予想通りに不合理

お礼にお金を渡したらむしろ損をする?社会規範と市場規範

タダより高いものはない……という言葉がありますが、無料であるということはそこに何か理由があるものです。

例えば恋人関係であれば、お金の関係でないならそこには愛情があるでしょう。

ボランティアであれば、親切心やもしくはそういう経歴を作りたいという打算的な理由があるかもしれません。

このように、タダだからといって一番価値がないのか……というと全くそんなことはなく、むしろタダだからこそ価値があるものもあるので、今回はそういった話を以下の本を参考に話していきたいと思います。

無料と有料

先程少しあげたように、無料だからこそ価値があるものって結構ありますよね。

有料な恋人関係なんてあまりいい気持ではないですし。

また、こんな実験もあります。

1セントの普通のチョコと、15セントの高級チョコを並べて「おひとりさま、ひとつまで」という張り紙を用意します。

この高級チョコは通常30セントくらいで、普通のチョコは相場くらいなので、お客さんはそのお得さを理解して、約73%のお客さんが高級チョコを買いました

次にチョコの値段を少し変えて同じ実験をします。

高級チョコは14セントに、普通のチョコは無料にしたのです。

すると、同じ金額だけ下げたのに、普通のチョコをとる人が約69%まであがりました。

無料にしたことで普通のチョコの価値がある意味上がったわけです。

こんな風に、有料と無料とでは大きな違いがあります。

社会規範と市場規範

とはいっても、普通のチョコの方が高級なチョコより価値が高い……と単純に比較してしまうとなんだか違和感があります。

価値と一言でいっても、いろいろな基準がありますからね。

例えば、そのもの自体は高級なものの方が価値が高いです。

その分値段は高いですが、最初の実験では割引率が高かったので、「手に取られる」という意味でも高級チョコのほうが価値が高かったです。

しかし、次の実験では「コストなし」で手に入る普通のチョコの方が手に取られました。

コストがない……つまり無料と言うのは、また別の基準なわけです。

このように見る基準によって価値は変わりますが、大まかに2つに分けることができます。

社会規範…お金がからまない基準
市場規範…お金がからむ基準

チョコの例でいうと、お金がからむ「市場規範」で考えている間はいわゆる「合理的な判断」で考えられていましたが、無料のもの……つまりお金がからまない「社会規範」が混ざると突如意見を変えました。

社会規範は、お金に変えると案外高くないのに、大きな価値でとらえられることが多いです。

むしろ「お金に変えられない価値」みたいに言われることがあります。

愛情だってお金に変えたら陳腐なものになっちゃいますからね。

ですので、社会規範と市場規範を同じ土俵で比べるときには注意が必要ですし、一歩間違うと悲惨な目にあうこともあります。

ボランティアはあくまでボランティアであることに価値がある

例えば、たくさんデートをして貢いできた男性がいたとします。

その男の人が、ついに魔が差して、「今までたくさんお金を使ってきたんだし、そろそろ少しくらいこっちに気持ちを寄せてくれても…」なんて内容の話をしてしまったとしたら……どうなるかは想像できますよね。

きっと「愛情をお金で買おうと思っていたの!?」と愛想をつかされてしまうでしょう。

今ではデートをお金で買うことができますが、それはあくまで「市場規範」でのトレードであり、そこに愛情は含まれていません。

一方愛情は「社会規範」の中で取引されるものです。

この2つの規範を一緒にしてしまうと、こんな感じで大事故が起こってしまうので、注意が必要です。

他にも例えば、ボランティアをしてくれたAさんがいたとします。

そしてAさんに「ほんの気持ちですが……」といって少額のお金を渡したとします。

このとき、Aさんの頭の中は、社会規範から市場規範に切り替わってしまいます。

すると、社会規範上では単なる親切心だったのに、市場規範上で考えるとめちゃくちゃ低賃金で労働をしている気分になり、Aさんは急に損をした気分になる……ということが起こります。

これがもし現金ではなく、ちょっとしたプレゼントだったらまだ脳が社会規範の中でおさまっていたかもしれませんが……現金を渡したことで、渡す前よりむしろ状況が悪化するという不思議な現象が起こってしまうわけです。

これは、何か手伝いをしてもらったときも同様です。

引っ越しの手伝いをしてくれたからといってお金を渡すより、何かおいしいものでもおごってあげた方が喜ぶでしょう。

予想どおりに不合理

以上のように、市場規範に社会規範が入り込むと、なんとも不合理なことが起こることがあります。

お金は市場規範のスイッチであり、案外市場規範では多くの者が安く見積もられているので、注意が必要だ、ということは覚えておいてください。

このように、予想可能な不合理は世の中でたくさんあり、それを研究する分野の一つが「行動経済学」です。

ちょっと興味があるけどがっつり勉強するのはなぁ……という方には、今回参考にした本はぴったりだと思いますので、ご興味あればぜひ手に取ってみてください。

ps

サービスも無料と有料には大きな壁があります。

YouTubeももし有料だったらたとえ10円でもほとんどのものを見なくなると思います。

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