君が大名人たちに勝てるところが、ひとつだけある
「昭和元禄落語心中」という雲田はるこさん作のマンガがありまして、アニメ化、ドラマ化もされています。
先ほど、原稿を前に頭を悩ませているうちに、唐突にこの作品の1シーンが頭をよぎりました。
アニメ版でいうと、第二部第一話の終盤のシーンです。
真打に昇進したばかりの噺家・助六に、かつて噺家になろうとしたこともあるという人気作家の樋口が、以下のように語ります。
(Amazon prime会員の方はリンク先から無料で見られます。19:11~のシーンです。)
真打に昇進したての助六が、鬼籍に入った大名人たちにたったひとつ負けないところ。
それは今、生きているということ。
アニメのテレビ放送時にも非常に胸を打たれたシーンなんですが、今改めて見てもグッと来ます。
さて、「さして有名でもない脚本家」である私としては、こういうシーンを見ると、
「樋口先生から助六へのメッセージを自分の身に置き換えると、どういう意味を持つことになるのだろう?」
と考えるわけです。
私は伝説的脚本家の故・向田邦子さんを尊敬していまして、公私を問わず心がざわつくようなことがあると、向田さんの作品を書き写し、気持ちを落ち着けるという習慣があります。(これを「写経」と呼んでいます。)
書き写すたびに、ため息がでるような素晴らしい表現に触れることができ、憧れは募るばかり……なのですが、自分がこの域に達することなど、こちらの回の助六のセリフを借りるならば、
「天地がひっくり返ぇってもムリ!」
とも思うわけです。
それでも、たったひとつ私が勝てることがあるとするならば、2019年末の今、この世に生きているということ。
この先、新たな作品を生み出すことができるということ。
令和の日本の空気を感じ、それを作品に反映できるということ。
自分は今、とても不遜なことを書いているのではないかという気もしますが、そう信じて、使命感を持つことが、決して愉快なことばかりではない創作の道を進んで行く上で、心の支えになってくれるんじゃないかと思います。
****************
脚本、小説のオンラインコンサルを行っていますので、よろしければ。
Twitterアカウント @chiezo2222
noteで全文無料公開中の小説『すずシネマパラダイス』は映画化を目指しています。 https://note.mu/kotoritori/n/nff436c3aef64 サポートいただきましたら、映画化に向けての活動費用に遣わせていただきます!