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書評 166 「マルクスが日本に生まれていたら」

共産主義について書かれた様なタイトルだが、そうではない。
出光興産の創業者、故出光佐三氏が自社の経営を評価するための比較対象として、資本論を読み解く。従業員らとの問答形式で、進んでいく。

資本論を賞賛するものでは全くない。評価すべき点は素直に評価するが、問題点は指摘し、出光の経営理念と何が違うのかを表していく。

社会資本共有化で発展を図る点は認めつつ、方法論が階級闘争に帰結する点、単純平等を目指す点を主に批判する。

前者は平等を目指しながら、その手段が階級差別である矛盾。これは欧州人の価値観が元にあると佐三氏はいう。この辺りは鯖田豊之「肉食の思想」と重なる主張。加えて、日本人には滅私奉公というか全体最適を良しとする素養がある、との佐三氏主張。後者は機会平等が正しいとしている。

佐三氏の理想とする社会には未だにたどり着いていない。

今の社会が良しとすることが本当に正しいのか。それを考えさせられる一冊。


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