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OODAに感じる「張り詰めた空気」

わりと発売したばっかりの本なのだけど、『OODA LOOP』を読んだ。「PDCA、PDCA」と念仏のように唱えている人からしたら、新たな宗派が出てきた感覚かもしれないが、考え方としては新しいものではない。

世界トップクラスの会社や優れたデザイナー、スタートアップ経営者、起業家にとっては、「重要だが、だからこそ当たり前の考え方」に感じると思う。他方、一般的な会社員の人にとっては最初はあんまり理解できないかもしれない。

僕としては、最初の軍の話のところはさーっと読んで、その後から読んでまた戻ってとした方が早く理解できると思った。頭からじっくり読んでると「あれ、思ってた本とちょっと違うかな」となりそう。あれだな、『失敗の本質』に似た感じがする。あの本の方が難しいけど。

OODAとは何か

OODAとは「Observe(観察)」「Orient(情勢判断)」「Decide(意思決定)」「Act(行動)」で構成される。アメリカ海兵隊で採用されたもので、これによりアメリカは湾岸戦争などで大きな成果をあげた。

改善行動自体が、プロセスに組み込まれている感じがする。詳しくは書籍をチェック。

一方、PDCAについて改めてざっくり整理すると、「Plan(計画)」「Do(行動)」「Check(評価)」「Action (改善)」の頭文字をとったもの。

PDCAはビジネスにおいてあまりにも有名で、たぶんあなたの仕事場でも耳にすることがあると思う。だがこれがあまり有効ではないと考えられ始めている(これについては後ほど触れる)。

OODAの基本コンセプト

ずばり、「アジリティ」だ。アジリティを一言二言で表してみると、機敏性と柔軟性と言えるだろうか。なお、アメリカ陸軍の軍事ドクトクリンでは次のように記載されている。

アジリティとは迅速かつ容易に移動し適応する能力である。.......戦術のアジリティとは、味方兵力が敵よりも早く反応することができる能力のことである。その本質は、主導権を獲得、保持し、利用していくことにある。.......
                         『OODA LOOP」p.119

ざっくり言うと、OODAを高速で回せてる方が一方よりアジリティが高い。競合相手にアジリティで劣る場合、チームや組織は混乱に陥るんだそうだ。物理的にも心理的にもディスアドバンテージ。一瞬一瞬で後手に回ることが積み重なると、どんどん「負け」に追い込まれる。

ミニマムな思考錯誤

OODAの「D」が気になった。意思決定だ。選択肢A、B、C....と出てきた時に、どれを選べ良いだろうか。もちろん「観察」と「情勢判断」の時点でミスっていたら元も子もないのだけど....。

普段から精度を極限まで高める訓練が必要だとは思う。インプットを絶やさず、アンテナを張り巡らし、洞察する。だけど、僕の性格的なものも影響してか、「意思決定をミスったらどうなるんだ。時間をくれー、じっくり考えさせてくれー」と思ってしまう。あなたも意思決定という言葉には少なくともそんなイメージがないだろうか。

その発想がそもそも間違いだと思った。一発の意思決定で決めようとしている発想が。

「ミニマムに試し、瞬時に調整する」が重要な意味を持ってくる。特に、「ミニマムに試す」が相当大事だと思った。すごく粒度の高い矢印をイメージしていたけれど、もっと小さい。なんだかリーン系手法が大切にしていることを改めて理解できた気がする。

PDCAが役に立たないとき

仕事の性質が「0→1」に近いほど、PDCAは役に立たない。規模の大きな話でいうと、新規事業開発や起業がそれにあたる。機能しない理由は簡単で、計画者が計画するために必要な情報がないことの方が多いからだ。

もともとPDCAはアメリカで考案されたのち、生産現場で活用されていたものだったと思う。継続的改善を目的としたもので、言い換えれば、ある程度定型的な仕事に対して適用する(もちろんそれはそれで重要だが)。

僕は曲がりなりに新規事業開発、起業じみたことをしたことがあるが、情報も何もないところから始まる。本当に何もない。ならどうすればいいのか。情報を集めるしかないし、鋭く観察するしかない。すばやく意思決定をし、仮説を検証し続ける。これをグルグル回し続ける。

その意味では、厳密には分離できないかもしれないけど、「OODA」はゼロイチで、「PDCA」はゼロジュウみたいな感じで一旦捉えても良いかな〜と個人的には思う。

おわりに

OODAについてざっくり学んで感じたのは「張り詰めた空気」だ。考案された背景が背景というのもあるが、圧倒的なスピード感と、緊張感がある。

それはビジネスにおいても同じで、ちんたらしていると競合があっというまに先にいく。後手に回り、心理的なプレッシャーがかかる。さらには、資金がなくなっていく。....このあとはどんどんひどいことが起こる。

たぶんスタートアップの人たちは日々かなりの緊張感の中、事業を成功させるために、成長するために頭を高速回転している。普通に会社に勤めていたら、想像もできないスピードで。普通の会社員が同じレベルでやるには、相当な「自分ごと化」が必要じゃないだろうか。

「張り詰めた空気」をすぐに感じとれたのは僕が一応それっぽい経験をしたからだと思う。正直、いろいろ辛い思いもした。自分の落ち度について考えると、結局、あの頃ぼくは「自分ごと化」しきれなかった。

少し、昔の話をしてしまったけど、OODAを組織的に実践するには、組織文化をつくることが必要不可欠で、全く簡単なことではないと思う。今度これについて書く時は、「OODAの組織文化醸成」について考えてみよう。



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