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書評 186 「功利主義入門」

功利主義は一般常識レベルでは全体の利益最大化のために個人を犠牲にする様に思われている。実際、トロッコ問題(5人を救うのに1人を自分の意思で犠牲にするべきか)はその端的な問いかけだろう。

その様な面を持って始まった思想ながら、その後の多くの思想家、研究者が派生的な理論を生み出し、現在では単純な議論に収まらないことが本書でわかる。

そして、副題に「はじめての倫理学」とある様に、「倫理」とは何なのかまで展開している。幸福を追い求める、最大化するのが目的。そこに到るまでの道のりの取り方には様々な態度があり、一見合理的なようでも、視野を拡げると完全では無い。では、どの見方を正とするのか。そこは読者への問いかけになっている。

といっても平易な文章で綴られており、難解では無い。むしろ新書の200ページでよくぞこれだけの内容をカバーしたものだと感じる。

幸福とはそもそも何なのか。思考訓練の素地をくれる一冊。


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