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パリでかくれんぼ

家の片付けをするようになってからモノを処分することに抵抗がなくなり、なんでもポンポンと手放していた私。けれども、とある記事を読んで、自分が処分してしまったことを後悔しているモノがあります。

それはズバリ映画関連の本やパンフレットなど。すごく思い入れのあるモノだったのに処分してしまったのは、いわゆる「捨てハイ」(なんでも捨ててしまうテンション)だったせい。もう二度と見つけることのできないかくれんぼをしてしまったのです。

実は、1990年代つまり20代の頃の私はヨーロッパ映画オタクでした。ちょっと反省の意味も込めて、私の映画遍歴について告白してみたいと思います。


夢の涯てまでも

私は、ヨーロッパ映画、特にフランス映画が好きで、いわゆる単館上映されているような「インディペンデント系映画」ばかりを1人で観に行く女子大生でした。

自分の趣味は自分のもの。好きなときに好きなだけ観に行きたかったので、友人や彼氏と行った記憶はそんなにありません。バイト代の多くは映画代に消えていたような気がします。

そして、フランスに2年留学。2年目は語学学校に加えて、大学の映画学科の聴講生として映画論や映画史を受講していました。そもそも留学したのも、将来はフランス映画の字幕翻訳家になりたいという夢があったから。とにかく映画に関わる仕事がしたいと思っていました。

バブルがはじける前の時代、就職していればまた違った人生になっただろうなと思います。でも夢の涯てまでも追いかけちゃったんですよね。別に後悔はありませんが。

とにもかくにも、フランスでは年間パスポート(めっちゃ安かった!)を買ってほぼ毎日映画館に通い、大学のビデオライブラリーでヌーヴェルヴァーグやネオレアリズモの映画を貪るように観ている学生でした。
「ハリウッド映画なんて観ないカッコいい」自分に少し酔っていた部分もあったことは否定しません。若気の至りってやつですね。いまはハリウッド映画も好きです。

コレクションする女

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日本では映画のパンフレットを買うこと、館内にあるチラシを1枚ずつ持ち帰ること、この2つが鑑賞後のルーティーンでした。
映画の半券とチラシは必ずファイリング。数えたことはないけれど、チラシの数は軽く1,000枚は超えていたと思います。

フランスにはパンフレットやチラシは存在しなかったので、上映中の映画のあらすじをまとめた紙を集めていました。しかもノートに貼って、映画の感想まで書いていたんですよね。

フランスの映画雑誌もよく買っていて、帰国するときは大きなダンボールにまとめて全部送ったのを覚えています。いま考えると、当時の映画への情熱はすごかった!

帰国後も同じようにパンフレットやチラシを集めつづけ、映画関連の本や資料は膨大な量に・・・収集癖もここまでくると、かなりのもの。まさにコレクションする女でした。

突然炎のごとく

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結婚後、共働きで忙しくて読み返す暇がなくても、育児で映画を観に行くことすらできなくなっても、3度の引越しをしても、絶対に手放すことのなかった本たち。

それなのに2年前の私は、突然「もう読まないから必要ない」と判断して、出張買取に来てもらい、あれだけ大切にしていた本たちを全部手放してしまいました。ちょうど整理収納アドバイザー2級の講座を受けて、いろいろなモノを処分していた時期です。まさに「捨てハイ」状態。

とはいえ、つい最近まで一度も後悔したことはありませんでした。後悔するきっかけは、私の学生時代を思い出させる記事を読んだこと。最初に浮かんできたのが手放した本たちでした。突然炎のごとく「もう一度読みたい」と強く思っちゃったんです。

タイムマシンがあったなら、2年前に戻りたい。そして「映画関連のモノだけは残しておきなさい」と言ってあげたい。

後悔しても仕方のないことだとは分かっていても、やっぱり後悔の念にかられています。特にフランスの映画雑誌は二度と出会えない気がするから。

そして人生はつづく

でも、もしライターになっていなかったら、こんなふうに思わなかったかもしれません。あの記事も読まなかっただろうし。

私が持っていた本たちは、買取業者にとっては1万円にもならないような価値しかありませんでした。けれどもあれだけの資料が手元にあれば、どれだけ映画の記事が書けたことか…
なんて、ちょっぴり色気が出ちゃうのはライターになったからでしょうね。

私が手放した本たちは「パリでかくれんぼ」でもしてるんだと思うことにします。未練はあるけれど、これからも人生はつづくわけですから、後悔ばかりしてもいられませんね。

でも、ときどきパリまで探しに行きたくなるんだろうな。

*タイトルと見出しは、映画のタイトルにしてみるという小洒落たことをしてみました。ちょっと文章に無理があるのはそのためです(笑)

このnoteに登場した映画の紹介だけしておきますね。


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