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海幸彦と山幸彦 神様も“失敗”して成長した ことの葉綴り。百六三

海幸彦・山幸彦 もう一柱は?

山の日。祝日の夕暮れ時「ことの葉綴り。」に向かい、すっかり夜です!

猛火にくるまれた産屋で、木花佐久夜毘賣さまは、天孫の邇邇芸命さまの御子三人をお産みになりました。

燃え盛る火の中で、火照命(ほでりのみこと)が、誕生。
次に火須勢理命(ほすせりのみこと)
次に、火遠理命(ほをりのみこと)別名天津日子穂穂手見命(あまつひこほほでみのみこと)が生まれてきました。

この御子たちは、すくすくと育っていき、
いちばん上の、火照命(ほでりのみこと)は、海で魚を獲るのが好きで、毎日のように、釣り竿を肩にかけて、海に出ては、大小の魚を獲ってくるので、みんなから、海幸彦と呼ばれていました。

いちばん末っ子の、火遠理命(ほをりのみこと)は、
山を掛け巡るのが好きで、毎日、弓矢を背負い、猟をしていろいろな鳥や獲物を獲ってくることから、山幸彦と呼ばれていました。

ちなみに、火須勢理命(ほすせりのみこと)は、物語では触れられていませんが、ほは、火とともに稲穂のほを示し、須勢理は、進むという意から、火が燃え盛るように、稲穂が勢いよく成長するという神名といわれています。

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“おなじみ”海幸山幸の物語

ある日のことです。
いつものように、山に獲物を獲りに出かけた山幸彦は、
毎日、毎日、山で同じことをしているのは、つまらないなと。

と、兄の火照命に、一つの提案をしたのです。

お兄さん、僕たち、それぞれ魚を獲る釣り竿と、獲物を射る弓矢を取り替えっこして使ってみない?

弟神の突然の思いつきに、兄は、「何をいってるんだい」と、
取り合ってくれませんでした。

けれど、山幸彦は、そのアイデアを捨て去ることができません。

お兄さん、この前、話した、取りかえっこの件なんだけど……。

また、何を言ってるんだ……。

それでも、あきらめきれずに、繰り返しお願いしました。

お兄さん、毎日毎日、山に入って猟をするのは飽きたんだ。
お互いの道具を一度取りかえっこしてみようよ!!

山幸彦、これでもう三度目だぞ。そんなことはダメだよ。
魚釣りは、そんなに簡単なもんじゃないんだよ。

海幸彦兄さん、そこをなんとか。ぜひ、一度、僕も海に出てみたいんだ。お願いします。

真剣な面持ちで、頭を下げる山幸彦に、
兄の海幸彦も、とうとうおれてくれたのです。

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念願の海へ釣りに!

そこまでいうなら、しょうがないな。
よし、取り換えてやろう。ただし、一度だけだぞ。

ありがとう!! うれしいよ、兄さん。

いいか、この釣り針は大事な道具なんだから、大切に扱うんだよ。
決して、失くしたりするんじゃないぞ。

もちろん! 大丈夫だよ。きっとたくさんの魚を釣ってくるよ!

海幸彦は、弟の山幸彦に、魚を釣る釣り竿と釣り針を。
山幸彦は、兄に、弓と矢を手渡したのです。

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これが兄さんの、釣り竿と釣り針か!
よし、初めて海で魚釣りができるぞ!

こうして、山幸彦は、喜び勇み、海辺へと出かけていきました。
兄の海幸彦は、山へと狩りにでかけました。

念願の海へ釣りにやってきた山幸彦。
岩に腰かけて、釣り竿を海に垂らして待つばかり……。

けれど、うんともすんとも、魚は寄ってきません。

場所を変えても、一匹の魚を釣れないのです。

お日様が空高くてっぺんに昇る時間になっても、
まだ一匹も魚を釣ることはできませんでした。

それでも辛抱強く、待ちつつけていると……。

魚の群れが目の前に現れました。大小の魚たちが、泳いでいます

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よし、今度こそ! 

力いっぱい釣り竿を海に投げ入れます。

あの、大きな魚を狙うぞ!!

あっ針が魚にかかった!! よし、引き上げるぞ!

重い、重い!!! こいつは強い魚だな~。


両足を踏ん張り、力いっぱい、釣り竿を引っ張り上げようとしたときです。

プチっと釣り糸が切れて、その勢いで、
山幸彦は、そこに尻もちをついてしまいました

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日暮れ、泣きながら家路に

ああ~っ痛い!

逃げられてしまった……

釣り竿を引き上げた山幸彦は、目が点になります。

なんと、釣り針を、逃げた魚に持っていかれ取られてしまったのです。


あああ~っ~~どうしよう!!
兄の大事な釣り針がない!!!
どうしたらいいんだろう……。

夕日が茜色に照り輝き、夕暮れを告げていました。

もう、帰るしかありません。

とぼとぼと家路に向かう山幸彦の目には
涙が光っていました


おなじみの、海幸彦・山幸彦の神話です。
どうか、子ども時代を思い出して
物語をご一緒に楽しんもらえると幸いです。

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―次回へ。

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