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よつばと!の思い出

漫画『よつばと!』を集め始めて、かれこれ10年経つだろうか。
そんな私の、よつばとの思い出。

よつばと!とは

『よつばと!』は、言わずと知れた5歳の女の子「よつば」を取り巻く日常ギャグ漫画だ。
作中に登場するキャラクター「ダンボー」のグッズ展開でも有名。

主人公よつばの子どもらしい言動がどこかリアルで可笑しくて、読むと声を出して笑ってしまう。

よつばと出会った頃

『よつばと!』を買い始めたのは、当時付き合っていた彼氏と同棲を始めた時期だったと思う。

互いの持っている漫画がひとつの部屋に集まり、交換して読みあったものだ。

なかでもこの『よつばと!』は、一冊の本を互いの間に置いて身を寄せ合って一緒に読み、ギャグパートで涙が出るくらい一緒に笑った。

一冊の本をふたりで一緒に読むなんて、文字を読むスピードも違うし随分まどろっこしいことをしていたと思う。

彼もそう思ったのか、

「君はもう何度もこの漫画を読んでいるんだよね?」

と確認してきた。
何度も読んでしまって面白くないだろう、わざわざ一緒に読む必要はないんじゃないかと。

そして付け加えた。

「…僕が笑うのが嬉しいの?」

自分でもびっくりするほど素直に「うん」と頷いた。
その瞬間、なんだかとても幸福な空気に包まれたのを覚えている。

自分が面白いと思うものを、自分の愛する人にも面白いと思ってもらい、一緒に笑うその瞬間を共有するしあわせ。

よつばと!は日常におけるしあわせを当時の私たちに教えてくれた作品だ。

そして今

時を経て、私たちは夫婦になった。
よつばと同じ、5歳の娘がいる。
『よつばと!』にはそのポジションは登場しないが、先日、息子も生まれた。

こどもたちはよつばのように天真爛漫で、いつも笑顔をくれる。

しかし、育児は想像以上に過酷で、年を重ねて仕事も忙しくなり、ストレスから互いに苛立ちを覚えることも増え、私たち夫婦は漫画を読む時間もなくなった。

当然、一冊の本を互いの間に挟んで読むなど、あるはずもない。

こどものいるしあわせは感じているが、その日一日々々を送るのに精一杯で、あの頃感じた相手の笑顔を心から喜ぶしあわせは何処かへ置いてきてしまった。

これから

家族が増え、同棲を始めたあの部屋から引っ越しをしたとき、持っていた漫画の大半は処分してしまった。

だけど『よつばと!』だけは残してある。

久々にページを開いてみようか。
こどもたちと接するヒントが、「とーちゃん」たちのふるまいから学べるような気もする。

こどもたちがこの漫画を読む日も近いうちに来るかもしれない。

しかし、夫婦でまた一冊の本を互いの間に置いて過ごせるようになるのはまだ先の話だろう。

その前に私たちは、よつばたちがそうしているように、

キャンプをしたり、

ホットケーキを焼いたり、

お祭りに行ったり、

まずはそんな特別な日常を平和に送ることができるよう、まだまだ戦っていかなければならない。

この間、夫と話しているときについ、「そんな余裕ないよ!」と声を荒げてしまった。

実際、私たちは余裕がないのだ。

でもこのnoteを書いてみて、よつばと!の思い出を思い出して、作中に流れるおおらかな空気や、あのとき「うん」と頷いたような素直な気持ちを、もうちょっと家族に向ける努力をしてみようかと思った。


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