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書評 168 「みんなの民俗学」

民俗学には地方に伝わる民話や習俗などの歴史背景などを調べ、考察するイメージがある。それも確かにそうだが、民俗学の対象は遥かに広いと著者は言う。喫茶店のモーニングや大学内の七不思議など、いくつも事例が挙げられる。現代の日頃の暮らしの中に民俗学のテーマは溢れているそうだ。

国全体で統一化されたルールや権威に裏付けされて誰もが正しいと認識している常識。それらは通常合理的なものとされている。しかし、現実にはその合理性に沿わないにも拘らず、人々の間に広く浸透している事象がある。これら全てが研究対象になるらしい。民の中で俗に使われていることやものだ、と。それをヴァナキュラーと呼ぶ。

著者は大学教授なので、学生に「自分の周りのヴァナキュラーを探そう」と課題を与えると、我が家だけの習慣を出してくる例が多いらしい。なるほど。

人間とは合理性だけで動くものではなく、日頃の暮らしも案外変化に富んでいると気付く一冊。


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