書評 187 「新約聖書を知っていますか」

阿刀田高さんの「旧約聖書を知っていますか」を読んだところ、とても読みやすい上に旧約聖書の概要がすんなりと頭に入ったので、新約聖書版も読んでみた。

こちらも読みやすく、新約聖書の構成の解説もあるので、旧約聖書と比較して読解の困難さがどこにあるのかもわかる。４つの福音書と伝道者たちの手紙を束ねた構成に加え、イエス以降のキリスト教布教において、あるべき若しくはあって欲しい事象。それをあったものとしての加筆について、書いた者の間で整合性が取られていないことが難しさを生んでいる。

また、聖書和訳において、一つの単語を文字通りの意味では伝わらず、意訳にすると訳者によって大きく変わってしまうことを指摘している。そもそも宗教書である上に、残されているイエスの言葉は例え話など聞く側がどう捉えるか迷ったであろうことが多い。これが訳者を悩ませるのだろう。

信者で無い著者だから書けた、客観的に新訳聖書を概観できる一冊。

阿刀田高 『新約聖書を知っていますか』 | 新潮社