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神様は個性的!? 天照大御神さまの言よさし⑦ 神様も“失敗”して成長した 百三二

兄の名の詠む妹


こんにちは。今日も「ことの葉綴り。」に向かいます。
神さまも“失敗”して成長したという日本の神話。
高天原を治める天照大御神さまは、「地上の豊葦原の水穂國は、我が御子が治めるべき国」と、二柱の神を遣わせましたが、
地上を気に入り大国主神様に取り入られてしまいました。

自分が放った矢の還し矢で亡くなった天若日子(あめのわかひこ)
の葬儀の席に、天若日子にうり二つの弔問客
が訪れます!。
天若日子の高天原の妻と子供たちは、
「息子は亡くなっていなかった~」と、弔問客の神の手や足に取りすがって泣き崩れますが……。

天若日子が親友だからこそ、お悔やみに来たのだ!“
この私を、穢れた死人とするのだ!! 縁起でもないわ!!
 
そう激怒しながら、喪屋を切り倒し、足で、蹴飛ばして、そのままものすごい勢いで飛ぶように走り去っていきました

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死者と間違えられて怒り苦り走り去った神は、
名は、阿遅志貴高日子根神(あぢしきたかひこねのかみ)
といい
天若日子の地上の妻の下照比売(したてるひめ)の兄神でした。


下照比売は、高天原から天降ってきた、夫の家族が、
夫の親友でもある兄神の名前を知らないのは、
とても残念
なことだと考えて、
兄の歌を詠みました

天なるや
弟棚機(おとたなばた)の
項(うな)がせる 玉の御統(みすまる) 
御統(みすまる)に穴玉はや 
み谷 二渡らす
阿治志貴高 日子根の神ぞ。

これは、今でいう、田舎風の歌曲で、
民謡のはじまり
、と言われているのです。

意味はというと……。

天にいる若い機織女が
首にかけた麗しい玉飾りの
長い緒に貫かれた穴玉の
その一つ一つが光輝くように
谷を二つも超えて照り渡るように
輝かしく男らしい神の名は
阿遅志貴高日子根神(あぢしきたかひこねのかみ)
というのでございます。

愛した夫の高天原の家族に
自分の兄神のことを、
兄は本当は佳き神なのだと知ってほしい。
という妹としての想いが
感じられますね。

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高天原では……

そして、この天若日子の死によって
高天原と葦原中つ国の地上との関係が
よけい複雑なものになっていきましたー

天照大御神さまは、これまでの出雲への神の派遣が、
うまくいかなかったことを受けて、
どうすればいいだろうか? 
どの神を遣わせば、うまくいくのだろうか?
と、思案されていました

そこで、知恵の神、思金神と、八百万の多くの神々が
一つの提案をします。

天の安の河の河上の、天の石屋におります
伊都之尾羽張神(いつのおはばりかみ)を
遣わすのがいいでしょう。
この神でなければ、その神の子の、雷神であり刀神の
建御雷之男神(たけみかづちのかみ)がいいでしょう

この伊都之尾羽張神(いつのおはばりかみ)は、
別名を、天尾羽張神(あめのおはばり)といい、
天照大御神さまの父、伊邪那岐命さまが、
愛する妻の伊邪那美命の命を失う原因となった
火之迦具土神(かぐつちのかみ)の首を斬った
十拳剣(とつかのつるぎ)から生まれた神さま
でした。
まさに、剣の神です。


さらに続けて思金神さまは、こうつづけます。

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”ひねくれもの””の神さまへの死者

天照大御神さま。
ただこの伊都之尾羽張神(いつのおはばりかみ)は、
たいそうひねくれておりまして、
天の安の河の水を上流でせき止めて、
道も塞いでおり、奥の岩山におります。
ゆえに、他の神たちでは、そこに近づくことができません。
近づけないなら、地上へ派遣を遣わすこともできません。
そこで、ここは、特別に、天迦久神(あめのかくのかみ)を、
伊都之尾羽張神(いつのおはばりかみ)の元へ、遣わして
みるのがよいでしょう

この迦久神(かくのかみ)のかくは、鹿児の鹿の神さまです。
険しい岩山、道なき道をも進むことができますね。

また古より、刀をつくる鍛冶の鞴(ふいご)には、
鹿の皮が使われていたことから、
十拳剣の神でもある伊都之尾羽張神(いつのおはばりかみ)の元へは、鹿の神の天迦久神(あめのかくのかみ)が、使者になったといわれています。

鹿の神さまが、ひねくれものの刀剣の神さまの元へ
天照大御神さまの言向けを持っていったのです。

八百万の神さまって、たくさんいますが
どれも、個性的で、欠点もあったり、ひねくれものもいたり
いうことも聞かなかったり……と、不完全で、おもしろく
私たちの“社会”と、とっても似ていると思いませんか?(^^)

神と神との関係……ユニークですよね。
怒って走りさる神さまに、派遣しても、ゆうこと聞かない神さま……
天照大御神さまも”困惑”されるはずですね。

人間社会でも、仕事場や、学校でも
身近に在りそうなお話ですよね~

神話は今も生きている……物語は、続いていきます。

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―次回へ。

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