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おばけがこわい

おばけが怖い。一度も見たことがないし感じたこともない。だからこそ、怖いのかも。幽霊の正体見たりなんとやら。

夜道は、おばけが出たらどうしよう、ということばかり考えていた。
夜道、といっても日が暮れた後のことで、夏でいえば19時過ぎとか、冬でいえば17時過ぎとか、だいたいそんなところ。中学生になっても、ピアノ教室の帰りはお母さんと一緒に歩いて帰った。家から徒歩2分だけど、もしおばけに遭遇したら危ないから、もしもに備えて、レッスンが終わる19時にお母さんに迎えに来てもらっていた。

中学生の頃は学校で毎日連絡帳みたいなものを提出する決まりがあって、そこにピアノ教室の帰りに1人で歩けない、おばけが怖いと書いたことがある。担任の先生は、夜のにおいっていいですよね、とかなんとか、こちらの気持ちを汲み取る気のない返事をよこした。


高校生になって、お母さんに迎えに来てもらうのはさすがに恥ずかしいと思うようになった。そのためピアノ教室の帰りは、毎回したくもないダッシュをして帰った。雨が降っていたって傘なんかいらない。2回曲がらなきゃいけないのが惜しかった。直線ならもっと早くお家につけるのに。曲がり角からおばけが出てくるかも、なんていう心配も減るのに。だけど走るときはそんなことを考えてはいけない。できるだけ楽しいことを考えて、無理やり笑顔をつくって、走る!走る!走る!!!少し呼吸を整えて「ただいま」と言えればミッションクリア。高校3年間、それは時に諦めそうになったが、幸い私はこのミッションを完遂した。

大学生になり、レジ打ちのアルバイトを始めた。バイトが終わるのは21時過ぎ。どう考えても危なすぎた。しかも徒歩15分。おばけにあうのも時間の問題ではないか。こんな危険なアルバイト、辞めるべきか。

でも、アルバイトをしないと友だちと遊びに行くお金がない。遊びには行きたい。背に腹は代えられぬ。チャリを爆走させることにした。日に日に早くなっていく。何回かケーサツにも止められた。どうせならそのままお家まで送ってもらえばよかったな。


夜遅くに仕事している人、出歩いている人への尊敬の念がやまない。おばけ怖くないのかな。

いっそのこと、おばけを見てしまいたい。
なーんだ、ってなるかな。
意外と大丈夫そうならLINEとか交換したい。

最後まで読んでいただきありがとうございます!リンツのチョコレートに埋もれたい。