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ご質問にお答えします!『会社員との兼業でプロの脚本家になることは可能?』

脚本家志望の方から、こちらのご質問をいただきました。

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ご質問ありがとうございます!
私が知る限り、会社員との兼業でプロの脚本家として活動している人はいません。
脚本家志望者が集まるワークショップで、ある参加者が「兼業プロになりたいと思っています」と発言したところ、プロデューサーから「無理でしょ」と一蹴されているのを見たこともあります。
その兼業プロ志望の人はワークショップ後、
「小説家で兼業の人はいくらでもいるんだし、脚本家だってできるはずだ」
と不満げに言っていました。
確かに、人気小説家の朝井リョウさんも、森見登美彦さんも、作家業とは別にフルタイムの仕事を持つ「兼業作家」だった頃があります。
ですが、小説家と脚本家では、かなり状況が違っているのです。
その辺りを具体的にご説明したいと思います。

私は映画等の脚本を書く仕事と並行して、ドラマのノベライズ本等の執筆も行っています。
そのため、脚本を書く場合と、小説を書く場合の仕事の進め方にさまざまな違いがあることを、体験を通して知りました。
例えば決定稿に至るまでの打ち合わせの回数は、一般に、脚本のほうがずっと多いです。
また、打ち合わせの参加者の数も、脚本の場合のほうがずっと多くなります。
小説の場合、打ち合わせは基本的に担当編集者と書き手の「一対一」ですが、映画やドラマの場合はプロデューサー、監督を始め、何人ものスタッフが集まります。
脚本は「より面白くする」ということ以外にも、多くのことを考慮しながら改稿していかなくてはなりません。
映像化を前提としているため、撮影に必要となる予算、撮影スケジュール等々、さまざまな観点から「実現可能であるか?」を精査しなくてはならないのです。
そのため、脚本の打ち合わせの出席者は、小説の場合より多くなります。

忙しいスタッフの面々と、何度も打ち合わせを重ねるとなれば、日程調整は容易ではありません。
ですので、プロデューサーの立場で考えると「会社員との兼業で、平日の朝から夕方は打ち合わせNG」という人を脚本家に起用することは現実的ではないのです。
また、映像作品は完成までの過程が非常に長く、その間に想定外のトラブルが起きる場合もあります。
例えば、「クランクイン前にキャストの一人が急病で降板。何とか代役を引き受けてくれる人は見つかったが、降板した人とまったく同じスケジュールには対応してもらえないので、その役の出演シーンを減らし、それでもストーリーが成立するように改稿しなくてはならない」といったこともあり得るのです。
このようなケースでは時間にまったく猶予がなく、即日対応が必要ということも珍しくありません。
この種の不測の事態まで考えると、プロデューサーはますます会社員との兼業の人を脚本家に起用することはできないわけです。


これからもお互いがんばりましょう!

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