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書評 171 「日本中世史の核心」

歴史小説は実在の人物を主人公に仕立て、史実と創作を絡めながら物語を展開する。その面白さが多くの読者を集めるが、創作が史実との勘違いを呼ぶ面がある。
一方、歴史書は、専門家である著者の解釈を加えながら史実が綴られる。しかし、なかなか読者を集めるのは難しい。読んでいて面白く無いから。

本書は著書とメディア登場ともに多い歴史学者である本郷和人さんの17年前の著書の文庫化。日本史の中でも比較的関心が薄い鎌倉から室町時代を中心に、中世史を題材にしている。その構成は8人の人物の像を描くことで歴史を追う。

人物を取り上げて、その行動はどの様な背景で起こったのか。何や誰に影響されて、その行動に至ったのか。そして、その行動は何を生み出したのか。連ねたその人物の人生で、彼らは一体何をしたかったのだろう。確かに歴史書なのだが物語の短編集の様に読める。

中世史の学び直しと共に、人は他人の人生に興味を抱くことがわかる一冊。


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