に向かって元気に伸びている。日の光のほうを向くのは向日葵だけではないらしいと知った。

家の大掃除で発掘された一輪挿しを見て、なんとなく部屋に花を飾ってみたいと言った私に母がくれたのが、庭から切ってきた小さな紫陽花だった。
母は仕事の一環で花を買ってきては、あるいは庭のそれを切ってきては花瓶とか剣山とかにさしている。
仕事だから仕方なくやっている部分もあるのだろうが、100パーセント嫌々やっているというわけでもなさそうだと感じていた。
器用に紫陽花をちょうど良い長さにカットして花瓶にあてがう母を見て、やっぱりどこか楽しそうだと、勝手に少し嬉しくなった。

翌日、置いたときと微妙に姿勢を変えている紫陽花を見たときはわりと感動した。「植物のある生活は良い。彼らは毎日違った表情を見せてくれる。」とかいうのに対し、ほんとかあ〜?と思っていた私は、おお、これが…と素直に納得した。
なんとなく母にそれを報告すると、「おお、まだ元気なんだ。紫陽花ってすぐしぼむけど、雨の日に切ってきたからかな。雨の日にとってくると長持ちするとかいうけど本当なんだあ〜。」と返ってきた。

紫陽花がすぐしぼむというのも、雨の日に切ってくると長くもつと言われているとかいうのもまるで初耳だった。
ひとつ賢くなったなあとか思いつつ、祖父にも紫陽花の近況(近況というほど時間は経っていない)を話した。するとこちらも少し驚いており、
「ホオ〜、大したもんだ。アンタが昨日お母さんにもらってたやつか。朝切ってきた紫陽花は長持ちするからなあ。」というようなことを言っていた。こちらももちろん初耳だった。

この人たちから教わるべきことがまだまだたくさんありそうだ、というか、まだまだたくさんのことを教わっていきたい、と思った。
紫陽花が長持ちしにくいとか、雨の日、あるいは朝に取ってきたそれが長持ちするという説があるとか、そういうのは別に、生きてくうえでめちゃくちゃ重要なことではないかもしれない。
でも、こうして家族と過ごす何気ない日常の一コマで、ひとつ新しいことを学んだ、それがすごくかけがえのないことのような気がするのだ。

何はともあれ(?)、私がこの紫陽花を長生きさせてやることができれば「雨の日の朝に取ってきた紫陽花は長持ちする」説が立証できるというわけだ。
部屋に植物を置くのもおそらく人生初なわけだが、こうなればこちらも精が出る。(といっても、やることといえば水替えくらいだが。)

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