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書評170 「小隊」

自衛官の経歴を持つ芥川賞作家による戦争小説の小編3作をまとめている。

2編の主人公は元自衛官の傭兵で、紛争地で任務に就く。戦闘場面も描かれるが、主人公がなぜ傭兵という職業を選んだのか、様々な背景を持つ傭兵仲間たちとのやり取りを絡めながらの心情表現が続く。

表題作は北海道にロシア軍が進行してきた設定。若い幹部自衛官が小隊長として前線で戦う描写に臨場感あり。被弾した部下の姿など生々しい表現も迫るものがあるが、自陣内の壕を移動していく様子や無線でのやり取りなど、戦闘の場面を形取る映像が浮かんでくる。いくら自衛官とは言え、著者にも実戦経験は無いだろうが、もしかしたらあるのではないかと思わせる。ばら撒かれた自衛隊内用語もそれを強めている。

表題作から受ける印象が強すぎて、その後にくる2編はなんだか物足りない様に感じるが、それなりに読み応えはある。

戦争美化の真逆を行く、前線で戦う悲惨さを表した一冊。


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