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久しぶりに美術館に行ってきた話

最後に美術館に行った記憶があるのは中学校か高校の時だろうか。どこに行って何を見たかも曖昧であまり覚えていない。
学生時代の美術の成績もそこそこくらいだったし、そもそも絵も下手くそだし、美術とは無縁な人生かなと思っていた。

そんな私は先日、美術館に行って絵画を鑑賞してきた。
その時のことを書き残しておこうと思う。

行こうと思ったきっかけ


先日行われた「プレゼン工場」というトークライブだった。出演者の芸人さんが自分の好きなものについて10分プレゼンをするという内容でめちゃくちゃ楽しかった。

その中で出演者の一人、ヒガ2000さんは「印象派は地下芸人」と題して近大美術史と印象派の画家についてプレゼンした。「印象派」という単語は美術の授業でなんとなく聞いたことあるくらいのレベルだったのだが、巧みな話術に知的好奇心を掻き立てられ引き込まれるように聞いていた。

そして、最後にヒガさんはこんなことを仰っていた。

「新宿駅からナルゲキの方に歩いて行くと、世界に数点しかない本物のゴッホのひまわりが見られる美術館がある」

そんなの全然知らなかった。見に行きたい!と思い立ったが吉日、終演後すぐに場所を調べてチケットを取ることにした。

久々の美術館へ

そんなわけで、後日所用で午後半休を取った日に向かったのは東京・新宿にあるSONPO美術館

JR新宿駅から歩いて5分くらいの好立地。西口を出てカリヨン橋(ビックカメラに沿うように建っている歩道橋みたいな所)を渡っていくと割とすぐに着いた。

この記事のトップ画像はここのエントランスである。シルバーに曲線的なフォルムがめちゃくちゃカッコ良かった。

私が行ったのは平日の15時半くらい。比較的空いていてゆっくり鑑賞しやすかったように思う。

この日は「ブルターニュの光と風」という展覧会が開かれていた。フランスの北西部ブルターニュ地方を題材にした絵画がおよそ70点展示されている。しかも一部作品を除き写真撮影可能、私的利用に限り画像使用OKというルール。私はてっきり美術館は写真撮っちゃダメという勝手なイメージがあったので少し驚いた。

順路は受付後エレベーターで5階まで上がり、そこから階下へ順番に降りていく構造だった。

ちなみに入り口近くにコイン不要のロッカーが置いてあるコーナーがあるので、受付をする前に利用するのが良いかもしれない。私は受付後にロッカーの存在に気づき、一旦受付用の順路を抜けて荷物を預けまた入り直さなければならずスタッフの方に少し面倒をかけてしまった。ただ、2階にミュージアムショップがあるので財布は持っていった方が良いと思う。

そして、今回人生で初めて音声ガイドというものを借りてみることにした。価格は600円。

こんな感じ

声は窪田等さん。情熱大陸や任天堂のCMのナレーターを長年務めていらっしゃる方だ。落ち着いた聞き取りやすいお声が心地良く、ゆったりとした気分で鑑賞できた。また、解説文に載っていない画家の情報や鑑賞のポイントを知れたのでこれは借りて良かったと思う。

あと、展示室の休憩用の椅子がフカフカで気持ち良かったのと、5階から4階に降りる順路にある自動ドアが近未来的でカッコ良かったのが印象に残っている。

好きだった作品たち

今回の展覧会で個人的に好きだった絵画を写真と共にいくつか紹介する。

テオドール・ギュダン『ベル=イル海岸の暴風雨』1851

この展覧会で最初に見ることになる作品。めちゃくちゃでかい。不穏な空模様や波の動きは絵とは思えないほど緻密ですごかった。
下の方をよく見ると左側の冖みたいな形の岩の上に人、右側の草原にウサギみたいな動物がいるのに気づいてちょっと興奮した。

ジャン=マリー・ヴィラール『ブルターニュの室内風景』1870

ブルターニュに住んでいた人々の生活や日常の一幕を垣間見れるような作品。こういうの好みだ。家具や部屋の描き込みも丁寧でつい細部まで観察したくなる。右側の背を向けている女性の姿には少し物寂しさみたいなものを感じた。あと、わんこがかわいい。

アンリ・ジャン・ギヨーム・マルタン『ブルターニュの海』1900

全体的に絵の具を何層も塗り重ねてできた作品。近くに寄るとそれがよく分かった。波飛沫やゴツゴツとした岩肌の部分は特に厚みがあって、筆の跡もしっかり残っている。これが離れてみると臨場感のある海岸の風景に見えるのが面白かった。

フェルディナン・ロワイアン・デュ・
ピュイゴドー『藁ぶき屋根の家のある風景』1921

ピンク、もしくは赤い空が印象的な作品。空のグラデーションとぼんやりと霞んだ太陽、家から上る煙の感じがお気に入り。ほっこりとした温かみのある雰囲気にとても癒された。朝にも夕方にも捉えられるこの絵画、私は夕方の日没が始まる少し手前の風景に見えた。

そして、今回一番好きだったのがクロード・モネの「アンティーブ岬」という作品。残念ながら撮影NGだったため写真はない。


暖かな昼下がり。穏やかな波音、さわさわとした葉音、遠くで海鳥の鳴き声が聞こえる。潮の匂いとともに少しぬるい潮風が首元を通り抜けていく。



上はこの絵画を見た時私の頭の中に浮かんだイメージである。一瞬この絵の中にいたのかと錯覚するくらい鮮明で、初めての体験に内心びっくりした。

海をバックに斜めに松の木が生えている大胆な構図と鮮やかな色使いが印象的。音声ガイドでも少し触れていたのだが、湿気というかしっとりとした質感を感じたのも不思議だった。
見惚れたと言うのだろうか、一番時間をかけて鑑賞した作品だったと思う。私の心を掴んで最後まで離さなかった。

好きだった作品として5点挙げてみたが、記事をまとめるうちに気づいたことがある。その内4点には海の風景が必ず入っている。私も海とは無縁の土地で生まれ育ったからなのか、憧れみたいなものがあるのかもしれない。海に惹かれてこうやって言葉という形で記事に残したという部分では、絵を遺した画家たちと同じだったのかなと思うとなんかちょっと嬉しくなった。

圧巻、ゴッホのひまわり

さて、当初のお目当てだったゴッホのひまわりは順路の一番最後に展示されていた。ガラス越しにスポットライトに照らされたそれとついにご対面だ。

美術の教科書とどうぶつの森でしか見たことのなかった絵画が目の前にあるという現実に圧倒されて、最初は口をぽかんと開けたまま立ち尽くすことしか出来なかった。マスクで隠れていたけど、この時の私は相当なアホ面だったと思う。

焦らずゆっくりと作品を見渡す。自分が想像していたものより何倍も大きかった。素朴で明るく生き生きとした雰囲気を感じた。
目を凝らすと筆の跡もしっかりと残っていて、特に絵の具を厚く塗って線を作ることでひまわりの細かい花びらが集まっている感じを表現しているのが面白かった。

閉館のお知らせのアナウンスではっと我に帰り、出口に向かう。記念のグッズも買って結局美術館を後にする頃にはギリギリになってしまっていた。

今回買ったグッズたち

最後に

久しぶりの美術鑑賞、一言で言うとめちゃくちゃ楽しかった。美術には無縁だと思い込んでいた私でもこんなに楽しめるとは正直思っていなかったのでびっくりだ。

今回の展覧会のチケットは1,500円。最近よく行くようになったお笑いライブや映画を見に行くのとだいたい同じくらいの値段で美術品が見れたんだなと思うと、結構気軽に行けるもんなんだなと思った。

あと、印象派の画家の作品が多く展示されていたのも良かった点である。「プレゼン工場」でその辺りの知識が少し入っていたお陰でより楽しむことができた。やっぱり作品や解説文の中に知っている名前があると一気に身近な存在として感じられる気がする。

月並みな感想しか出てこなかったけれど、こうやって家に帰ってから自分が感じたことをまとめるのも楽しかった。

これから美術の展覧会についてもちょくちょく調べてみようと思う。
また新しい趣味が増えそうだ。

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