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【アンナから学ぶ】〜あなたが望む現実の作り方

音楽家育成塾~KotaroStudio

Netflixのリミテッド・シリーズ「令嬢アンナの真実」
非常に興味深いドラマだったのでレビュー。
アンナから学べることをまとめます。
途中からネタバレに繋がる内容もあるため、ネタバレラインは後述します。

リミテッド・シリーズとは、シーズン1で完結する短い海外ドラマ
海外ドラマとあんまり長い付き合いをしたくない方
シーズン2、3に繋がるドラマで次回作まで待つのがしんどい方
土日だけ引き篭もってさっとみたい方などにおすすめです。

令嬢アンナの真実 とは

2018年6月、Netflixとションダランドは
アンナソローキン(主人公)の物語と
ジェシカプレスラー(ドラマ内にメインで登場するジャーナリスト)によるニューヨークの記事
「アンナデルベイがニューヨークのパーティーの人々をだました」
の権利を取得。

2022年2月11日から
「InventingAnna(令嬢アンナの真実)がNetflixで初公開されました。

ここから事件の事実ですが
同時にネタバレに通じますのでも注意してください。

実在した詐欺師

アンナソローキン(ロシア語:АннаСорокина ; 1991年1月23日生まれ)は、米国で有罪判決を受けた詐欺師です。

2013年から2017年の間に
アンナ・ソローキンはアンナ・デルベイという名前でドイツ出身の裕福な相続人のふりをしました。

2017年、彼女は米国の銀行、ホテル、知人を騙し
合計275,000ドルを詐欺で騙し取ったとして逮捕されます。

彼女は2019年ニューヨーク市で窃盗未遂、2度の窃盗
およびサービスの盗難等で有罪判決を受けました。

この実在した詐欺師と実際に起こった詐欺事件を追うドラマとなっており
どのようにしてこの巨額なマネー
275,000ドルも奪っていったのかについて話は進んでいきます。

もちろんアンナから学ぶといっても
詐欺師ですので犯罪者であり、悪いこと。
しかし、もう少し進めてみてください。

わらしべ長者?

ドラマ序盤では
アンナ・デルベイがニューヨークの社交界でのし上がっていく様子が描かれており、華やかな世界が登場します。

彼女はドイツの裕福な家庭の御令嬢という身分を装い
ニューヨークの社交界に溶け込んでいきました。

若干ニュアンスは違いますが
紹介が紹介を産み、また紹介を産み
どんどん社交界のトップまで進んでいく姿は
まるでわらしべ長者でもみているかのようで非常に楽しめます。

「エリザベス・ホームズ」との類似性

アンナ・デルベイで思い出すのは
アメリカの詐欺史に残るエリザベスホームズ。

当時女性版ジョブズとも呼ばれ
製薬会社セラノスの創業者エリザベスホームズ(Elizabeth Anne Holmes)。

エリザベスホームズは
2003年スタンフォード大学の化学工学科の2年の時に大学を中退し
少量の血液で200種類以上の血液検査を迅速かつ安価に出来る
医療ベンチャー企業のセラノス社を創業。

2014年6月に投資家たちから380億円を調達。

同社の時価総額は一時9000億円に。

株式の過半を所有する創業者のホームズは
「自力でビリオネアになった最年少の女性」として話題になりました。

後にそんな技術が存在しないことが判明し
2022年1月3日にカリフォルニア州サンノゼの裁判所で陪審は
投資家に対する詐欺罪と通信詐欺罪3件の計4件について
有罪評決を出しました。
判決は2022年9月26日に予定されており
最長で禁錮20年の刑が言い渡される可能性があるとされています。

こちらはアンナ・デルベイの27万5000ドルとは比較にならないほど巨額です。

Netflixでは未配信ですがエリザベスホームズも映画化されています。

なぜ起こる?アメリカの資金調達文化

こういった巨額の詐欺が横行するのには
アメリカという国の資金調達文化と起業家文化にあると考えられますし
令嬢アンナの真実でもアメリカの起業家、社交界の様子が細かく描かれています。

米国のIPOされた上場企業にもよくある話ですが
米国の起業家、企業に求められることは
ストーリーをいかに語れるかということに尽きると言えます。

実際にバランスシートが無茶苦茶でも
まだプロダクトができていなくても
サービスが開始されていなくても
ストーリーを語ることができれば
株価は上がって(お金が集まってくる)いくわけです。

2020〜2021年に米国市場でブームになったSPACなどは
その典型と言えるのではないでしょうか。

ストーリーだけで資金は集まり
結局なんだったのかわからないまま消えていく企業は山ほどあります。

その中にはセラノス社やアンナのような
かなりグレーな企業もたくさんあるでしょう。

アンナ・デルベイの物語でも
アンナ・デルベイ財団という企画を立ち上げますが
ニューヨークの社交界や富裕層が見ているのはその企画の中身ではなく
「誰と関わっているのか」
「誰がバックについているのか」
「どんな人脈があるのか」など
その内容はどうでもいい様子。。。がしっかりと描かれています。

つまりアメリカンドリームとは
まさにストーリーと夢にお金が集まるということが
この作品でよく描かれています。

アンナは本物の起業家なのか?

ここから先は作品のネタバレも含みます。

ドラマの裁判シーンでも弁護士が語っています。

インスタ映えという言葉がある通り
現代に生きる私たちは多かれ少なかれSNSで盛っています。(嘘をつく)

自称女性Vtuberは男性がやっていたりは当たり前
偽名じゃないアカウントを探す方が大変なほど。

しかし、戸籍上の性別は男性でもそのVtuberは女性かもしれませんし
親が決めて国に登録した名前は違うけど
私の名前は〇〇(アカウントで使っている名前)であると誇りを持って生きている方はその名前こそ真実と言えます。

嘘の境界線〜シナトラのエピソード

何を持って嘘、何を持って真実というのか。

フランク・シナトラのコンサートでは
事務所のマーケティング部が雇った女性に失神の演技をさせ
ライブ会場には事前に救急車を手配していたと言われています。

シナトラは客の女性を失神させるほどの人気だという記事は
当時多くのメディアで取り上げらることになります。

フランスのパリで活躍した作曲家、マイアベーアは
客を集めるためにバイトを雇って会場を埋めていたと言われています。

格式あるクラシックのコンサートでは舞台袖で拍手の呼水係がいます。
(そのアンコールは本当に皆が望んでいるのでしょうか?)

アンナはドラマの中でも最後まで
ドイツの御令嬢アンナ・デルベイを演じ続けていました。

「もうちょっとだった。(もうちょっとで真実だった。)」
とも言っています。

彼女は裁判の最後まで「自身は起業家である」ことを熱望していました。

弁護士から「自分の嘘を信じ込んでいるのか」
と言われるまで彼女のストーリーの中ではあくまで
ドイツの裕福な御令嬢だったわけです。

作中でもアンナ・デルベイが資金調達のために語ったストーリーは
しっかりとして芸術財団のストーリーでした。

この辺りが非常にポイント。

どこまで本当でどこからが詐欺なのか?

視聴者によってその境界線が微妙にずれて受け取れる点が
非常に面白いポイントの一つとなっています。

信託財産の存在が証明できれば資金調達ができ
財団が立ち上がっていたかもしれないわけです。
アメリカの起業家が誰かから信頼を得るために
人脈を駆使して一時的な見せ金を口座に記帳するというのは
もしかするとよくある話・・・なのかもしれません。

アンナから学べること

ここからはそんな詐欺師:アンナから学べることを考えていきます。

学べると言っても彼女は判決が出ており
実際に犯罪者であり詐欺師ですので
彼女の行動そのものを肯定することはできません。

しかし、彼女のストーリーから
一部抽出して学べることはたくさんあると思います。

先入観で否定せずに、しっかり森を見てみましょう。

きのこを探す目的で森に入った人は
本当の森の姿をみることができません
ただ森で遊ぶ人には動物、植物など様々なものがみえ
本当の森の姿をみることができる
これが先入観のある人とない人の違いです

お釈迦さま

学べること1:飛べばパラシュートは現れる

最後までアンナの心の支えとなっていた友人のネフは
アンナと過ごした中でアンナから
「飛べばパラシュートは現れる」と言われます。

アンナはすぐに寝てしまうのですが・・・

このあたりからアンナの地位はすべて嘘だと視聴者に悟らせています。

ここからがとても重要。

この友人ネフは映画監督を目指しながら収入を確保するために高級ホテルの従業員として働いていました。
アンナとはここで出会うわけですが
ネフはチップもたくさんもらえう優秀な従業員。
映画監督になりたいという夢を持ってはいますが
そこそこちゃんとした収入を確保できているため
現状に満足してしまっています。

最後のシーンでこんなことを言っています。
「私は映画監督よ。今から辞職届を出してくる」と言います。

ネフはお金(巨額の制作費)がないから映画が撮れない
「あなた(巨額の信託財産を持つアンナ)とは違うのよ」
と愚痴をこぼしていましたが
アンナの行動力に触発されスマホで映画を撮り始め
映画監督になる様子も描かれていました。

飛べばパラシュートは現れるというのは
非常に私たちに刺さる言葉と言えるのではないでしょうか。

あなたがやりたいこと
今やろうとしていること
本当に命をかけてやっていますか?

筆者はアンナからこんな風に言われているような気がして
自分の人生を思い返すきっかけになりました。

芸人の世界もそうですが、音楽、芸術全般
収入を補うための副業がいつしか本業になってしまい
背水の陣じゃないからいつしか芸の道が副業
または趣味になっていってしまう。

だから本気で売れたい芸人はバイトしないと言われています。

命懸けで行動し、進む
そして本当にパラシュートなしで
上空数万メートルから飛び降りる肝っ玉
(肝っ玉は作中での弁護士の日本語訳での表現)。

そんな彼女のマインドもまた
ニューヨークの社交界の人々が
彼女に惹きつけられた一つの要素と言えるのかもしれません。

わたしたちが今、行動しない言い訳は何一つありません。
例え上空数万メートルでパラシュートを持っていなくても
飛ばないことの言い訳にはならないのです。

友人ネフのように、いろんな言い訳を作って
チャレンジすることをやめていませんか?

  • お金の問題

  • 家族の問題

  • 介護の問題

  • 友人や恋人の問題

現実のスカイダイビングではパラシュートを装着して飛び降りて。

でも、思考の世界では飛べばパラシュートが現れる。
そんな経験を一度してみると、挑戦することの壁は随分低くなるはず。

一度飛んでみて。
パラシュートが本当に現れる体験をしてみてください。

学べること2:コンフォートゾーンの作り方

人間の脳のシステムの一つとして
Comfort Zone(快適なゾーン)という言葉があります。

これは主に心理学用語ですが
私たちは現状維持、快適に過ごせる領域というのを
あらかじめ決めてしまっています。

例えば富裕層が突然生活レベルを下げることができなかったりするのも
このシステムの影響だと言われています。

日本での平均的な賃金で平均的な暮らしをしている人が
突然今日一泊数百万のホテルに泊まっても
逆に広すぎて居心地が悪かく感じたりするのもこの仕組みのおかげです。

ただしこのComfort Zoneの心理を利用し
一泊数百万円のホテルに滞在することが
『日常であると脳を錯覚する』ことができれば
その世界観に脳が自動的に追いついていくという現象が起こります。

これが俗に言う引き寄せの法則です。

ペーパーハウスの
アリシア役ナイワ・ニムリさんのこんなコメントが光ります。

「洋服が似合うコツはあなたがその洋服を着ることを受け入れること」

アリシア役ナイワ・ニムリさん

【徹底解説】ペーパーハウスのキャスト

ペーパーハウス 挿入歌〜Bella ciao ピアノソロアレンジ

アンナは作中でも弁護士から「自分の嘘を信じ込んでいるのか!?」
と言われたり、視聴者ですら、これはもしかして本当なのか?
と思わせたり
もしかすると・・・と
ジャーナリストをアメリカからドイツまで
取材に向かわせたきっかけを作るほど
つまり周りまで本当だと信じ込んでしまうほど
「ドイツの超富裕層の令嬢であり巨額の信託財産を相続し、お金は大富豪の父が送金してくれる」と信じ込んでいました。

それはアンナの中ではすでに真実として脳が認識していた、完全な現実であり、実際にアンナが脳内で引き寄せた現実は実現化する寸前まで動いていました。
それほど信じ込んでいた様子が描かれています。
いえ、信じ込んでいた・・・ではなく、現実なのです。

一連の社交界での栄華はまさにアンナが持つコンフォートゾーンに引き寄せられて現実化したものだと解釈できます。

こういった引き寄せの法則や思考の現実化などは
決して怪しいセミナーや団体などではなく本質とはいかに脳を騙すのか?

そして騙された脳はそれを真実として受け入れてくれるのか?

真実として受け入れた脳はその思考を現実の世界として投影する
というものです。

アンナ・ソローキンの行動、言動、思考力は
まさに引き寄せの法則そのもの。

彼女は作中でも「ドイツの超富裕層の令嬢であり巨額の信託財産を相続し、お金は大富豪の父が送金してくれる」という立場を何がなんでも崩さず
これが現実である自分を守り抜きます。

それが彼女の脳にとっての真実だったからです。

ここが引き寄せの法則の大きなポイントです。

「ドイツの超富裕層の令嬢であり巨額の信託財産を相続し、お金は大富豪の父が送金してくれる」ような存在になりたいという願望が実現することはありません。

どんな自分になりたいのか?
考えても現実化するのは『なりたいと願っている自分』です。
本質はそこじゃないんです。

「映画監督になりたい」自分というのは
映画監督になりたい自分(なりたい願望があるということはなっていない)を脳が受け入れます。
ところが『私は映画監督(になる)』という現実を脳が受け入れた場合は
それが真実となるわけです。

ルフィーが『海賊王におれはなりたい』と言っていたら
違和感感じますよね?
おれはなると断言しています。

コンフィデンンスマンJP プリンセス編でも
主人公ダー子に次のようなセリフがありました。

私たちはなんにでもなれる。
なりたいと思ったものになれる。
本物も偽物もない。
信じればそれが真実。

コンフィデンスマンJP プリンセス編

学べること:3 身の回りのレイチェルに気をつける

自称アンナの被害者の一人という立場で登場するレイチェルという女性。

作中では陪審員の判断により
アンナはレイチェルの件では無罪となっていますから
実際は被害者ではありません。

しかし、彼女のような存在は
人生の中で出会う機会が非常に多いと言えます。

どんな存在か?は見てのお楽しみ。

最後までアンナの友人だったネフが語るように
レイチェルを一言や二言では説明できません。

学べること:4 カンファレンスコールに注意する

2020年から日本でも米国株投資がブームとなりました。

2022年からは日本の各証券会社なども
米国株強化年と題し、取扱銘柄などを積極的に増やしたりしています。

アンナの物語はもちろん、セラノスの詐欺事件もそうですが
米国の起業家文化や、社交界はストーリーと夢物語で
実際に進んでいきます。

ストーリーにお金が集まる国、それがアメリカです。

ストーリーと夢物語を語るのがうまいCEOがたくさんいますし
そのストーリーに人々は熱狂しますが実際は経営状態が悪く
未来が明るくなかったりする企業はたくさんあります。

財務担当の出すEPS予想と現実の数値が乖離していないか?

実際のバランスシートとCEOが語るストーリーが乖離しすぎていないか?

など改めてこれらの重要性を実感させられるきっかけとなる点も
このドラマの見どころかもしれません。

あなたの投資先はストーリーで決めてしまっていませんか?

まとめとおまけ

華やかな金持ち物語、詐欺事件のドキュメンタリー風ドラマに留まらず
彼女の失敗やマインドから何か学べることはないか?
というメッセージ性の強い構成にも注目です。

シャトーペトリュスのコーラ割り?!

最後に・・・旧ソ連からドイツに移民として移住した
アンナ・ソローキンのお父さん回想シーン。

レストランでシャトーペトリュスのダイエットコーク割
というのはお酒好きな方にとってはかなり衝撃的なシーンとなります。

結局最後まで謎のままにされた点が
アンナ・ソローキンと父との関係性でした。

ジャーナリストはアンナの過去に父と何かあったのではないか?
と疑っていましたが、結局明らかにされずじまい。

アンナとお父さんの間には何か深い闇があるように示唆するシーンは
多数登場しています。

リミテッドシリーズということもあり
週末にさくっとまとめられる令嬢アンナの真実。

おすすめのNetflixドラマの一つですので
是非みなさんも彼女の嘘の境界線を引いてみてはいかがでしょうか。

追記:出所後のアンナ・ソローキン

2019年4月に8つの容疑で有罪判決を受け3年の服役が確定し服役。

2022年10月時点では自宅軟禁状態とのことです。

アンナは足首のモニターに加えて
保釈金として1万ドルを支払、滞在先の住所を提供。

さらい近況をSNSに投稿しないということに同意しています。

そのため、アンナ自身の投稿を見ることができるのは
まだまだかなり先のことになるのかもしれません。

アンナの広報担当者は次のようにコメント。

「アンナは今、成長し、恩返しし、出会った人々にポジティブな影響を与えるというコミットメントを示す機会を得ているのです。
彼女の前にはハードルがありますが、彼女は自分の経験と教訓を生かし、強さと決意を持ってそれを乗り越えていくでしょう」と、前向きなコメントをしている。

アンナの広報担当者

ニューヨークのアパートに到着したアンナは取材に応じ
今後の予定について尋ねられます。

「わからない。ただ待つしかないわね」とのコメント。

ニューヨーク・ポストが伝えています。

ニューヨーク・タイムズの記事では
アンナは有罪判決を不服としており、ポッドキャストを制作中。

刑事司法改革に取り組みたいと考えているとも伝えています。

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