#15 移送

一時は高裁への控訴を希望していた彼ですが、諸々の経過や相手の性格を考えて、得策ではない、下手すると長くここにいる事になり兼ねないと判断しこのまま刑の確定を受け入れる、と伝えてきました。
これで彼は完全な受刑者になります。
私服も脱ぎオレンジの制服に着替えます。手紙の送信は週1回、面会に至っては月2回になります。

刑が確定したので、拘置所からこの先刑期満了までの滞在先(でいいの?)となる刑務所へ移送されることになります。
以前には「北海道もあり得る」という話もされましたが、とりあえず少し近くなる場所だったので一安心です。

仕事が休みの日に、必ずといっていい程この場所まで行きました。
車で往復4時間。時には前向きな明るい曲を聴きながら、時にはバラードを立て続けに聴きまくって涙を流しながらハンドルを握りました。
もちろん門の外までしか行かれないので、しかもどの辺にいるのかも分からないので、そこまで行ったからといって何も感じられないし意味はないんですけどね。

ただ会えないというだけの悲しみだけならどんなにいいか。涙には色んな想いがありすぎて…。
人間て長く生きてきたつもりでもまだまだ知らなかった感情があるものなのね。一生知らずにいる人の方が多いんだろうなぁ。

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