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組織変革に無知なシステムエンジニアが変革実施に当たって読んだ本

アジャイル開発推進を担当している中で変化を拒む保守的な上司や同僚、そんな人たちから構成されるイケてない組織カルチャーに業を煮やし、それらを変えるべく「組織カルチャーの変革が必要である」と役員に直談判。で、「やってみれば?」とあっさりGOサインが。

しかし、言ってはみたものの今まで主にコンピューターを相手にしてきただけの変革素人なので自分でも何をすればいいかよくわかっていません(笑)。そこでまずは「組織変革とはなんぞや?」といった基本的な知識ややり方を学ぶために本を読むことにしました。

ここでは今まで読んだ本をここで紹介します。日々勉強中ですので、読んだ本は都度追加していきたいと思います。また、良い本がありましたら教えて頂けると幸いです。


カモメになったペンギン (ジョン・P・コッター/ホルガー・ラスゲバー)

Google先生などでリサーチしていると、組織変革といえばジョン・コッターが有名とのことでまずはその著書を読んでみることに。何冊か買った中で一番初めに読んだ本がこれ。

ペンギンの社会において起こった事件を変革によって解決していく様をわかりやすいストーリー形式で書かれたもの。あえて詳しいストーリーは書かないが、変革を実行するに当たって必要なのは「リーダーシップ」であり、変えたい・変えなければいけないという信念と実行力なのだと言う基本的なことを学ぶことが出来た。

また、組織変革とはどのようなプロセスで行うべきか、何が必要か、どのような困難にぶつかりやすいかと言うことを例を挙げてストーリーで紹介しているので全体像をざっくり俯瞰するという意味で有用な本。

次に挙げる「企業変革力」や変革の理論を説明した難しい本を読む前にこの本を読んでおくと、「あぁ、この項目で言っていることはあのペンギンの行動のことだな」と理解が進むようになるので、まず組織変革を進めることになったらこの本から読み始めることをお勧めする。


企業変革力 (ジョン・P・コッター)

カモメになったペンギンを読んだだけでは、登場するペンギンの変革行動の裏に隠れたロジックや方法論などは分からないので、いよいよここから組織変革に関する本質について勉強していくことになる。そこで、同じくジョン・P・コッターの著作である「企業変革力」を読むことにした。

この本は「企業変革は何故失敗するのか」という話から入り、8つの過ちを指摘することから始まるが、それらはどれも昭和にあった高度経済成長期の成功体験を未だ引きずる日本の伝統的大企業にありがちな話である。従業員の現状満足を簡単に容認し、ビジョンなどどこ吹く風で、変革活動は妨害され定着しないなどどれも耳の痛い話だ。

有名な「コッターの8段階の変革プロセス」についても詳述されており、その具体論について細かく知ることが出来る。とてもロジカルで納得のいく変革指南になっているので是非一読をお勧めしたい。

だが、実際に変革を進めている者としては「コッターの8段階の変革プロセス」を実際に変革を行う際に作成するロードマップのベースなどフレームワーク的に使うには大変良いと思うが、特に日本企業に於いてはそのまま鵜呑みにするのはちょっと気をつけた方が良いと思う。

そのあたりは、今後noteに実例をもとに話していきたい。


第二版 リーダーシップ論 (ジョン・P・コッター)

またまた、ジョン・P・コッターの著作であるがこれも名著。

リーダーシップは組織変革について必要不可欠な要素であるが、とかく日本人にとってリーダーシップというと「俺に付いてこい!」的なステレオタイプなイメージしか湧かない人も多いのではと思う。

"ここで言うリーダ−シップとは、ビジョンと戦略を策定すること、戦略に相応しい人員を結集すること、障害を克服しビジョンを実現するために、社員にエンパワーメントすることである"(リーダーシップ論 18p)

と、この著作の中でコッターが言っているように、リーダーシップとは変革に於いて方向性を指し示し、提示したビジョンを元に能力のある人を集め、社員が変革をやりやすくする人である。当然、単純に管理がメインのマネジメントのことではない。

「こんなの経営者やシニアマネジメントがやることで、下っ端の私は関係ないのでは?」と思ってはいけない。実は小さいことでも他人を巻き込んで何かをしようとしたときに、自然にリーダーシップを発揮しているはず。成し遂げたいと思うことの規模によってリーダーシップの総量が変わってくると言うことだ。

リーダーシップと言ってもピンとこない日本企業にお勤めの方にはオススメの一冊。変革への抵抗の対処やアイデアを支持させる技術なども書かれており変革推進者必携。


企業変革の実務 - いつ、何を、どの順番でやれば現場は動くか (小森哲郎)

コッターの本を読む前に、組織変革で何をすれば良いのか分からなかった自分がタイトルに釣られて読んだ一冊。さすが、元マッキンゼーの方が書いているだけあって実践的。

初めの理論編にある「不振企業にある三重苦」。つまり、戦略や組織、オペレーションなどの分野で課題が山積している”問題山積み”。課題が組織間や階層間で複雑に絡みあっていて1つ解決しただけではどうにもならない”複合汚染”。ゆえに課題解決には表面的ではなく用意周到でエネルギーが要る手術が必要な”複雑骨折”を挙げている。

上記の「不振企業にある三重苦」は不振企業でなくとも当てはまることが多く、組織変革もその解消を目的として立ち上げられるものが多いと思う。その「企業のイケていない」部分の分析に関しては非常に有用で納得感があるので、組織変革活動においての課題設定などに役立つと思われる。

しかし、後半の実践編は教科書的で示唆的な部分は多いが、経営が自らリードする切り口になっているのでその立場で変革していないと実践はなかなか難しいと思われる。残念ながら丸投げされるだけのケースも多いので。


ハーバードビジネスレビュー 企業変革の教科書

これは企業変革をテーマにした論文集で、10本の論文が掲載されている。論文集とは言っても事例や経営者インタビューを元にした論考がほとんどであり、内容的にあまり堅苦しくはなくスラスラ読める。

内容的には1990年代から2000年代の論文が多いためやや古いモノが多いが、経営者はどのように問題を解決していったかなど実例を多く知ることが出来るので、その点において有用な本である。

個人的に業務で参考にしているのが第9章に出てくる「DICEスコア」で、これはなかなか定量的に評価するのが難しい変革プロジェクトを数値で評価するフレームワークである。この評価法を使用することによりプロジェクトの進捗や成功確率をある程度予測出来るようになるので便利に使わせてもらっている。


両利きの組織を作る 大企業病を打破する「攻めと守りの経営」
(加藤雅則/チャールズ・A・オライリー/ウリケ・シェーデ)

最近、早稲田ビジネススクールの入山教授もよく口にする「両利きの経営」について書かれた本。

今までの本はどちらかというと組織論というか社会学的なアプローチで語られるものが多かったが、こちらは経営的観点から「既存の主力事業と新規事業を両立させる能力を持った組織を作るにはどうすればよいか」が語られている本である。

最近はどこの会社も新規事業開発に躍起だが、保守的な既存事業の組織カルチャーやガチガチの品質保証や開発プロセスなどにより、自由にスピードを持って新規事業を立ち上げるのが困難になっている側面がある。

それを「両利きの経営」として両立させるにはどうすれば良いか語られていて、組織カルチャーのマネジメントをする事によって実現しようというもの。

私の会社も主力事業に比べて規模も売り上げもゴマ粒のような新規事業が押しつぶされるというケースを何度も見てきた。この本ではガラスメーカーであるAGCなど両立に成功した企業での実際の事例からそれらを両立させるための組織作りについてロジカルにまとめられていてとても参考になる。


以上

(Last Update : 2021/4/7)

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