今まで見ないふりをしてきたもの。

夫は父の性的虐待のことを知っていて結婚してくれた。
その夫に言われた事がある。

「離婚して養育費もらえば良かったのに」

私はこの言葉を聞くまで、養育費なんて全く思いつかなかった。
母からこれからも父と一緒に暮らして欲しいと言われた時、私はうちにお金がないからだと思っていた。
そうでなければ、母は1人で育てていくことはできないなどと言わなかったはずだ。

今年の3月、父が入院してしばらく家に帰れないとわかり、実家の片付けを始めた。
父と母は17年前に離婚しており、父が1人で暮らす実家はゴミ屋敷になっていた。

今まで手を触れる事がなかった、大事なものが入っている棚を整理していた時、父の源泉徴収票や母の給与明細が出てきた。
父は年収1000万円もらっていた。母は月に20万円稼いでいた。

お金はあったんだ、と気付いてしまった。
また心臓がドキドキした。
考えてみたら、母は看護師だ。
父もそれだけの収入があれば養育費が払えたのではないか。
では、私は何のために苦しい思いをしながら父と同居しなければならなかったのか。

母と話さなければ。
いや、どういうことだったのか問いただしたい。

今まで見ないように蓋をしてきたものに、向き合う時が近づいていた。