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声の魔法!🪄vol.12 抑揚を使いこなせ!

抑揚を使いこなせば話し方が変わる

前回投稿はこちら。

抑揚とは

「声の魔法!」では、話し方よりも「声」の変化に重点を置いてきました。高くしたり低くしたり、硬くしたり軟らかくしたり、呼吸や発音の見直しをしたり共鳴や滑舌の改善をしたり……それはとても長き道のりだったかもしれません。

言語聴覚士目線で考える、声や話し方の5つのチェックポイントのうち、残りひとつとなったのが「抑揚」です。プロソディとも言います。

5つのポイントのラストが「抑揚」

そもそも抑揚とはなんなのか。

私たちは声の高さや大きさ、強さなどの起伏をつけながら、声の調子を変えることができます。その変化のことをざっとまとめて「抑揚」と呼びます。AIの音声はよく「抑揚がない」と言われますよね。調子が一定で、高さや強さの起伏がない状態です。対して人の声は、様々な起伏に富んでいます。

声だけではなく、話し方にも着目しよう

抑揚は「声」だけの問題ではありません。あなたの話し方に関わるポイントです。最後の章では、この「話し方」にも着目しながら、効果的な抑揚の使い方を学んでいきます。なぜなら言語聴覚士もアナウンサーも、ことばやコミュニケーションのプロ。ことばもコミュニケーションも、発音や滑舌だけで成り立つものではありません。声の改善に加えて、効果的な話し方を身につけることができれば、あなたの声がより万人へと届くことになります。

あなたが話して終わり、というわけではありません。あなたの話を聞いた誰かが心地よくなるのか腹を立てるのか、理解してくれるのかそうでないのか、商品を買ってくれるのか見送られるのか、必ず何か先へとつながっていくもの。それがより良いコミュニケーションとなれば、とても嬉しいですよね。

「抑揚がある」VS「抑揚がない」の闘いなのか!?

先に答えを言ってしまいますが、抑揚がある方がいいわけでも、抑揚がない方がいいわけでもありません。これは以前もお話しした声のTPOと同じこと。抑揚をつけた方が効果的な場面もあれば、逆の場面もあるでしょう。

場面について考える前に、そもそも抑揚の変化とはどういうものなのか。以下の音声サンプルを聴き比べてみてください。

【原稿内容】「声の魔法をかけて、あなたの話し方を変えていきましょう。まず注目したいのが、呼吸・発声・共鳴・発音・抑揚の5つのポイントです。なおこのポイントは、下から順番に考えていくことが大切です」

いかがでしたか? 2つの音声は同じ声の硬さ、高さです。それでも受ける印象が違っていたかと思います。両者の違いを、もう少し詳しく見ていきます。

前者の音声サンプルは、以下のような注意点に気をつけながら読んでいました。日本語で話をする時、話し始めが一番高く、話し終わりが一番低くなる傾向があります。それを徹底したのが前者です。

前者音声は、高さの変化をつけた話し方

抑揚は高さの変化も含みますから、文章の話し始めが高く、話し終わりが低くなっているこの話し方でも、抑揚がない、というわけではありません。どこか落ち着いた印象を受けるこの話し方は、ラジオニュースを聞いているような、耳馴染みがいい話し方になっています。

対して後者の音声サンプルでは、ところどころを、前者よりもやや強調した話し方をしています。

後者音声は、高さよりも強弱や速度を意識した話し方

話し始めが高く、話し終わりが低いというルールを一部は守りつつ、ところどころ破っているこの話し方は、前者の音声と比べたら強い印象がありますが、人によっては「うるさい」と感じるかもしれません。

抑揚を変えて話してみた2つの話し方。さて、みなさんはどちらがお好みでしょうか。

抑揚を駆使して、声のTPOに合わせよう

T(Time:とき)、P(Place:場所)、O(Occasion:場面)の考え方は、以前も紹介しました。

音声サンプルが「声の魔法!」の売り込みプレゼンとするなら、前者はやや淡白に感じるかもしれません。後者の強弱を駆使した話し方の方が、「お! 面白そうだな」と、聴衆の耳にフックをかけてくれる可能性があります。

対してこれがオーディオブックだとしたらどうでしょう。この短い一部だけでなく、最後までずっと聞き続けることを考えるなら、前者の落ち着いた話し方の方が嫌味にならず、スムーズに耳に入ってきそうです。

このように、TPOが変われば話し方も変えていいのです。場面や目的に合った抑揚を味方につければ、あなたの話は、きっと相手の耳にも心にも届くでしょう。抑揚という魔法を使いこなすことで、同じ原稿でも、さらなる輝きをもった特別な話にアップグレードされます。

抑揚は高さや強弱、速さの集合体です。相手に刺さりにくいなと感じたなら、一度自分の音声を録音して、それらのポイントを見直しながら、ベストな抑揚を探してみましょう。

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