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短歌と和歌と

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中学生向けに和歌・短歌を語る練習をしています。短歌は初学者。和歌は大学で多少触れたレベル。
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#日記

あーんとゆーん

あーんとゆーん

 会議で遅くなった。
 家に帰ると長男(8歳)と長女(4歳)がシシリアンライスをつついている。次男(5歳)は夕食を早々に食べ終え寝ていた。
 風呂から上がって娘の食事を手伝った。たたみにくいレタスをスプーンに載せて口に運ぶ。娘は小さな口をあーんと開けて頬張る。米を運ぶ。あーんと頬張る。挽肉を運ぶ。あーんと頬張る。始終ニコニコしている。僕も笑う。おいしいねと笑う。あーんの口が一緒だったと笑う。
 食

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夏を感じる卯月のことなど

夏を感じる卯月のことなど

 6時半ごろ帰宅したら8歳の長男がピアノを弾いていた。上手いねと誉めたら失敗ばかりだったよと口をとがらせた。
 幼稚園は自由登園だった。だから下の二人は一日妻といて夕飯以外のやるべきことは大体すませていた。一方長男は小学校の後にずっと遊んでいたらしい。妻がイライラしている。ピアノの後は英語のレッスンと学校の宿題。長男はちっとも始めず遊んでいる。妻ががなる。
 仕方が無いから僕はお尻をかいてる長男に

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【新古今集・冬歌11】嵐の気配

 車中で3歳の娘が突然クイズを出した。
「これなんでしょうか」
 どれやねん。
「いちばん、うさぎちゃん」
 おお可愛い。
「にばん、うま」
 ちょっと距離を感じるな。
「さんばん、ユニコーン」
 こないだぬいぐるみをあげたもんね。
 まあ仲が良さそうな一番が正解だろう。
「うさぎちゃんだ」
「ママさんば~ん」
 妻が参戦した。
「ぶぶーはずれー」
 違ったらしい。
「せいかいは、うまとユニコーン

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【新古今集・冬歌4】寝ぼすけ息子・朝の月・紅葉と筏士

【新古今集・冬歌4】寝ぼすけ息子・朝の月・紅葉と筏士

 息子たちは朝が弱い。目がなかなか覚めない。目が覚めた後もご飯を食べる手がゆっくりだ。
 小学2年生の長男が通う小学校までは徒歩で30分ほどかかる。一昨日は7時30分に家を出て学校到着刻限の8時に間に合わなかったらしい。昨日は7時25分に出たが間に合わなかった。冬の寒さで足が遅くなっているようだ。

 ご飯を食べるのが遅いのは身体が目覚めないからかもしれない。そこで今朝は6時20分にベッドから引き

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【新古今集・冬歌3】紅葉のダム

 朝、三歳の娘が赤ちゃんになった。
「わたしはあかちゃんだからだっこして」
「きみはさんさいだから、あかちゃんじゃないよ」
「ちがうの、わたしはあかちゃんなの」
 娘は「わたし」を滑舌よく言う。「た」が強めだ。
 本人が赤ちゃんだと主張するなら仕方が無い。抱っこして燃えるゴミを捨てに行った。
 ゴミ捨て場にはネットがかかっていた。娘とゴミで両手が塞がっていた僕は少々困った。すると娘が手を伸ばしてネ

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7月19日(月) 最後とは知らぬ最後

7月19日(月) 最後とは知らぬ最後

 娘(3歳)が唐突に「娘ちゃんはパパと結婚する」と宣言した。

 感動もしたが混乱もした。「これがあの伝説の・・・」という気持ちを抱いた。一方で発言の脈絡の無さに心のもっていきかたを見失った。

 見失っている間に娘は踊り出す。当然のように僕は王子さまだ。娘をくるくる回す。すると次男がくっついておんぶをせがむ。長男がパンチを繰り出す。結婚はどこに行った。

 子どもの成長には脈絡が無い。こちらが気

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7月17日(土) 期末試験

7月17日(土) 期末試験

 本日まで期末試験でした。生徒は今日終業式で、明日から夏休み。生徒たちはマグマのようなテンションを抱えて試験と向き合いました。僕はそんな彼らを眺めながら監督し、午後からは採点開始です。

セミのなく声すら遠い教室は熱気渦巻く夏休み前
例えば君 投網で池を掬うように全ての範囲を復習してれば
問いを読めもう一度言う問いを読めその行その文字ああなぜ読まぬ

7月15日(木) ゴミ捨てと梅雨の月

7月15日(木) ゴミ捨てと梅雨の月

 昨年からゴミ捨てに次男(五歳)と娘(三歳)がついてくるようになった。置いていくと泣く。何が君たちを駆り立てるのだ。

 梅雨の時期を迎え、道ばたでカタツムリを見かけることが増えた。彼らは白いガードレールの上にいることが多く、そういうものたちは見つけやすい。五歳が見つけると喜んでつつき、落とす。

 雨は続く。晴れの日もある。ガードレール上でカタツムリを見かける日も見かけない日も経験した。夜の内に

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7月13日(火) 甑島計画

7月13日(火) 甑島計画

 夏休みに県外に出るのはリスクが高いということで、去年に引き続き県内に引きこもることにしました。引きこもるといってもここは鹿児島。「ハワイに行けないなら離島に行けばいいじゃない」という田舎貴族ムーブが可能です。

 今年はとりあえず甑島に行くことにしました。去年も県内なら旅行することは可能だったんですけど、夏休みが四日間しか無かったんですよね・・・。GWより短い夏休みってなんやねん、僕は休校期間中

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7月4日(日)僕のかき氷と崇徳院の秋

7月4日(日)僕のかき氷と崇徳院の秋

 街角でかき氷を買って食べた。地元の名物だが、昨年は食べられなかった。
 柔らかな氷に梅のシロップがたっぷりとかかる。シロップは思ったより甘みが抑えられており、刺激になら無い程度の酸味が涼やかさを増す。
 大きめのカップにあふれるほど盛られた氷だが、泡雪のように軽く、口をつければ冷えた空気を吸うほどの抵抗感しかないまま消えていく。旨い。

アステカの都で王が食べてたら多分神話になるこの氷



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7月3日(土)

7月3日(土)

 今日は梅雨らしい1日だった。朝から駐車場の屋根を叩く雨音が激しくて、驚いた妻がカーテンを開けた。
 あんまり雨が激しいといっそ清々しくなる。屋根も壁も木も花も、全部水に洗われて仕舞えば良い。雨上がりの直後はきっと、世界が一番綺麗な姿になるはずだ。

書を捨てて森に出かけよ世界中で一番綺麗な水を見つけに

 焼酎が無くなったので買いに行った。
 なじみの酒屋には、普段見かけない銘柄や夏だけ販売され

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7月2日(金)

7月2日(金)

 今日の夕ご飯はビビンバだった。

 チャーハン系が好きな長男、米なら何でも食べる次男はがっつく。しかし最近米を食べない娘は一口食べて吐き出して、妻と喧嘩した。きっと米の間にあるもやしが気に食わなかったんだと思う。
 怒った娘は僕の胸元に飛び込んでしゃくり上げる。文脈を無視して頬ずりする僕を妻は叱らない。僕を見上げる娘の瞳は涙で濡れていて綺麗だ。

つやつやの涙と君の唇がとがっているのと丸めたおて

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6月21日(月) 僕と西行の老い

6月21日(月) 僕と西行の老い

 梅雨の気配が遠くなった。空は雲を浮かべているけどわりと青い。今年の梅雨は降る日と晴れる日のけじめがはっきりしているみたいだ。

 昨日、父の日参観で幼稚園に行った。次男は僕の似顔絵を用意してくれていた。息子の頭に残る僕が笑顔であることにホッとした。

 こめかみが赤い。赤いというか、赤の何かがほとばしっている。なんだか無口な東洋系の凄腕スナイパーに狙撃されたみたいだ。
 幼稚園の先生が「似顔絵の

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6月15日(火)

 今日はテスト。出来るすべてのことをやり尽くした生徒も、出来ることをやりきれなかった生徒も、とりあえず来ただけの生徒もいる。

99点を失点1という君の平均97点

テストにてあくびをしたり正体が不明な罪悪感を背負ひて

跳ねたるも横たわれるも落ちたるも昨夜は汗を吸いしシャーペン

かき上げて答えが見えるわけも無き前髪憎む君の手黒し