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WWD Japan -July 2020



WWDの取材内容

5月掲載予定がコロナの影響で延期、加えて内容も変更され新しい企画として7月掲載へ

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 以下、取材依頼文
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「海外で活躍するファッション業界人」特集の件、編集方針の変更や他の特集との調整などがあり、たびたび修正点が出たため遅れました。
掲載号は、7月6日号となりました。つきましては、紙面制作のため以下を追加でお願いできますでしょうか?

1、以下、新型コロナウイルスの影響についてのコメントのご回答をお願いいたします。
・新型コロナウイルスは、ご自身にどのような影響を与えましたか?
・コロナ禍ではどのような生活をされていましたか?
・その期間のお仕事は、どのように進められましたか?
・その期間の一番の困難は何でしたか?
・その困難に対して、どのように乗り越えられましたか?
・ご自身の心境や価値観の変化、お仕事に対する考え方の変化はございましたか?
・実際に今はどのような作業をされていますか?(今秋物の最終チェック?)
・コロナ後に向けて、どのような新しいビジョンや目標をお持ちですか?



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 以下、回答(ほぼコピペ)
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XXX様(WWD取材担当者)、

お世話になります。

コロナ禍の状況への返答前に、少し補足が必要だと思います。

僕の本職はデザイナー兼モデリストです。

しかしそれだけではなく、

ブランド立ち上げ
オートクチュールブランドのアトリエチーフ勤務(5年間ほど)
コレクション構成、コンセプト
素材探し、アイテム制作(←一応ここが本職)、多数のサンプル縫製、
生産管理(フランス、および海外生産)、および品質管理、
パリコレ、ランウェイのオーガナイズ、
海外での展示会やランウェイのオーガナイズ
展示会での日本の顧客の対応、
世界のトップセレクトショップとのやりとり
etc…

現本業は↓ブランドのCTOです。

https://satisfyrunning.com/

パリ在住13年間で様々なことを経験して、技術、知識、色々なことを培ってきました。


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 ここからが本題ですが
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WWD様の前半のいくつかのご質問は本質的に知りたい内容が少し捉えにくく、正直、答えに困ってしまうのですが…(←正直に「何が聞きたいのかわかりにくいです」と言ったつもりw)

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もちろん、パリはコロナですごい影響を受けた都市の一つですので、生活面で大変だったことは多々あります。
安易に外出できなくなったり、普段会っていた友達に会えなくなったり、飲みに行けなかったり、しかしそんなことは世界中一緒ですので、何の価値もない話だと思います。

二人の息子がいますので、彼らも含めた家族での24時間常に共に過ごす生活もいろいろありましたが、今振り返ると楽しかったことが多いです。

困難といえば、長男のフランスの学校の在宅テレワーク授業のサポートでした。
現地校で小学生ですでに難しいレベルなので、仕事の合間の時間で一緒に勉強している感じでした。語学は本当に奥が深いです。

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仕事はもちろん在宅テレワークでした。

職場(アトリエ)が近く、一人だけ出勤が可能という融通の効く場ですので、週一回はアトリエへ行っていました。

困難とは感じませんでしたが、大きな変化はありました。
変化せざるを得ない状況に一気に陥って、弊社ではめちゃくちゃ早い対応をしました。

世界中のトップセレクトショップとのビジネスに重点を置いていましたが、「Direct to Consumer ブランド」 へと舵きりをしました。

具体的には、

『Wholesale 80% : 自社ECサイト 20%』 の売り上げ比率を、
『Wholesale 20% : 自社ECサイト 80%』 への逆転に強制的に移行しています。

もちろんすぐに 自社ECサイト の売り上げが跳ね上がるわけではないのですが、
これまで他の部分で消費していたエネルギーと資本を、自社ECサイト運営に一気に注力しています。

功を奏して、決定した3月中旬から7月現在に至るまで、いい感じで推移してきています。


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ここで最も重要なことは

『変化への対応』です。

今回のコロナ禍で一番感じたことは、ナニかに固執していては淘汰される。
柔軟に対応し、変化し続けることの必要性と重要性です。

おそらく、今回のコロナショックでパリにアトリエを構えている多くの小規模のブランドは経営危機に陥る(陥っている)と思います。
自転車操業している会社は多いので、残念ながら、リアルに潰れる会社は相当数あると予想しています。

コロナ以前のビジネスモデルは通用しません。
パリファッションウィークが開催できなくなり、世界中からのバイヤーが来れませんから。
シンプルに商品を売る相手がいません。
今現在(2020年7月7日)、パリオンラインファッションウィークというものが開催されているのですが、受注展示会に関しては未だに「これだ!」というビジョンがありません。
それぞれオリジナリティで持って世界を表現してはいますが(ここでもオンラインで能力の差が歴然と表れています)、実際に収益にどう繋がるかは、よく言っても未知数で、正直に言うと懐疑的です。

そもそも、世界の状況を見ると、パリやイタリアのハイファッションどころではありません。
そんなことに今世界は関心はないですよね。

今、ブランドが生き残る術はD2C(Direct to Consumer)しかありません。

『ファンを抱えるブランドになること』です。

コロナ禍で、sacaiが慌ててオンラインショップを開設しましたね。いい例です。
もう一度言いますが以前のビジネスモデルに固執していては淘汰されます。
実店舗に客が来なくなり、ビジネスパートナーであるセレクトショップもガタガタ。
となると生き残る道は実にシンプルに、一つだけです。
今回のsacaiの判断、変化への対応は真っ当で必然です。それしか方法はないのです。


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マクロで見たビジネスモデルの変化同様に、ミクロで見る、様々な職種に於いても同じことが言えると思います。

『柔軟に対応し、変化を受け入れ、自身の意識や考えも常に変化させる』

僕は幸運にも様々なことを経験してこれたおかげで、コロナ禍でデザイナーやモデリスト業務が少なくなっても、
生産管理と品質向上業務に在宅テレワークで集中できて、今回のコロナ禍を逆手にとってビジネスモデルチェンジし、ダイレクトに購入される顧客の満足度を上げることに注力できました。
その業務形態の変化と並行して 自社ECサイトに常に新しい風を吹かせ充実させるために、ニュープロダクトの制作や、他ブランドとのコラボレーション企画が、一気に進み始めていて、
実はパリのロックダウン3月中旬から今に至るまで、僕はそれ以前よりも格段に、めちゃくちゃ忙しいです。(今回の返信が遅くなってしまったのはそのためです、本当に、本当に申し訳ありません。)
#言い訳
#ずぼらなだけ
#絶対バレてる


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WWDさんの
「コロナ後に向けて、どのような新しいビジョンや目標をお持ちですか?」

と言う質問に対しての本業での回答は、シンプルに『ファンを増やす』です。

作ったモノの良さを一番よく知っているのは作った本人です。つまりブランドやその組織自身です。
そのブランド自身がダイレクトに顧客やファンに売る能力が必須なのです。

日本ではモノを作るのは得意だけども、それを売るのが苦手という組織をよく見かけますが、非常に勿体無いと思います。

作品や商品の制作と同時に、「ブランディング」「マーケティング」「広告」それら全てを同時に機能させる必要があります。

それをできるチーム組織、ブランドがこれから勝ち残ります。


2020年6月26日、パリにて。
à paris, le 26 juin 2020

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