超条件世界{三章、世界を創りし者}
これは、すれ違い続けた者たちの物語・・・。
「・・・ふう。とりあえずこれで一通り終わったわね。」
「ああ。そうだな。」
「終わったのか?」
「ああ。火で大地を風で空を浄めた。」
「これで世界創造は終わり♪」
「そうなんですね!」
「で、この世界をどう分ける?」
「・・・分けるとはどういうことだ?」
「何寝ぼけたこと言ってんだ。俺達が創った世界の土地の配分をどうするのか聞いてんだ。」
「私は均等に五等分がいいと思うけどねぇ。」
「昇旋、祓火ちょっと待て。何故世界を創り終えた後にその世界を分ける話になる?」
「何故って世界を創ったのは俺達だ。他の付与者の奴らにどうこう言う権利はないはずだぜ?」
「まあ、それはそうですよね。」
「いや、震子もそういう問題じゃない。そもそもこの土地が俺達自然神付与者のものという考え方自体がおかしい。」
「けど、神に作るのを命じられたのは私たちよ。」
「それは命じられているだけだろ?」
「その後の管理は言われていないだろう。」
「浄煌と海生も抑地側なのかしら?」
「・・・今はそういう話をしていないだろう。」
「じゃあ何か?如月や全能。天使の奴らとも仲良く土地を分けろってことか?」
「そうでもない。まず、土地が一個人の占有財産かのような考え方が違うといっている。土地は本来誰のものでもないはずだ。」
「・・・そしたら、私たちにも土地を渡さないって言いたいの?」
「そういうことではない!」
「・・・もしかしてお前らみんなで作った土地を独り占めする気じゃねえだろうな?」
「そんなことは一切考えてはいない!」
「・・・作ったといっても大部分は土の私たちと水の海生たちが作ったんだけどね。」
「ねえ封砕。今何か言った?」
「あんた今何かぼやいたわよね?」
「・・・別に?」
「別にじゃないでしょ?あんたいっつもそうよね。後ろでこそこそと。」
「さっきから大人しく聞いていれば調子に乗っていい加減にしなさいよ?」
「別に調子になんて乗ってないよ。」
「最初の祠の時だって、いきなり岩を落としてきて何?私たちを殺す気だったの?」
「おいお前たち、いい加減にしないか!」
「「「・・・!」」」
「せっかく世界を創り終わったのに何でこんなに険悪なんだよ。少しは無事に世界を創り終えたことを喜ぼうぜ?」
「・・・祆矢たちの言う通りだ。今俺たちは平静を欠き過ぎている。」
「昇旋も、土地のことはもう少し休んでからでいいだろ?」
「・・・分かったよ。雹聚たちに免じてここは一旦退いてやる。」
「抑地さんも今日の所は・・・。」
「・・・分かった。響たちに免じてここは一旦終わりにしよう。」
そうして、争いは何とか解決したように思えた。
~~~~~
~~~翌日~~~
「ねえ、今日は力を返す日でしょ?どうするの?」
「それは勿論、返しに行きますよね?」
「・・・返さねえよ。」
「・・・え?」
「まだ返さねえよ。だってまだ土地の話が終わってねぇ。」
「じゃあ、どうするというのですか?」
「少し仕掛けるぞ。抑地を引きずり出すついでに、封砕に少し痛い目見せてやらねえと気が済まねえ!」
「それは私も同感!あの封砕、いつも余裕ぶっこいた態度とって気に入らないし!」
「えぇ・・・。」
「ってことで、作戦開始だぁ!」
~~~~~
「ねえ海生さん。今日返納の日ですよね?」
「ああ、そうだな。」
「あ~~あ。もうこの力とお別れですか・・・。」
「そうだなぁ・・・たった七日だったけど、今までにない経験したしなあ・・・返すのは惜しいよなぁ。」
「・・・二人とも。感慨に浸るのはまだ早いかもしれないぞ。」
「え?何でですか?」
「昨日のことを忘れたのか?」
「ああ・・・祓火と昇旋のことか。」
「そうだ。俺はあの二人があのまま大人しくしているとは思えない。」
「え?何かあるんですか?」
「・・・多分な。」
「何があるってんだよ?」
「何があるかは分からんが、力の返納は少し様子を見た方がいいな。」
「じゃあ今日は祠に行かないってことですか?」
「そうなるな。・・・一日や二日くらいなら謝れば何とかなるだろう。」
~~~~~
「・・・なあ、さっきから微塵も動く気配がないが、もしかして力の返納には行かないのか?」
「今日は行かないわ。」
「今日はって今日がその期限なんだぞ?」
「でもまだ終わってないもの。」
「終わってないって・・・何がだ?」
「昨日の土地を分ける件よ。まだ何も話しがついてないわ。」
「それは昨日痛み分けで終わったんじゃ・・・。」
「でも、結局土地の件は有耶無耶にされたわ。」
「・・・それは返した後じゃダメなのか?」
「そんなの嫌よ。返した後だったら出来ないじゃない。意趣返しが。」
「・・・。」
「封砕のことでしょ?やっぱ祓火もキテたんだ。」
「煉聖も気になってたのね。」
「当然じゃない。わざとじゃないなんて言ったって信用出来ないわ。」
「そうよね。力を貰ってすぐに仕掛けてきたようにしか見えないわ。」
「でも・・・。」
「とりあえず今日は行かないから。」
「さて、これからどうしてやろうかしらねぇ・・・。」
~~~~~
「さて、返しに行くぞ。」
「・・・行くんですか?」
「・・・行くだろ?」
「ちょっとだけ待ちません?」
「何故だ?」
「祓火に一矢報いなければどうも気が済まないんですけど?」
「・・・私も煉聖と嵐花に一言言わないと気が済まない。」
「封砕まで・・・分かった。そしたらさっさと一言ずつ言って返しに行こう。このまま俺達だけ返さないとなると他の者たちにも迷惑がかかる。」
「・・・そうですね。」
「・・・分かったよ。」
「・・・ふう。」
~~~~~
「じゃ、返しに行くか?」
「ああ、そうだな。」
「そうですね!」
「にしても、他の奴らはちゃんと返すんだろうな・・・。」
「返すだろ。いくら遺恨があるとしてもそれくらいの冷静さは残っていると思うぞ?」
「でも心配ですよね・・・。」
「・・・あのよ、もし、もしだぜ?自然神の奴らが一人でも返しに来なかったらどうなるんだ?」
「何だ聞いていなかったのか?その場合は返納は出来ない。」
「あの日付与された人たちが全員揃って触れないと返納が出来ないんですよね!」
「ああ。一人でも欠けていると祠に触れても返納されない。」
「まじかぁ・・・嫌な予感。」
「心配したって始まりませんよ!まずは祠に向かいましょう!」
「そうだな!」
「あの、霹靂一族の皆さんですよね?」
「お前は・・・。」
「どうも、祠の時以来ですね。サラン・ヴァティーラと申します。本日は皆さんにとても大切な話をしに参上いたしました。」
~~~~~
「よお!手紙は受け取ってくれたかい?迦流美の皆さんよぉ!」
「ああ。確かに受け取った。」
「じゃあ、受けてもらえるってことでいいのよね?」
「勿論ですよ♪」
「良くない。俺たちが今回来たのは穏便に済ませる為、直接会話を行うべく来たのだ。」
「じゃあ、土地分けについて真剣に考えてくれるのね?」
「それは返納した後に話し合おう。」
「もういいよ。こいつらにもう言葉は通じないからやっちゃおう。」
「そうですね。ずっと同じ主張ばかりで話になりませんものね。」
「おい、まだ・・・。」
「比売之庭の怒り。」
震子がそう言うと、早速大地震が起きた。
「(ったく・・・。)大地抑振。」
しかし、それは抑地によってすぐさま抑え込まれた。
「砕隕豪岩。」
抑地が震子の技を抑え込むと同時に封砕は某有名忍者漫画の悪役が放つような隕石を雨のように志那都一族に向けて落とした。
「やっと正体を現しやがったなぁ!風伯師・祓い風!」
しかし、その隕石は昇旋の作り出した、風速80m以上の風たちによって全て砕け散った。
「・・・追加だ。」
封砕は再び隕石の雨を降らせた。
「こっちも追加。厄滅嵐花。」
それに対抗する為嵐花は風速90m程度の風を作り出した。
「両者そこまで!」
しかし、そこに突如ビュージュが現れ、左手で念力を放ち封砕の隕石を砕き、右手でも念力を放ち嵐花の風を吹き飛ばし、砕かれた砂を雨のように浴びながら空中から降りてきた。
「あなたたち、こんなところで何油売ってんの?今日は力の返納の日でしょ?こんなところで戦ってないでさっさと返しに行きなさい。」
「分かっている。だが、彼らが戦いを仕掛けてきた。」
「まったく・・・自然神付与者たちが聞いて呆れるわ。とりあえずあなたたち土は先に返しに行きなさい。風は私が話をつけに行くから。」
「何であなたにそんなことを言われなければいけないのですか?」
「天使から指示があったの!つまり、これは神様からの命令ってこと。・・・説明はこれでいい?」
「・・・分かった。俺たちは一旦家に帰ってから、返納に向かう。」
「・・・お願いね。さて、土は返したから今度はあなたたちに命じるわ。あなたたちも力の返納に向かいなさい。」
「・・・おいおい。」
「ねえ、聞いてんの?」
「おい、ビュージュ!てめえ、何で土の奴らを返しやがった!」
そう言うと昇旋は風速50mの風でビュージュを攻め立てた。
「(いきなり攻撃してくるなんて・・・)何でって、力を返納しなきゃいけないからよ。」
しかし、ビュージュは念力で風の軌道を変えながらいなした。
「力は返さねえ!まだ話が終わってねえんだよ!」
「(あ~~あ。すっかり激高しちゃって、こっちが何言ってもこりゃ聞き入れないわね。)話なんてしてたの?とてもそんな風には見えなかったけど?」
「そりゃ、話をしてる時に仕掛けてきやがったからなぁ!あいつら。」
「そっか。それでそれを迎え撃っただけだと。」
「そういうことだぁ!」
「(このままじゃ、また土が危ないわね。・・・仕方ない、適当に時間稼ぎして消えるか。)じゃあ、最初に仕掛けてきたのは封砕なのね?」
「そうよ。」
「誘い出したのも、彼女たち?」
「そ、それは・・・。」
「(風凪の反応からするに、誘い出したのは風の方みたいね。)・・・まあ分かったわ。でもとりあえず力だけは返してよね。」
「さっきからよそ見してんじゃねえぞ!」
「だって、攻撃が単調過ぎて防ぐの余裕なんだもん。ただ規模がでかいだけ。戦うならもう少し頭使わないとね♪」
「てめえも喧嘩売ってんのかぁ!」
「いい加減止まったら?それに私はリグ・ビュージュ。神の代行者の一人、天使グラントを使役する者。そう簡単には倒せないからね?(そろそろね。)」
「じゃあ、二対一ならどうかしら?」
「残念だけどそれには付き合えないわね。じゃ。(テレポート。)」
嵐花が参戦しようとした瞬間、ビュージュは瞬間移動を使い、その場から消えた。
「何⁉急に消えやがった・・・。」
~~~~~
「済みませんね。力の返納に行く途中に家に戻ってもらって。」
「本当だ。お陰で返す期限が二日も過ぎてしまっている。」
「・・・今回あなた方に一度家に戻ってもらったのは、その力の返納の件に関してお伝えしておかなければいけないことがありまして。」
「・・・何だ?それは。」
「まずあなた達自然神の状況についてです。」
「自然神の状況?」
「ええ。今回私があなたたちに接触したのは“自然神たちが力の返納に来ない可能性があるから返納の前に今一度その意思を確認せよ。”とのことで神予世全視様より使わされたのです。」
「それで?」
「そして、その危惧は当たってしまいました。あなた方は今回どの自然神付与者とも対立していないので幸いでした。しかし、ここに至るまでの二日間。とても大きく状況が変わり続けていたのです。まず、あの当日。祠に向かっていた自然神付与者はあなた方だけでした。」
「・・・何でそんなこと分かんだよ?」
「私たち天使の使役者は天使を通じて情報共有を行っています。」
「・・・今の状況とそれに至るまでの経緯はどんな感じなんだ?」
「時系列にて説明させて頂きます。まず、当日ですが風は返納に向かいませんでした。理由は土の封砕。彼女が祠にて岩を落としたことが気にいらない様子で土に一種の嫌がらせのような文章を送ります。」
「その文章の内容は何ですか?」
「“我らの話し合いに応じよ。応じなければ話し合いと共に家諸共決裂するであろう。”です。」
「・・・土地の件か。」
「ええ。風の昇旋と火の祓火は土地に対してとても執着を持っているようだと聞いていますからそうでしょう。そして、土は家を潰すとまで言われては行かないわけにもいかず、返納をおいて風のもとへ向かいます。その後戦闘となってしまいますが、すぐに風の方に意思確認をしに行っていたビュージュによりその戦闘は停戦。その後、土は一旦家へと戻りますが何故か返しに向かおうとしませんでした。そこについては今フェルトと陰間が再度確認に向かっています。その後、昨夜というより本日の未明ですね。昇旋と祓火が如月家を襲撃しました。」
「・・・何やってんだあいつら。」
「それで如月家の人たちは無事なんですか?」
「ええ。無事です。事前に昇旋と祓火の動きを察知した陰間のお陰で、先んじて守ることが出来ました。以上が返納の日から本日までの状況に御座います。」
「火と水は何で返しに行かなかったんだ?」
「火も封砕が気に入らなかったようです。水は他の自然神付与者の出方を伺っていたので返しに行きませんでした。」
「昇旋と祓火は何で如月家を襲ったの?」
「それは・・・彼らが世界を導いていないからだといっていたそうです。」
「・・・でも世界を導くって言ったって、彼らに何が出来るんだ?」
「それについては神自身、十分に役目を果たしていると言っていたことを天使から聞いています。(こう言っておかないと後で軋轢を生みますからね・・・。)」
「・・・そうなのか。」
「まあでも本来七日間しかなかったんだから、導きようもないんじゃないのかね?」
「そうですね。」
「それと、これだけは伝えておかねばならないんですが、勝手ながら、自然神付与者の家には留守中、天使の力である印紋を施させていただきました。」
「印紋?」
「ええ。結界のようなものと考えて頂ければ。土の方には先んじて施したのですが、他にも火、雷、水、風の方にも施させて頂きました。」
「・・・結界なら迷惑よりむしろ大助かりだけど、その効果は何なの?」
「指定物の守護と所在の隠匿だそうです。結界の名前は守紋(探知不可)。この結界は対象物をある程度の攻撃から守ってくれるのと同時に、その対象物をあらゆる探知から守るというものです。」
「・・・それは誰が施したの?」
「ルチークと禊護で行ったと聞いています。」
「成程ねぇ・・・。」
「そしたら、今、力の返納は無茶苦茶ってわけか。」
「いえ、そこまで無茶苦茶ではありません。今現在、力の返納については世全視様とセフィラ率いる印紋師たちは肯定的です。如月一族も昨夜未明に肯定と確認が取れています。天使の使役者たちも返せるのであればいつでも返すというスタンスです。」
「・・・問題は私たちですか。」
「正確に言うと風と火ですね。あなた方は満場一致で肯定ですし、水も流川がしぶってはいますが、その原因は昇旋と祓火にありますし、土も長の方は肯定的です。」
「まあ、とりあえず今の状況は良く分かったよ。」
「それなら良かったです♪」
「もう行くんですか?」
「ええ。もう用は済みましたからね。では・・・!」
「・・・どうしたんだ?」
「・・・ちょっと待ってくださいね?(それは本当ですか?)」
「(ええ。どうします?)」
「(少し待ってください。)今フェアから水と火が戦っていると伝えがあったのですが、止めに行って頂くことは出来ますか?」
「勿論、止めに行く気はあるが・・・。」
「どこで戦っているんですか?」
「大体このあたりですね。距離ならば気にしなくても大丈夫です。陰間に送って頂くので。」
「なら行きましょうよ!」
「そうだね!すぐに行けるなら行きましょう!」
「分かりました。(フェア!聞いていましたか?)」
「(ええ。今陰間がそっちに行きます。)」
「待たせたナ。ジャ、飛ぶヨ!」
~~~~~
「あなたたちは入ってこなくていいからねぇ。」
「分かってるよ。」
「(・・・何でこんなことに。)」
「何の理由があって、私たちは攻撃されなければいけないの?」
「それは、流川に聞いた方が早いんじゃなくて?」
「流川、何か心当たりある?」
「まったくない。」
「だって。何で?」
「ないわけないでしょ?世界を創り終わったあと、蔑むような目で見てたじゃない。」
「え?もしかしてそれだけで攻撃されてるの?」
「・・・愚かだな。」
「あったまおかしいんじゃないの?祓火。」
「・・・おかしくないわよ!」
「あんたこそ、天然なのか知らないけど、ド直球過ぎるのよ!色々と!」
「だってそう思ったんだからしょうがないじゃん。」
「まあ、会話はそれくらいにしてさ、そろそろ帰ってくれねえかな?ってことで水分之龍・流れ舞。」
海生がそう言うと、100mほどの長さの龍の形をした水が三匹、その場をうねりながら夜藝速一族に向かって突進していった。
「(これは相殺しておくか・・・。)夜藝速の弔い。」
浄煌がそう言うと、夜藝速一族と水分一族の前に大きな炎の壁ができ、その壁に当たった水龍は全て炎の熱さによって蒸発した。
「(よし、この水蒸気に紛れて・・・)千龍万湖!」
水龍が蒸発した際に生まれた湯気の視界の悪さの中、留湖は夜藝速一族の足元に人一人が埋まるほどの水たまりを1万個と10mほどの長さの水龍を千匹生み出しぶつけた。
「(何⁉いきなり無数の水たまりが現れて・・・。)」
「葬送煉火!留湖!珍しく考えたじゃない!」
煉聖がそう言うと、炎の力で1万個あった水たまりと千匹いた水龍が一瞬にして蒸発した。
「も~、一つくらいはまってくれれば終わったのに!」
「はまる前に蒸発させちゃえば問題ないのよ!」
「これじゃあ決着がつかないじゃん!」
「そうねぇ。」
「・・・嫌がらせか?」
「あら、今回は察しがいいわねぇ。」
「・・・ったく、帰らせてくれよ・・・。」
「晴天の霹靂!」
誰かがそう言うと、雷が夜藝速一族と水分一族の間に落ち、地震が起きた。
ドン!
「何⁉雲一つないところから、雷が落ちてきたんだけど・・・。」
「雷って言ったら、あいつらしかいねえだろ。」
「ああ。そうだな。」
「おい、お前ら!争いはやめろ!」
「まったく何してるんですか?あなた達のせいで私たちは力を返せないんですよ!」
「響までいるのか・・・笑。」
「おい、雷の霹靂さん方よぉ!せっかくの戦いに横やり入れて何が目的だぁ!」
「何が目的って、その横やりが目的だよ。」
「戦いを止めに来た。」
「・・・何だそういうことかよ。」
「ん?」
「要するにお前たち水の味方に付くってことだろ?いいぜぇ!そういうことなら俺たちも参加してやる!風伯師・祓い風!」
そう言うと昇旋は風速100mの風を繰り出した。
「(聞く耳持たずか・・・)響!」
「はい!皆さん、少しの間耳を塞いでてくださいね?・・・霹靂御の天啓!」
キィーーーーン‼
響が霹靂御の天啓を繰り出すと、昇旋の出した風は徐々に弱体化され、そして無効化された。
「(・・・何?俺の技がかき消されたのか⁉)」
「追加よ!厄滅嵐花!」
嵐花がそう言うと、同じく風速100mの風が水分一族と霹靂一族に向けて放たれた。
「させん!水分之龍・滝下り!」
それを見た流川は嵐花の技を相殺する為、複数の水龍を生み出し、繰り出した。
「攻紋!」
「守紋!」
しかしその時、デリットと禊護が現れ、デリットは嵐花の風を直径50mの攻紋で、禊護は流川の水龍を同じく直径50mの守紋で相殺した。
「やれやれ、貴様ら。ついには同じ付与者の言葉すら耳に届かなくなったのか。」
「せっかく作ったのにあちこち壊すなよな。」
「お前たちは・・・。」
「イニーデリット!」
「それに・・・。」
「禰禊護だ。覚えてる?」
「まあ、覚えてるけど・・・。」
「・・・チッ!」
「・・・退くわよ。」
「あ、おい!」
「ここは退かせておけ。その方が安全だ。」
「はあ・・・せっかく来たのに・・・。」
「無駄足でしたね。」
「そんなことはない。今回お前たち雷が率先して動いてくれたことで、返納の意思は示された。」
「俺たちは荒れた土地を戻すから、お前たちは帰っていいぞ。」
「はぁ、やっと帰れるぜ・・・。」
~~~~~
「あ、封砕。どこに行くんですか?」
「ちょっと散歩。抑地には言わないで。」
「何でですか?」
「何でも。」
~~~~~
「(・・・おかしいな。探知出来ない。あいつらの家はうちと違って結界なんて張ってあるって聞いてないから探知出来ると思ったんだけどな。)・・・仕方ない。帰るか。」
「・・・お前、封砕じゃないか。こんなところで何してるんだ。」
「流川こそ何してるの?草むらから出てきて散歩には見えないけど?」
「・・・なに、昇旋を探しているのさ。」
「見つかったの?」
「ああ。ついさっきな。」
「ほんと?」
「本当だ。」
「探すのに苦労しなかった?」
「苦労したさ。何故か知らんがあいつらの家は探知出来なかったからな。だが本体の方を運よく探知出来た。」
「どこにいるの?」
「・・・もしかしてお前も行くつもりか?」
「うん。」
「・・・この先の川だ。」
「じゃ、行こう。」
「ああ。」
~~~~~
「(・・・ったく、どいつもこいつも土地のこととなると、てんで話になりゃしねえ。)」
「・・・どう仕掛けるの?」
「まずは俺が川の水を使ってあいつを川の中に引きずり込む。それが出来なくても出来ようとも足止めは出来るはずだ。」
「足止めが出来たら私の岩で周りを囲えばいいんだね?」
「そうだ。そしたらすぐに撤退する。」
「何で?」
「それ以上やるとバレる恐れがある。それに今回の目的は前回の意趣返しだ。・・・これが成功したら俺は力を返納してもいいと考えている。」
「・・・今までは考えてなかったの?」
「・・・考えてはいたが、今までは引っかかりがあった。」
「成程、今回で文字通り水に流すのか。」
「・・・上手いこと言うな。封砕。」
「・・・褒めんな。」
「笑。・・・じゃあ行くぞ。」
「ああ。」
「(さて、後は水でも汲んで帰るか・・・)やべぇ!溺れ・・・祓い風!」
流川は昇旋の入った川の流れを早くした。そのことにより昇旋は溺れかけたが、咄嗟に自身の周囲の川の水を風の力で吹き飛ばし、溺れることを防いだ。
「・・・。」
ドン!ドン!ドン!
そして、封砕は昇旋の周りに直径10mの岩を落として囲った。
「(・・・岩!)封砕ィ!どこに隠れてやがる!こんなとこまで狙ってきやがるとはなぁ!」
「ばれた。」
「頃合いを見て退け。」
「分かった。」
「それに、誰か分からねえが水の奴もいんだろ!俺が川で溺れかけたのはそいつの仕業だぁ!気づかねえとでも思ったかぁ!」
「俺の存在は気づかれたが、誰かは知られていないな。」
「そうだね。」
「・・・そうかいそうかい!このまま隠れてりゃ、やり過ごせるとでも思ってるわけだ!いいぜ!そのまま隠れてても!ここら一帯を更地にしてやらあ!風伯師・祓い風!」
「・・・まずい!伏せろ!」
ドドドドドドドドッッッ!
昇旋がそう言うと、昇旋の半径50mの範囲にあった木々は全て風の力で切り倒され、文字通り更地になった。
「そこかぁ!」
「・・・見つかってしまったな。」
「だね。」
「てめえ、単独の所を狙ってくるとは随分とせこい真似してくれるじゃねえか?しかも複数とはよぉ!」
「お互い偶々だ。」
「まあ、偶々複数に攻められるなんて、はたから見たらよっぽど恨まれてるように見えるね。」
「てめえだって、恨んでるのは俺だけじゃねえぜ?」
「知ってるよ。」
「まあ、俺に勝つなら複数じゃねえとな!」
「いや、今回はそんな大層なものじゃない。」
「あ?」
「俺たちはお前と戦いに来たんじゃない。お前にちょっと嫌がらせをしに来たんだ。」
「何だと?」
「結果は大成功だったよ。いつも威張ってる昇旋の情けない溺れ姿が見れたんだから。」
「ああ。これで俺はこの力に未練はない。」
「・・・だったら、今すぐ死んでも未練はねえな!」
そう言うと、昇旋は風速50mの風を放った。
「攻紋。まったく・・・貴様ら、舌の根も乾かぬうちに次から次へと争いおって。止める方の身にもなれ!」
しかし、その風はデリットの攻紋によって相殺された。
「別に止めなくても良かったんだぜぇ?イニーデリットさんよぉ!」
「うるさい!」
「「「!」」」
「私は早く力を返したいのだ!ゆっくりしたいのだ!それを貴様らが暴れるたびにいっつもいっつもいっつも!何なのだ?お前たちは争っていないと死んでしまう病にでもかかっているのか⁉」
「・・・うっ。」
「(・・・凄い。主張は大したことないけど、その熱量が強過ぎてあの昇旋が押されてる。)」
「魚には確か泳いでいないと死んでしまう奴がいたな!それか?それだろう!お前たちは魚なのだろう!」
「いや、ちょっと・・・。」
「魚に違いない!そうだ!」
「・・・デリット。悪かった。」
「俺達も悪かった。まさか俺たちの行動がお前をそこまで追いつめていたとは・・・。」
「何をしゃべっている!魚はしゃべらんぞ⁉」
「いや・・・私たちは魚じゃないよ?落ち着いて?」
「(・・・見てらんねぇ。)」
世界創造よりも体力を浪費した俺たちであった。
~~~~~
「はあ・・・さんざんだったね。」
「ああ。しかも俺たちが次争ったら来ないらしいからな。」
「まあ、嫌だよね。他人の喧嘩仲裁するのは。」
「しかも一度や二度じゃないからな。」
~~~~~
「・・・。」
「あら、どうしたの?昇旋。珍しく大人しいじゃない。」
「ちょっとな・・・。」
「何があったんですか?」
「いや、大したことじゃねえんだ。ただ、ある人の意外な一面を見たというか・・・。」
「そうなんだ。それで落ち込んでんだ。」
「落ち込んでるっつーかよ・・・なんかショックでよ・・・。」
「・・・それを落ち込んでるというのではないですか?」
「まあ、とにかく疲れたわけよ。」
「まあそりゃ、いつもあんだけ、かっかしてたら、ふと切れた時疲れるわ。」
「焚火の薪が切れたみたいですね笑。」
「笑うんじゃねー!」
~~~~~
「・・・!」
「未知子どうした?」
「セフィラさんか世全視さんを呼んで!三日後の予知のことで伝えたいことがあるの!」
~~~~~
「あれ?また出かけるんですか?」
「まあね。」
「また散歩ですか?」
「そうだよ。抑地には言わないでね。」
「分かりました。(・・・怪しい。)」
~~~~~
「あら祓火どっか行くの?」
「ええ。ちょっと気晴らしに。」
「・・・どこに行くんだ?」
「それは、ヒミツよ♪」
~~~~~
「(ったく、あの時はデリットの熱量に押されちまったが、時間が経ったらまた腹が立ってきたぜ・・・。しかもここは、あいつらに襲われた時とよく似た川じゃねえか。)・・・はあ、憂鬱だぜ。」
「あら、あなたこんなところで何をしてるの?」
「・・・祓火。いや、ちょっと気分を落ち着けてんだよ。川の流れを見てると自然と落ち着くからな。」
「あなたでも落ち着くものなのね笑。」
「どういう意味だ?」
「ごめんなさい笑。でもいつも火の私たち以上にかっかしてるあなたでも、川の流れは落ち着かせてくれるのねぇと思ったのよ。」
「・・・そんなかっかしてるか?俺。」
「私から見たらしてる。」
「確か、嵐花たちにも言われたんだよなぁ。」
「そうなのね。」
「別に怒りたくて怒ってるわけじゃねえんだぜ?あいつらが自分達の創った世界にあまりにも無関心なのが気に入らなくてよ・・・。」
「分かるわ。何でそんなに欲がないのか不思議よね。」
「俺たちが欲深過ぎんのか?」
「・・・自分が創ったものを欲しいっていうのが欲深いんだったら、今生きている殆どの人間が欲深くなるんじゃないの?」
「・・・そうだよな。」
「彼らが言っているのって、自分たちが創った食べ物を“食べ物は本来みんなのものだから、作った自分たちがたとえ飢餓だとしても平等に分けるべきだ。”ってことでしょ?」
「・・・そんなの出来過ぎだろ。」
「私もそう思うわ。確かに言ってることは正しいのかもしれないけど、どうしても引っかかるのよ。」
「聖人気取ってるところがだろ?」
「それもあるけど、私たちを心のどこかで、下の存在かのように扱ってるところもよ。まるで人間としてのレベルが違うみたいな雰囲気。」
「・・・成程な。確かにひしひしと感じるぜ。」
「でしょ?」
「ああ。・・・そういえば祓火は何でこんなところに来たんだ?」
「あぁ・・・それはね、封砕を見つけたからちょっと嫌がらせをしに行く途中だったのよ。」
「何だ?それ。」
「・・・おかしい?」
「いや?逆に俺も行きてーんだけど。」
「だと思った笑。じゃ、行きましょ笑。」
「面白くなってきたぜぇ!」
~~~~~
「で、どうする?」
「とりあえず、私があそこの火山から火を引っ張ってくるから、そしたらあなたは火を強めてくれる?」
「分かったぜ!」
「(・・・これで花の冠を作ろう。)・・・あっ!」
封砕が冠を作る為、花を摘んだところ、その花を祓火が火の力で燃やした。
「いい顔するじゃない。封砕も。」
「ああ、いい気味だぜ笑。」
「(せっかくの花が燃えちゃった・・・というかなんだ?この不自然な火の動き。仕方ない。)・・・。」
ドン!ドン!ドン!
封砕は火口と自分の間に岩を落として防波堤を作った。
「あいつ、岩で火の防波堤を作りやがったぜ?」
「そしたら、作戦変更で、昇旋はあの岩を砂にしてくれる?」
「了解だぜ。」
「(・・・これで火がこっちに来ることはないか・・・)・・・え?(砕けた・・・これは。)誰かいる?」
昇旋は風の力で封砕の岩を砕いた。
「流石に気づき始めたわね。そしたら、一気に決めるわよ。」
「ああ。」
祓火は封砕の周りを炎で覆って燃やそうとした。
「(・・・火が・・・)豪岩。」
しかし封砕はそれに構わず、自身の周囲に岩を落として隠れている人をあぶりだそうとした。
「封砕のやつ、無差別に岩を振らせ始めたぜ!」
「私の火じゃ、間に合わないわ。昇旋、何とか出来る?」
「任せろ、祓い風!」
昇旋は風の力で降って来た岩を砕いたが、その時、周りの木も切り押してしまい、姿をさらしてしまった。
「・・・いた。」
「あ~~あ。もう少しだったのに。」
「何が?」
「あなたを殺すのが。」
「でも、見つかったからには今度は祓火たちが死ぬ番だよ。」
「果たして、本当にそうかしらねぇ。」
「砕隕豪岩。」
そう言うと、封砕は隕石を降らせようとした。
「芸がないわねぇ。灯毘沙之涙。」
しかし、祓火がそう言うと、封砕の隕石は降ってこなくなった。
「・・・?」
「何で岩が降ってこないか不思議でしょ?」
「・・・別に。」
「嘘ばっかり。特別に教えてあげましょうか?」
「・・・話したかったら、話せばいいよ。」
「素直じゃないわねぇ。ま、いいわ。あなたの岩は地球外から持ってきてるんでしょ?だったら、地球に到達する前に全て破壊してしまえばいいわよねぇ。」
「・・・どういうこと?」
「地球に到達する前に宇宙内で破壊しつくしてしまえば実害はゼロってことよ。」
「(・・・宇宙から火を引っ張ってきてるとでもいうのか。)」
「まあ、分からなければ分からなくていいわ。あなたはここで死ぬんだから。じゃあね、封砕。灯毘沙之涙。」
そう言うと祓火は空から隕石と同じ大きさの炎を雨のように降らせてきた。
「(・・・あれは、まさか空から降ってきてるの⁉)」
「アデュー♪」
「・・・分かっているな、震子。」
「ええ、私が少しでも気を散らせばいいんですよね?」
「そうだ。・・・水分之龍・滝昇り。」
「比売之庭の怒り。」
突如現れた二人がそういうと空から降ってきた隕石程ある火の塊は少し小さくなった後、水龍にぶつかり、消滅した。
「やれやれ・・・次は止めに来ないとデリットが言っていたのに・・・またやらかしたのか?」
「まったく、何が散歩ですか。一度ならまだしも二度目は流石の私でも引っかかりませんよ?」
「てめえ・・・流川!」
「お前も、懲りんな。昇旋。」
「封砕を殺そうとするなんて、堕ちるとこまで堕ちたというべきでしょうかね?祓火。」
「あなた達こそ、助太刀に来たつもりなんだろうけど、状況は変わってないのよ?」
「そうだぜ!まだ俺が参戦してねえことを忘れんなよ!」
「まだやるのか。」
「あらさっきまで、不安そうだったのにお仲間が来たから安心しちゃったのかしら?でも安心するにはまだ早いわよ。」
そう言うと祓火は再び灯毘沙之涙を繰り出した。
「・・・震子!」
「ええ!」
「間に合え!」
流川と震子は先ほどと同じ対応で灯毘沙之涙を相殺した。
「・・・今度も防ぐことは出来たようね。でも、いつ降るか分からない火の雨をいつまで防げるかしら?」
「それはこっちのセリフだ。」
そう言うと封砕は砕隕豪岩を繰り出した。
「・・・!」
「いつ降るか分からないのは私の岩も同じだ。」
「またか!」
昇旋は封砕の砕隕豪岩を相殺する為に咄嗟に風を繰り出した。
「・・・風凪。」
しかし誰かがそういうと封砕の攻撃とそれを迎え撃った昇旋の攻撃がかき消された。
「(あれ、岩が降りてこない・・・。)」
そして、封砕の落とそうとした隕石は空中で暫く静止した。
「まったく・・・久々に落ち着いていると思ったら、すぐにこれですか。」
「でも、こっちの方が俺っぽいだろ?」
「まあそうですけど。あ、あと封砕さん。もう隕石は降ってきませんよ?宙に止まった岩もじきゆっくりと降りてきます。」
「風凪。助かったわ。」
「いえいえ。お二人が殺されちゃいそうでしたし、気に入らない方々もお揃いのようですからね。」
「それって私のこと?」
「あなたではありませんよ。後ろのお二方です。」
「俺も入っているのか。」
「ええ。私意外と執念深いんです。確か世界を創り終わった後、私たちを睨んでましたよね?何故睨まれなければならなかったのでしょう?とても腹立たしいです。」
「・・・成程。相手が憎いのはそちらも同じなんですね。」
「ええ。」
「じゃ、決着つけないとねぇ。」
「じゃ、ちゃっちゃとやっちゃってくださーい。」
「・・・了解。」
「行くぜ——。」
「霹靂御雹矢。」
誰かのそう言う声が聞こえると、すぐに三千発を超える雷と雹が約五分間降り続き、その場にいる者たち全員がしびれとケガで体を動かせなくなった。
「・・・本当に降らせて良かったのかい?」
「ああ。これで少しは良いお灸になっただろう。」
「・・・私がやっておいてなんだが、死んでないよな?」
「大丈夫ですー。みんな辛うじて、念力拘束への抵抗が感じられるので、生きてますー。」
「な・・・なにが・・・起き・・・たんだ・・・。」
「皆さん、おはようございまーす。生きてますかー?」
「・・・辛う・・・じ・・・て。」
「それなら良かったですー。今回僕たちがここにきたのはー、如月の方々の予知によりー、近いうちにあなたたちが争うという情報を得たからなんですー。」
「これから君たちを各一族の家に送ってあげるから、暫くは大人しく生活するんだね。」
「まあ、争うにしても、暫く動けませんけどねー。」
そう言われて俺たちは、動けないまま各一族へと戻された。
~~~~~
「お、おい!流川!何があったんだ⁉」
「こ、これはいったいどういうことですか?」
「それは本人に聞いてくださーい。じゃ。」
「あ、待て!・・・大丈夫か?」
「・・・何とかな。」
「お薬取ってきます!」
「頼む!で、何があったんだ?」
「付与者・・・同士で・・・争っていたら・・・雷に止められた。」
「・・・雷の奴らがやったのか?」
「雷の・・・雹聚だ・・・。」
「争いを止めるにしても、これは酷過ぎませんか⁉」
「・・・ああ。次会ったら、一言言ってやろうぜ!留湖!」
「はい!」
~~~~~
「・・・うっ・・・。」
「え⁉これ・・・どういうこと?」
「それは本人に聞いてくれ。」
「じゃ、さようならー。」
「祓火!大丈夫⁉」
「・・・何とかね。」
「何があったんだ?」
「いつもみたいにね・・・争ってたら・・・雹聚に・・・やられたわ。」
「・・・それって、不意打ちされたってこと?」
「いや・・・仲裁よ。みんな・・・私と・・・同じ。」
「・・・にしてもこれはやり過ぎじゃないか?」
「・・・これくらいしないと・・・お灸にならないって・・・デチーレが・・・。」
「お灸にしたってやり過ぎよ・・・って、浄煌?」
「・・・。」
~~~~~
「・・・これは、どういうことだ⁉」
「それは、お二方に聞いてくださいー。」
「暫くは動けないと思うよ。」
「じゃ、じゃあな汗。」
「雹聚!・・・おい、お前たち。何があったんだ⁉」
「火と・・・風と・・・争っていたら・・・制裁を・・・受けました。」
「・・・それでこんなにボロボロに?」
「・・・ああ。・・・雹聚に・・・みんな・・・やられた。」
「(・・・さっき、いたな。)にしても、こんなに・・・。」
「・・・まったく・・・無様です・・・ね。」
「お前たちは少しゆっくりしていろ。暫くは俺が全部やるから。」
「・・・分かった。」
「(・・・雷の家に行く必要があるな。)」
~~~~~
「じゃ、気を付けないと死んじゃいますから、しっかりと看病してくださいねー。」
「あ、ちょっと!・・・ねえ、二人とも何があったの?」
「いつものように・・・争って・・・いたら・・・雷で・・・撃たれ・・・たんですよ・・・。」
「それって、不意打ちされたってこと?」
「・・・違げぇ。・・・雹聚は・・・やらされた・・・だけだ・・・。」
「誰に?」
「フェロア・・・ルチークです。」
「(あの、間延びした奴・・・!)・・・そっか。風凪と昇旋はゆっくり休んでてね。」
「・・・どこか、行くんですか?」
「・・・水を汲みに行ってくるわ。」
~~~~~
「で、どうだった?」
「あれで暫くは動けないと思いますー。」
「にしてもちょっとやり過ぎだとは思うけど。」
「あれくらいじゃなきゃ、少しは懲りないよ。彼ら彼女らの場合。」
「・・・ですが、本来は懲らしめる為に行ったわけではありませんよね?」
「止める為に、行ったんだよナ?」
「そうだ。けど彼らはちょっとやそっとじゃ懲りないだろ?」
「まあ、五種類の自然神付与者の内、三種類の付与者が関係ない一族を襲ってるからな・・・。」
「如月でしょ?あれを聞いた時は流石に一線を越えたと思ったわ。」
「ホントだナー。あの時如月を助けるのにどれだけ苦労したことカ・・・。」
「お前は何もしてないだろ?俺は如月二人抱えてたけど。」
「失礼だナ!私だって隕石消したゾ!」
「そうそう、陰間ちゃんが隕石を消してくれたからあんたが如月を助けられたの。だから、そんな言い方しちゃだ~~め。」
「まあ・・・そうだけどよ。」
「にしても、いつもいつも彼らは殺気立っていて困ったものだね。」
「ホントですよー。悪いのは彼らなのにー。」
「確かにそうですね。私たちは毎回毎回無償で争いを止めていますからね。」
「デリットなんて“暫く助けを求めないでほしい!”と言っていたよ。」
「まあ、毎度無償で争いの仲裁に駆り出されてたらいい気はしないでしょ。」
「しかも、下手したら恨まれますからね。仲裁役は。」
「何でですかー?」
「分かりませんか?いつもイライラしてる時に、関係ないのに邪魔してくるんですよ?腹立ちませんか?」
「まあ、誰だお前は?とはなるな。」
「ええ。いっつも関係ないのに邪魔しやがってと怒りの矛先がいつ向いてもおかしくありません。」
「そしたら、私たちも自然神の誰かに恨まれてるかもしれないナー笑。」
「笑い事じゃねーだろ・・・。」
「襲われちゃったりしたラ、どうすル?」
「・・・君、自分だけは大丈夫だと思っているだろ?」
「ソ、そんなこと思ってないヨ汗。」
「(・・・思ってたわね。)」
こうして、自然神付与者たちは不幸にも着々と対立していくのだった・・・。
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