初めてのタバコは、思い出の味がした。

初めてタバコを口にくわえた。

私に取ってタバコは、おばあちゃんの象徴だった。
おばあちゃんの家に行くと、ぎゅーっとハグをすることが恒例。ハグのために回した腕のその先に、タバコを挟んでいるところまでが恒例だった。

喫煙者が全然いない親戚の中で、唯一タバコを吸っていたのがおばあちゃんだった。


10歳の時、今から10年前におばあちゃんは突然この世からいなくなった。

ピンピンしていたおばあちゃん。いつも笑顔でハグをしてくれて、私の大好きな茶団子を用意してくれていたおばあちゃん。

朝、おじいちゃんが起きた時にはもうおばあちゃんはこの世にいなかった。そのくらい、眠るようにいなくなったおばあちゃんを思って、今日泣いた。


韓国ドラマとアイドルが好きで、何度も私に話してくれた。おばあちゃんのガラケーをお姉ちゃんとデコった時、笑って喜んでくれた。マヨネーズを半分ぐらい入れてしまうおばあちゃんのポテトサラダが恋しくて、なな〜って呼んでくれるあの声を思い出すことができないことが悲しくて。

もうすっかりおばあちゃんのことを思い出さなくなった。忘れてしまったわけじゃないけれど、日常の中に溶けていっていた。


今日初めてタバコを吸った。

美味しくも、また吸いたいとも思わないタバコ。おばあちゃんが吸っていた銘柄も、何ミリだったかも知らない。

でも、おばあちゃんのことを思い出せるなら、たまには吸ってみるかと思った。

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