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しょっぱいひと夏の迷い。

昔よく通っていた書店に一際目立つ金髪の背の高い店員さんがいた。

当時はゲスの極みがTVに出だした頃で、パッと見、川谷絵音みたいな人だと思っていた。

当時の私はなんとなく彼を意識してしまい、人見知りもあって、いざレジで接客してもらうとなると目もうまくは合わせられず、しどろもどろしていた。

ある日いつものように書店へ行き、漫画を買った。1冊だったか3冊だったかは忘れたけれど。

そしていつも通り、その足で近くのドーナツ屋へ勉強をしようと向かい、着席して早々に漫画の入ってる袋を開けた(勉強しろ)。

すると、その漫画の巻数が重複していた事に気付いた。

慌ててダメ元でその書店に返金が出来ないか電話をしてみた。
すると電話に出てくれた店員さんは例のゲス
君だった。
ひぃぃぃぃ!! 

焦りまくった私。
とりあえず相談してみたところ、返金に応じてくれるとの事だったので、勉強が一通り終わってからまたその書店に戻っていった。

(めっちゃ緊張するわ〜、金髪マッシュ、おしゃれ丸眼鏡とか無理〜、びびるぅ〜)

あ、あのーすみません、これ、、、と私。

ひとまず身勝手なお願いに対応して頂き、お礼を言ってお店を出ようとしたその時。

あ、あのーすみません、これ、、、と彼。

パタパタと走って追いかけて来てくれて、私にLINEのIDをくれた。

その日私はいつもの銭湯に行った。
今日あった出来事をぼんやり振り返り、これは現実なのか??と不思議な気持ちでいた。
なんだかドラマにありそうで、そんな事が自分に降りかかってくるとは。。。

彼氏もいなくて、ストイックな日々だし。ちょっと怖いけど、えーい!LINEしちゃえー!!
とLINEしたのが始まり。

ご飯を食べに行きませんかと誘われ、デニーズへ行った。
いやーまあよく喋る喋るわ。
朝までずっと喋ってたなあの子。
とても楽しそうに。キャハキャハと。
初めてのデートだかなんだかだったようで盛り上がっていた。

そして最終的にお互いの歳の話になり、驚愕した。いやいや、、10個下って、、。
歳なんて関係ないよ!!とキラキラしながら言ってくれたけど、こっちが関係するか否かの話やから、、。

しかしあの日は本当に疲れたな。

それからの毎日は、仕事、勉強、時々ゲス君の日々だった。
そして色恋沙汰??になっていく過程で彼のメンヘラは徐々に姿を現してきた。
誕生日にアパートに訪ねてきて、私にくれた花束は今も忘れないし、ちょっと感動したけれど。
あまりにもなんだか、ありがたい事に好き好きが過ぎて、私を通り越してるようで。
ああ、もう重たくなって、ちょっと勉強するから無理とさよならを告げた。

すると彼は「僕は君が全てなんだああ〜」と泣き崩れてしまった。
うわ、重たっ!!

僕は死にましぇぇーんじゃないのだから、やめて下さいよ。
君は君が好きなだけなんだよきっと。 

どうもやっぱり好きにはなれなかった。
ある1人以外は無理なんだ。

血迷ってしまった。いや最初から迷ってもなかったかもしれん、すまん。。

話がつまんなかった。内容のない人だった。
雰囲気だけで眼鏡とったら全然好きな顔じゃなかった。
見た目の通りバンドやってて、今思えばちょっと寒かった。
僕は僕はと、うるさかったな。

でもとてもピュアで真っ直ぐな子だった。
キラキラと、とても希望に満ち溢れていた。

その後彼から就職が決まったと連絡がきた。
数年前まで年に1〜2回くらい、会ってくれませんかと、丁寧なLINEをくれたけれど、もう私には彼氏がいたし、バレたら殺されるし返信は1回したきり、出来なかった。
あの子、今頃何してるんだろうなあ。
もうさすがに結婚してるだろうなあ。
幸せならいいなあ。

苗字で呼んでたから、名前は知らない。一度教えてもらったけれど、覚えられなかった。
漢字は知ってる。
なんだかとても失礼な事をした。

その報いを私は受けていたのかも知れない。
笑えるくらい大事にされなかった。
これで相殺としてくれ。

君が欲しいと言ったからあげた、あのバンドのtシャツまだ持ってるかな。

今少し高くなっていると聞いたから、お持ちでしたら古着屋に持っていく事をお勧めします。

首元のダメージが酷過ぎて買取してもらえなかった際には是非私に返してほしい。

また10年後くらいに思い出して、しょっぱい気持ちになるんだろうな。

その時私は広い意味でどこにいるんだろう。
家族はどうなってるのかなあ。

生きてるかなー。


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