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ライブレポ -Myuk concert tour 2024「Arcana」-

Myuk concert tour 2024 「Arcana」

2021年に『魔法』でMyukとしてメジャーデビューし、3年を経て1stアルバム『Arcana』をリリース。そのアルバムをひっさげてのコンサートツアー「Arcana」を、2024年2月4日(日)大阪公演を中心にレポートする。
※当レポートはMyuk本人、および関係団体とは関係のない、一個人の感想です。ご了承ください。

その1フレーズで引き込まれた

ライブは、会場が暗転し、物音のしない静寂の中から始まった。
「もうひとりじゃないよ」
Myukの声が会場に響き、青のライトが舞台を染めた瞬間、会場の空気は一変した。
たったその1フレーズで、観客はMyukの世界に引き込まれたのだ。
ライトノベル『豚のレバーは加熱しろ』(後にマンガ化)のアニメ化に合わせて、Myuk自身がノベルを読み、作詞した『ひとりじゃないよ』。
Myukのヴォーカルから始まり、バンドが徐々に重なって盛り上がっていく。1曲目が終わる時にはライブ会場はもうMyukのArcana…箱船の中だった。

ツアータイトルは1stアルバムと同じ『Arcana』(アルカナ)

アルカナとは箱船を意味する言葉だが、Myukは今回のツアーを箱船だと表現した。
生きていると、孤独を感じたり、失敗したり、悲しい別れがあったり、… でも、同じくらいの楽しいこと、嬉しい事がある。
それぞれの歌に主人公がいて、その感情や想いを歌に乗せて運ぶ箱船、そんなツアーなのだ。

まさにMyukの言うとおり、たくさんの物語を順に追っていくようなライブ構成だった。
『星に願いを』…「何もかも捨ててしまいたい時は 思い出を開ければ良い」
『シオン』…「もう大丈夫だから」
次々と異なった物語の主人公が登場する。
歌に乗せて色々な想いがMyukによって語られる。

Myukが「家でリラックスしているような感覚で聴いてほしい」と紹介した『snow』
楽しいこの時がずっと続いてほしい…そんなMyukの想いが乗っていたように感じたのは筆者だけだろうか。

『あふれる』は恋をする女性の物語だ。「まぶた閉じても開いても出てくる 魔法かけてきたでしょ」歌に共感した女性ファンも多かったのではないだろうか。

『Pancake』制作秘話

次の『Pancake』へ行く前に、Myukがそれぞれの公演地でのグルメ人気をファンに聞いた。「何が一番好き?私はね…」推しのアーティストと他愛ないおしゃべりを楽しむ…なんて贅沢な時間だろう。ンゴ!(おっと、豚レバの豚さんのようになってしまった。コホン。)
そんな中、Myukの打ち合わせ無しの質問で『Pancake』を作曲したバンマスの大久保友裕自身が楽曲の制作秘話を語ってくれた。
「この曲はコロナが始まって自粛ムードの中で作った。気がつくと悪い情報ばかり探している自分に気付いて、これは良くない、と思った。 誰にでもある日常の、何でも無い一場面で気持ちが和らぐ…そういう思いで作った曲。」

次は『フェイクファーワルツ』醜いアヒルの子をモデルにした、というこの曲は、最近では珍しい3拍子の曲だ。リズミカルなドラムスにベース、ギター、ピアノが重なり、まさに音がワルツを踊っているようだ。

「熊川みゆ」名義の曲も

ワルツの後はラテンなテイストでピアノが響いた。
今回のツアーでは、1stアルバム「Arcana」の楽曲に加え、インディーズ時代の『夜の舞踏会』も披露。
ツアーではフルバンド用のアレンジにMyukの声が乗り、より心躍る音が作り上げられた。これはCDでは決して聞けない、ライブだけの特別な『夜の舞踏会』だ。
Myuk自身も手を頭のうえでクラップして観客へ「楽しんで」とメッセージを送っているようだった。もちろん、ファンは一斉にクラップして会場は盛り上がる。

「ここからは、ギアを一段上げて行きたいと思いますが、良いですか!?」 Myukの一言でライブはさらに活気づいた。
『ラブソングの衝動』…「聞かせて!」という歌詞は、その後の曲のためのフラグだったのかも知れない。

『Gift』…ファン達のクラップは止まない。「もっとずっと笑ってて」ファンの笑顔を大事に思うMyukの想いが乗っているようだ。

そしてライブも終盤。『encore bremen』
「物語の最後尾 君との記憶をたどる旅を始めようか」
ここまでの演奏を振り返りかみしめるように、さらに盛り上がるシーンへ。

ららら らーら!

Myukで盛り上がる時の定番といえば『愛の唄』
「ライブで声も出せるようになったので、皆の声が聴きたい!」 Myukのお願いにファンは大喜び。
曲に入る前に、コーラスパートを練習するためMyukが歌う。これは「始めて曲を聴く人でも楽しめるように」というMyukの心遣いだろう。
練習で十分に場が温まったところで曲に突入し、Myukと観客が一体となって会場は最高潮を迎えた瞬間だった。

最高に盛り上がった後は、『アイセタ』
「ありのままでいて良い」「私で居て良い」ここに『アイセタ』を並べてくるあたりもMyukの想いを感じる。

ライブ(メインパート)のラストはMyukとしてのデビュー曲「魔法」
「この声が届くなら 答えなどない それでも居たいな 物語を終わらせたくはないさ」
この歌詞をラストに持ってくるのは、いかにもMyukらしい。
ライブが終わってほしくない、ずっとこの空間に居たい…そう思ったのは筆者だけではないはずだ。
そして舞台は暗転…

アンコールを求めるファンのリズミカルな拍手に答えて、Myukが一人で登場。バンドメンバーは出てこない。この後は一人で歌うのか。

2月4日はなんの日

ところで、2月4日(日)の大阪Banana Hall この日はMyukの誕生日だった。
アンコールでMyukが再登場し、拍手が鳴り止んだタイミングで「お誕生日、おめでとう!」と客席から声が上がった。
「はっ!そうなんです…大阪のライブと同じ日なので、特別な思いで来ました」
そう言いながらギターをかき鳴らし「えへへ」と笑うMyuk。

アンコール1曲目は『あの日、夢を』
Myukが「熊川みゆ」で活動していた時のファーストシングルだ。この曲は、祖父を亡くしたMyukが、夢で祖父に会った事を歌にした曲だ。
「悲しい出来事だったけど、この曲があったから、今日のこの日に繋がった。みんなに知っていてほしい曲です。」
Myuk一人が舞台に立ち、ギターをかき鳴らして歌う姿に、観客は息をするのも忘れたように聴き入っていた。

最高に幸せな空間へ

そして、アンコール2曲目のためにバンドメンバーが登場。
ここで、大阪でサプライズが起きた。
そのまま予定のMCに入ろうとするMyukを遮るように、ドラムの大貫みくがマイクを手に声を上げた。
「皆さん!今日はなんの日か、知っていますか~?」
何が起きているのか分からず戸惑うMyuk。
「そう、今日はMyukの誕生日!なので、みんなでお祝いを歌いたいと思いますが、良いですかぁ~?」
「えっ!?予定にない…」と驚くMyuk。
ファンの大拍手、そして間髪入れずにピアノの西野恵未が「Happy Birthday to You」を演奏。
会場はMyukへのお祝いで満たされた。
恥ずかしくて泣き顔を見せられないのか、舞台の後ろを向いてしまうMyuk。
顔をパタパタと手であおぎ、ようやく前を向けたMyukは「みなさん、泣かせ上手ですね」とこの日一番の笑顔を見せてくれた。

このサプライズお祝いは、バンドメンバーによる一方的な演出ではなく、ファン同士も強く望んでいたことだ。ファンの想いと、バンドメンバーの想いが響き合って、こんなに温かなライブ空間が生まれたのだ。
バンドメンバー含む会場にいる全員からMyukが愛されていると感じられる瞬間だった。

「ひとり一人に、歌っていきたい」

そしてMyukは最後のMCでこう語った。
「歌は何の力にもなれないかも知れないけど、みんなひとり一人に歌っていきたい。歌で力になりたい。」
「この1stアルバム『Arcana』と、今回のツアー『Arcana』は、Myukの始まり。 これから、もっと大きな場所で歌えるように、努力して、成長していきたい…」

ラストは『Arcana』
ここまでのすべての曲が、吟遊詩人Myukによって語られた物語であるかのように、「これからも この声で 記す」
Myukの強い意志が感じられる一節だ。

ライブ全体を通して、筆者はMyukの可能性を強く感じた。Myuk個人だけじゃない、バンドメンバーも、ファンも、みんなでMyukを作っていく。箱船を作り上げていく。もっと大きな船に…
「また、このMyukという船に乗りたい。」そう感じたファンは筆者だけではないだろう。
次のツアーはどんなに楽しいツアーになるだろうか。今から待ち遠しい。

                           (Kotoshiro)

【セットリスト】
M1 ひとりじゃないよ
M2 星に願いを
M3 シオン
M4 Snow
M5 あふれる
M6 Pancake
M7 フェイクファーワルツ
M8 夜の舞踏会
M9 ラブソングの衝動
M10 Gift
M11 encore bremen
M12 愛の唄
M13 アイセタ
M14 魔法

ec 1あの日夢を
ec2 Arcana

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