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ご質問にお答えします!『筆力をつける方法は?』

脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。

ご質問、ありがとうございます!
ご質問内容を二つに分けてお答えしますね。

【脚本家になるために、毎日すべきトレーニングはありますか?】

「毎日」ではないものの、私が現在もよく(特に行き詰ったときに)実践していることは、以下の二つです。

トレーニング1)向田邦子作品を手書きで書き写す
「尊敬する作家の作品を書き写す」というトレーニングは、一部の人の間で「写経」と呼ばれ、割合よく知られた方法ではないかと思います。
月刊ドラマ、月刊シナリオには毎号、いくつもの脚本が掲載されていますし、著名な脚本家ならば、このようなシナリオ集も販売されていることが多いです。

もちろん、向田作品であることが必須ではありません。
質問者さんが「この人の技術を自分にインストールしたい」と思うような方の作品を選ぶのが一番良いと思います。

ポイントは、もとの脚本を「見ながら書き写す」のではなく、「短い単位で記憶して、それを書き出していく」ということです。
セリフを一つ覚えて、それを書き出す。
次のセリフを覚えて、書き出す。
次の行のト書きを覚えて、書き出す。
…といった具合ですね。

これによって、まるで自分の力でこの脚本を書いているかのような疑似体験ができます。
実際に試していただくと、「テンポのよいセリフのやりとりのコツ」や「シーンの繋ぎ方のツボ」等が自然と感じ取れるのではないかと思います。

トレーニング2)構成がうまいと思う映画やドラマを自分でハコ書きにする
「プロット→ハコ書き→脚本」という過程を経るのが一般的な脚本の書き方ですが、このトレーニングでは、映像をもとに、ハコ書きを起こします。
これによって、演技、映像の力、音楽等々、完成した作品に含まれるさまざまな要素の中から構成のみを抜き出し、分析することができます。

「構成がうまいと感じること」と、「その本質をとらえること」はまったく別物です。
「なんかうまいんだよな~」と感じているだけでは、その作品から得たものを自作に活かすことはできません。
「うまい」と感じるのはなぜなのか? ポイントは何なのか?
それを理解できて初めて、自分の作品にも活かすことができるというわけです。

【これをやれば必ず筆力がつくという方法はありますか?】

「筆力」という言葉の中には、実はいろいろな意味が含まれています。
例えば「構成のうまさ」も「面白いセリフを書く力」も「魅力あるキャラクターを生み出す力」も、脚本家にとっての「筆力」の一部です。
そのため、質問者さんがどの部分を補強したいと思っているかによって、行うべきことは違ってきます。
また、誰にとっても万能の「これさえやれば!」的な学習法があるかといえば、残念ながら、おそらくありません。

質問者さんに今必要なことは、以下の二つではないかと思います。
1)自分が補強すべきポイントはどこなのか見極める
2)見極めたポイントを補強する方法の実例を集め、その中から自分に適したものを探したり、自分流にアレンジしたりする。
それぞれ具体的にご説明していきますね。

1)自分が補強すべきポイントはどこなのか見極める
自分の補強すべきポイントを正確に見極めるには、シナリオスクールの課題等の習作やコンクール応募用の作品をある程度書き続けることが必要です。
(具体的に何本程度なのかをお伝えするのは難しいですが、少なくとも1本や2本では足りません。)

その時点での自分にとってベストの作品を書き続けながら、「面白い!」「これは到底かなわない!」と感じるような作品に触れることが重要です。脚本を読むという形、完成した映像を見るという形の両方で多くの作品に触れていくと、自然と「自分に足りないもの」が浮かび上がってくるはずです。

シナリオスクールに通っていれば講師の方からの指摘も受けられると思います。
その場合でも、
「〇〇さんはセリフは面白いんだけど、構成ができていませんね」
のように指摘を受けるだけでなく、自分自身でそれを実感することに深い意味があると私は考えます。
実感できたら、その時点で「大きく前進した」と考えてよいぐらいだと思います。
自分に足りない部分を実感できたら、次のステップに進みましょう。

2)見極めたポイントを補強する方法の実例を集め、その中から自分に適したものを探したり、自分流にアレンジしたりする。
例えば、私が上に書いた「構成がうまいと思う映画やドラマを自分でハコ書きにしてみる」という方法は、脚本家の斉藤ひろしさんがこちらの著書で紹介していらっしゃいます。

「向田邦子さんの作品を書き写す」というトレーニングも、小説家の冲方丁さんが著書の中で紹介されていた方法を「脚本にも応用できるのでは?」と考えて実践し始めました。

数多ある作劇法の本や、プロのインタビュー、スクールの先生が勧める方法等、習得方法のサンプルを集めて、それらを試し、時には自分流のアレンジも加えていく。
遠回りのようですが、実は、これが最も質問者さんにとって有効な学習法を見つける手立てのはずです。


……ということで参考になりましたでしょうか?
またご質問がありましたら、どうぞお気軽に。
これからもお互いがんばりましょう!
尚、これまでに脚本家志望のみなさんからいただいたご質問への回答は、こちらのマガジンにまとめてあります。


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#脚本 #シナリオ #エンタメ #質問 #マシュマロ
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脚本家。石川県金沢市出身/清泉女子大学文学部卒。芦沢俊郎シナリオ研究塾にて作劇を学ぶ。【主な作品】映画「きょうのキラ君」、ドラマ「ホテルコンシェルジュ」 、NHK朝ドラノベライズ「マッサン」「べっぴんさん」。2020年映画「10万分の1」公開予定!新作落語も書いています。
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