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ご質問にお答えします!『「1シーンだけ書く」という練習には意味がある?』

脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。

脚本の練習によ...

ご質問ありがとうございます!

【質問者さん以外のみなさんのための補足】

質問者さん以外のみなさんのために補足しますと、「20枚シナリオ」とは「200字詰め原稿用紙で20枚分の短編シナリオ」のことです。
「200字詰めの原稿用紙なんてあるの?」と思った方も多いのではないでしょうか?
映画やドラマの脚本が手書きされていた時代には、「ペラ」と呼ばれる200字詰め原稿用紙を使うのが一般的だったそうです。

そして某大手シナリオスクールでは、「スクール指定の課題に沿って、ペラ20枚分のシナリオを書いていく」という練習法が長年採用されているため、脚本家志望の人には「20枚シナリオ」を書いたことがある人が多い、というわけです。

【「1シーンだけ」を書いても練習になるのか?】

さて、「ペラ20枚よりも短い脚本を書いたり1シーンだけを書いたりすることは、初心者である質問者さんの練習になるのかどうか?」ですが、私からの回答は、
「ある程度は意味があるが、それだけを繰り返しても脚本が書けるようにはならない」
ということになります。

詳しくご説明していきましょう。
「脚本を書く」という行為は、以下の二つの要素に分けることができます。
1)どんなストーリーを書くのかを思い描く。
2)思い描いたストーリーを脚本の形式で描写する。

例えば質問者さんが「この前コンビニで見かけた男女のやり取りを基にして脚本を書いてみよう」と思ったとします。
見た光景を思い返したり、「事実よりも面白くするために、二人が大ゲンカを始めて警察沙汰になったことにしよう」と考えたりするのが、上記1)の「ストーリーを思い描く」にあたります。
そして、思い描いた内容を原稿に書き表すのが上記2)の「脚本形式での描写」ということになります。

「とにかく1シーンだけでも書いてみる」ということは、「上記2)脚本形式での描写」の練習にはなります。
例えば、「コンビニで見かけた1シーンを書いてみる」ならば、以下のような感じですね。

〇コンビニ・店内(深夜)
  客はまばら。
  店員の山田一郎(25)が商品を棚に並べている。
  スイーツの棚の前にジャージ姿の客、田中花子(35)。
  花子、太郎の方に振り返って、
花子「ねえ、プリンないの?」
太郎「そこになければないですね」

たったこれだけでも、初心者の人にとっては、
・柱の書き方
・小説の「地の文」とは違う、ト書きの書き方
・セリフの表記の仕方
に慣れる練習になります。

ですが、これを繰り返しているだけでは、「1)どんなストーリーを書くのかを思い描く」の練習にはなりません。
そして、ストーリー展開を組み立てられるようにならなければ、1時間モノのドラマや2時間尺の映画の脚本を書けるところには決してたどり着けません。

【長い脚本が書けるようになるためには?】

質問者さんはおそらく、「2)脚本形式での描写」は何とかできるけれど、「1)どんなストーリーを書くのかを思い描く」ができないために、「20枚まで書けない」のではないでしょうか?
もう一つの可能性として、「1)と2)を同時に行おうとすると、負荷が大きすぎて力尽きてしまう」ということも考えられます。
いずれにせよ、1)と2)を切り分けて練習してみると良いと思います。

2)の「脚本形式での描写」については、上記の通り「1シーンだけでもいいので、思い描いた光景や、実際に見た場面を脚本の形式で書き表してみる」ということで良いでしょう。

1)の「ストーリーを思い描く」をきちんと習得するのは、2)の「脚本形式での描写」とは比べものにならないほど難しいです。
練習方法も数限りなくあり、この場で簡単にご紹介し切れるようなものでもないのですが、まずは「頭の中でストーリーを思い描くだけではなく、書き留めながらストーリーを組み上げていく」ということを実践されると良いと思います。
いきなり脚本形式で書こうとするのではなくて、まずは自分が書きやすい形式でストーリー展開を書き出してみる、ということです。
書きなれている人は、プロット形式で書くことが多いと思いますが、初心者の人なら、まずは下記のような箇条書きでも良いかと思います。

・コンビニ店員の太郎の店に、花子がプリンを買いに来る。
・プリンは売り切れ。それを伝えた太郎に花子が激怒。掴みかかってくる。
・花子、めちゃくちゃ強い。太郎をボコボコにする。見ていた客が、慌てて110番。

例えばこういった感じのものをストーリーの結末にあたるところまで書いた上で、2)の「脚本形式での描写」に取りかかると、これまでは書けなかった長さの脚本が書けるようになるのではないかと思います。
ぜひ試してみてください。

【質問者さんのための補足】

最後に「蛇足かも……」と思いつつ、少し厳しいことを付け加えます。

「20枚シナリオ」は、脚本家志望の人に広く知られているとは思いますが、あくまでも”練習”の方法であり、「20枚シナリオが書ける=シナリオが書ける」ということでは決してありません。
おそらく「基礎レベルの人が、いきなり1時間モノ、2時間モノを書こうとしても難しいだろうから……」ということで考えられた練習法なのだと思いますし、20枚シナリオが書けることを目標とは捉えないでください。
あくまでも、シナリオが書けるようになるための道のりの、ほんの1ステップに過ぎないと認識するのが適切だと私は考えます。

質問者さんは「初心者過ぎて20枚まで書けない」と書かれていますが、「ペラ20枚」という枚数自体が「初心者向けの設定」だということです。
今後のために、そこはきちんと認識されておいた方が良いと思います。

これからもお互いがんばりましょう!

ご質問のある方はこちらからどうぞ。
※シナリオコンクールの規定、審査基準に関してはお答えできませんので、その点はご了承ください。


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