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“親ごころ”のエール!変容・超越し英雄に。 神様も失敗して成長した 大国主神⑪ ことのは綴り 其の二七

根の堅洲国からの”卒業”

「人生に失敗がないと 人生を失敗する」
こんにちわ。更新復帰16回目。テレワークで自宅にいる時間のおかげで続いて綴っております。きっと自宅で過ごす人も増えていますね。
そんな、どなかたに読んでいただき、もし何かしら生きるヒントにでもなれば幸せです。

さて、根の堅洲国(かたすくに)で、須佐之男命さまから次々と難問を出され、そのサバイバルを乗り越えてきた、優しく、勇気もあり知恵深い大国主命さまの「ヒーローズ・ジャーニー」。
この時点では、まだお名前は大穴牟遅神(おほなむぢのかみ)と呼ばれています。
恋する青年神でした。


大穴牟遅神さま様は、これまで「蛇の部屋の一夜」「百足(むかで)と蜂の部屋の一夜」そして、広い平原での「火の試練」、さらに「八田間の大室」での最後の試練を、須勢理比売さまや、ねずみの協力を経て、くぐりぬけてきました。
そして、

「ここにはもういてはいけない……」

と、一大決心をなさいました。
きっと、ここでの学びは終えたと思われたかもしれません。


それは、須佐之男命さまの娘で、運命の出会いをした須勢理比売さまを連れて、根の堅洲国を“卒業”し、脱出することでした。

根の堅洲国を司る須佐之男命さまの、王の印ともいえる「宝物」3点セット
生大刀(いくたち)・生弓矢(いくゆみや)・天の詔琴(あめののりごと)を奪い取り、

あその娘神・須勢理比売さまを大切に背中に抱き、
恋の逃避行という“冒険”を選ばれたのです。

地下にある根の堅洲国の宮殿から、地上の葦原中つ国の境にある
黄泉津比良坂(よもつひらさか)を目指して必死に走ります。

ところが持ち出した天の詔琴(あめののりごと)が、大きな木にぶつかったから、
さあ大変です。
根の堅洲国中に、この琴の音が大きく鳴り響きました。

眠ってしまっていた須佐之男命さまも目を覚まします。
「何事じゃ~」

でも、髪を垂木の柱にくくりつけられていて動けません。

その大きな体を動かした途端、宮殿の大広間の柱が崩れてしまいました。

髪を垂木からほどいているうちに、逃げた若い男女の2柱の神はさらに宮殿から遠ざかっていきます。

大穴牟遅神さまは、背中に抱いた須勢理比売さまに目をやりながら、懸命に走りました。

宮殿が遥か遠くに見えるようになると、しっかりと、自分に何か言い聞かせるように頷きました。

根の堅洲国から、一歩、一歩、大地を踏みしめて
後ろを振り返らずに歩いていきます。


あともう少しで、黄泉津比良坂です。


もう、どこにもひ弱でナイーブな末っ子で、いじめられっこキャラの少年はいません。
愛する女性を守りながら、宝物も手にして、とても凛としたお姿です。
何かを成し遂げた、それがお顔にもお姿にも表れています。


須佐之男命さまの本心とエール


そのとき、宮殿から追いかけてきた須佐之男命さまも黄泉津比良坂へとたどり着かれました。

それでも、ずっと自分たちが進むべき前を見据えて
葦原の中つ国を目指して、まっすぐに歩く大穴牟遅神さま。

その姿をご覧になった須佐之男命さまも
「うん、うん」
そう大きくうなずいていました。

背中に抱かれる、可愛い可愛い愛する娘神の姿にも、
「よし、よし」
そう頷かれた気がします。


そして、須佐之男命さまは、お顔をお上げになり、
しっかと大穴牟遅神さまと須勢理比売さまを見つめながら、
根の堅洲国の王としての威厳に満ちたお姿で、
ハッキリと大きな声でこう言葉をおかけになりました。

大穴牟遅(おほなむぢ)よ~~
これまで、お主(おぬし)を試していたが、主はよくやったぞ。
わしから手にいれた、宝ものは、お主にやろう
その生太刀・生弓矢で、お主を苛め抜いた腹違いの兄神どもを、
山の下に追い落とせ。
川瀬に追い払ってしまえ。

そして、お主は、今日より
大国主神(おおくにぬしのかみ)となり、
また葦原の中津国の神霊・宇都志国玉神(ウツシクニタマノカミ)となり、

我が娘、須勢理比売を正妻として
出雲の宇迦山の山のふもとに
地底の岩に宮殿の大柱を深く深く掘りててて
天空に垂木を高くあげて
天界の高天原にも届くような
立派な立派な宮殿を建てるんだぞ~~
この奴~~

根の堅洲国の王である須佐之男命さまは、
大穴牟遅神の母神からも
「息子を、どうぞよろしくお願いいたします」と頼まれていたのでしょう。
我が身の子孫でもあり、
やがては、自分の後継者になれる奴か
娘神の須勢理比売をあずけてもいい奴なのか

試練を与える厳しさの中には、深い愛情があったのです。
そして、少年でナイーブさのある、線の細い大穴牟遅神さまの
才能、気質、人間性(この場合は。神性というのでしょうか)、将来性……
鋭い審美眼でじっくりと見ていたのでしょう。

ライオンが、自分の子ライオンを崖からつきおとすように
獅子の子落とし
我が子にあえて厳しい試練を与えて、その器量を試すことで
一人前に育てることができるのだというたとえがあるように

日本の神話には、すでに
須佐之男命さまが、子孫である大穴牟遅神様に
一つ一つの試練を与えながらも
その成長に期待をしている、
厳しき愛情が描かれていたのです。

覚えていますか?
大穴牟遅神さまの最初の試練、「蛇の部屋」「百足と蜂の部屋」では、
須佐之男命さまは、大穴牟遅神さまとは一緒に過ごしていません。

この2つの試練の後、
今度は、須佐之男命さまは、大穴牟遅神さまを連れて、共に狩りにでかけます。

そして、この火の試練から奇跡の生還をなしとげたあと

大広間での最後の試練では、
須佐之男命さまは、自らの髪の毛に触れさせるほど
大穴牟遅神さまを、自分のすぐそばに置かれ、
身を委ねられているのです。

与える試練の度に、距離は近づいていっていた……。

まるで、須佐之男命さまが、大穴牟遅神さまを認めていくのに伴い
心を開き、信頼し、かわいい奴だと
愛情の深まりとともに、距離も近づいていたのです。


油断をして眠ってしまっても
自分の持つ「宝物」を奪われても

そこまで生き抜ける力のある男神なら
愛する娘神をあずけてもいいだろう。

もう、お前はいじめられっ子じゃないぞ
大きな国の主となり
我が娘を人生の伴侶にして
葦原の中つ国に
素晴らしい国をつくるんだぞ~~~

こいつめ。真に愛い奴だ~~~~

そう、深い深い愛からの
そして、娘神を嫁にだす父神としての
さみしさも感じながら
須佐之男命さまは

新たな人生をつかみとった
2柱の夫婦の神に
最高のエールを送ったのでした。

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成長・変容・超越 英雄神へ

晴れて
大穴牟遅神さまは

ここから

大国主命(おおくにぬしのみこと)

と、呼ばれるようになりました。

まさに心優しい少年神から、成長
変容し
苦難を乗り越えて
自身の制限を突破し
一回りの二回りも
スケールも大きく深くと
超越をして、
英雄神へと成られました。
運命の出会いを果たした須勢理比売様が
今では、そばにいます。

さぁ

根の堅洲国での冒険を終えて

葦原中つ国に

帰還していく。

そう、この旅こそが、成長の過程こそが
「ヒーローズ・ジャーニー」
英雄の旅のプロセスなのです。


大国主命様と妻の須勢理比売さま

一つの度を終えて

新たな旅が始まります。


―次回へ

沖縄海と光IMG_2675

いつも、長めの文章を、最後まで読んでくださり、ありがとうございます。やっと目次設定を覚えました(^^)。

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