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CIID Week7: 自然に倣う未来のデザイン ~ Design Across Biological Scale

先週に引き続いて、今週も従来の「人間中心デザイン」とは異なる「生命中心デザイン」に関連するコースである、”Design Across Biological Scale”を実施しました。

「自然に倣う」「生命中心」というと何だか綺麗事のような聞こえ方もしますが、何かをデザインする際に今回学習したプロセス・フレームワークを組み込むだけで、デザインの世界観が広がるような感覚があったコースでした。今回は簡潔にまとめてみたので。ぜひご覧ください。

未来のデザインは自然・生命に倣う必要がある?

そもそもですが、なぜデザインを考える時に「自然に倣う」必要があるのでしょうか。何となく「環境に良さそうだから」や「地球温暖化を防ぐことができるから」といった答えが聞かれそうですが、今回の授業でもう少し深く考える必要があるのかな…と認識しました。

少し話が外れてしまいますが、デザインやデザインシンキングの文脈では、やはり「人間中心デザイン」を思い浮かべる方が多いと思います。実際、人間中心デザインは現在のビジネスで多く取り入れられている手法ですし、先端テクノロジーと組み合わせて、人間の潜在的な欲求や動機をよく捉えた、革新的なソリューションを生み出していることも確かです。

一方で、近年では同様の手法を取り入れて、人間に取り入れられる多くのサービスやプロダクトが生み出されていますが、その裏では競争環境が増しており、せっかく生み出された素晴らしいプロダクトやサービスが数年の内に消えてしまっていることは理解に易いかと思います。

ではこのまま「人間中心」のプロダクトやサービスが増え続けていった場合、世の中はどうなってしまうのでしょうか。自分は、人間がもっとわがままになり、さらに捨てられるプロダクトやサービスが増え続けてしまうと考えています。これは文字通り、サステナブルではありませんし、使うリソースの量を考えると、無駄が非常に大きいと思います。

この文脈で自然環境を考えてみると、非常に上手く植物や動物、昆虫等が一つのエコシステムの中で相互作用し、生きていることが分かります。例えば、ある動物が死んだ際には、その血肉が他動物の食料となり、また土壌に栄養を与え、微生物が繁殖し、土が肥えることで植物が成長し、昆虫に影響を与える・・・という一連の循環が生まれます。動物や昆虫という一つの生命体でみると分かりにくいのですが、それぞれがエコシステム繁栄という意味で何らかの役割を担っており、結果的にそれがサステナブルな環境を可能にしています。

今回紹介する”Design Across Biological Scale”では、46億年の中で自然が得た上記のようなシステムをデザインの中に取り入れることで、よりサステナブルなプロダクトやサービスを志向することを学びました。以降は、プロセス別にまとめています。

自然に倣うためのフレームワーク

今回学習したフレームワークとそのポイントはざっくり以下のようなものです。この次の章では、実際に辿ったプロセスを説明します。

Step1: Define the Context/Function

あくまでデザインシンキングなので、解決したい命題とその状況(Context)を定めます。状況を設定すること自体は難しくないのですが、本質的に何を実現したいのかを深掘り、最終的に実現したい機能(Function)を特定するところまで考えるので、骨が折れます。例えば、「環境に優しいエアコンを作る」といった命題があった際には、「環境に良いエアコン⇨(温度を下げるために)空気を乾燥させる目的で熱を使わないエアコン⇨熱の消費を抑えな
がら空気を乾燥させる機能を実現する必要がある」というように言い換える必要があります。

Step2: Discover Natural Model
このプロセスでは、上記で考えた機能を「自然環境の中で誰がその機能を実現しているのか(Mentor)」を特定します。本来であれば、Mentor(植物や動物など)を深く観察・リサーチした上で、対象となる植物や動物などを特定するのですが、今回は2日間のプロジェクトだったので、インターネット検索に頼りました。

Step3: Abstract Biological Strategies
次は対象となる植物や動物などの機能を、デザイナーが真似できるレベルまで翻訳します。生物学の知識が要らない程度まで機能を翻訳しますが、ただの比喩表現にならないように注意します。最終的にはデザインしたい機能が一文で表されていることになります。

ここで機能が比喩表現になってしまうと、ただの「自然に感化されたデザイン」になってしまいます。Neri OxmanというMIT Media Labの方がこの分野の第一人者で、それはそれで非常に優れたデザインの一種なのですが、究極的には「だから何なのだ」という問いを生むような気がします。

あくまでサステナブルな未来を作ることが目的となる場合には、しっかりと生物本来の機能を明確に捉える必要があります。

Step4: Brainstorm/Emulate Design Principle

最後にデザインしたい機能に基づいてブレインストーミングを行います。姿や形が対象としていた生物に似通っている必要はありません。一方でブレインストーミングした結果、本当に生物の機能を真似ているか検証するために、後続で紹介する”Life Principle”に即して評価します。

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“Life Principle”とは、「本来どんな目的で生物がその機能を保有しているか」を一覧化したモノです。例えば、カメレオンが擬態するのは、天敵から身を守るためであり、それは上記写真中の”ADAPT TO CHANGING CONDITIONS”に該当します。生物が生態系の中で暮らしていくために必要な機能の一種であり、それに即することが”Design Across Biological Scale”の目標となります。

Step1: Define Context/Function

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今回自分たちに与えられたテーマは、簡潔に言えば「死という文脈で生命の循環を捉えたデザインを考える」ことです。5人1組で2日間のプロジェクトを行いました。

少し抽象的なテーマなので、これまでと同様にチームメンバー全員でテーマに対する認識を揃えることからスタートします。主に「死とは何か」について考えてみたのですが、最終的には下記のように5つのテーマ(Economy, Online Presence, Preparedness for human death, Material, Death of City)に絞られました。

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次のプロセスで、状況(Context)を考える必要があることを考慮して、何となく全員で認識が揃っていた「Death of City」チームとしてのトピックとすることになりました。

実際に設定した状況(Context)ですが、チームメンバーの何人かが映画”The Day After Tomorrow”の洪水のシーンで、都市が破壊されていく様子を連想しており、理解に容易かったことから、次を状況(Context)としました。実際にジャカルタのような都市では、既に都市の沈降化が始まっており、あながちあり得ないテーマではないと思います。

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最後に未来の洪水都市といった状況で、何が問題となっていそうか(その結果、どんな機能を自分たちは実現したいのか)を連想しました。ここはこれまでと同様でデザイナーとして解決したいモノを考える瞬間だったので、合意するまでに4時間余りの時間を必要としました。結果的には、”Co-Exist with Ocean Life(水を中心とした生活)”と”Cultural Cohesion of City People(都市破壊後の文化的な繋がり)”をグループとして実現したい機能(Function)として定義しました。

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Step2: Discover Natural Model

この後は、デジタル環境下にいることを考慮して、グーグル検索で”Mentor(実現したい機能を体現している生物)”をリサーチしました。ここで紹介されたのは、”Ask Nature”と呼ばれるサイトで、まさに実現したい機能を入力すると、多くの学術的な文献とMentorとなりそうな生物が出てきます。ぜひ活用してみてください。

自分たちはリサーチの結果、”Peatland Filtration”と”Floating Mats”という面白い生物及び生態系を発見したので、これらをMentorにしました。

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Peatland Filtrationは上記写真の通り、ある生態系のことを表しており、浮いている植物と微生物が相互に補い合って、環境全体を成り立たせています。植物や土の中に生息している微生物の密度の大きさにより、水中に生息できる生物が変わるのです。まさに前ステップで掲げた”Co-Existing”という機能に即していたので、迷わずにMentorとしました。

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一方でFloating Matsは、その名の通り浮草を表しています。この植物は、その根が川底に根差しているため、風や水の流れによって川を自由に浮遊することができます。こちらは、”Cultural Cohesion of City People(都市破壊後の文化的な繋がり)”の繋がりの部分に即していると考えられたので、Mentorとしました。

Step3: Abstract Biological Strategies

次ステップでは、実際にこれら2つのMentorがどんな機能を保有しているのかを翻訳します。ここでは、自分たちは生物学者であるわけではなく、また実際にこれら生物を観察したわけではなかったので、深いレベルでその機能を把握することに苦労しました。しっかりその機能を把握しないと、ただの「自然に感化されたデザイン」になってしまうので、本来であれば、多くの観察やリサーチをする必要があります。

一方で時間的な制約もあり、ここでは非常に薄い機能の理解となってしまいました…が、何となく翻訳のコツは掴めたような気がします。最終的に特定したことは以下の通りです。分かりやすく翻訳すれば、「海水を真水に変えることができるフィルター機能を活用して、生物的多様性を生み出しつつ、文化的な繋がりを生み出す機能」となります。

- Peatland Filtration: A porous floating matrix that uses plants and microorganisms to metabolize nutrients in the water. Slow Decomposition of plant material by microorganisms, resulting in high carbon accumulation facilitating biodiversity

- Floating Mats: A system of roots that holds something together even as it becomes dislocated from its natural habitat.

Step4: Brainstorm/Emulate Design Principle

最後に定義したデザインしたい機能を実現するプロダクトやコンセプトをブレインストーミングします。これにはさほど時間を要しませんでしたが、自分たちの選んだ機能は、少し抽象的なこともあり、何か具体的なプロダクトを創るというよりも、コンセプトを考えることに終始しました。

自分たちのグループでは100年後の洪水都市の状況では、多くの人が浮島で生活しており、水や食糧難といった課題に直面しつつ、さらに物理的な繋がりも失われているだろうと考えていたので、これら課題を解決する浮島を、考えた機能でデザインしてみてはどうか…と結論づけました。分かりやすくコンセプトビデオをまとめてみたので、ぜひご覧ください。

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最後に

5日間でこのプロセスを追いきることは正直非常に難しかったのですが、デザインを考える際に生物を日常的に観察しておくことで、無意識的にインスピレーションを得られると認識しました。まずは自宅周りにある植物の観察から始めようと思います。

最後にこのコースのプロセスとポイントまとめを再掲しておきます。

Step1: Define the Context/Function
あくまでデザインシンキングなので、解決したい命題とその状況(Context)を定めます。状況を設定すること自体は難しくないのですが、本質的に何を実現したいのかを深掘り、最終的に実現したい機能(Function)を特定するところまで考えるので、骨が折れます。例えば、「環境に優しいエアコンを作る」といった命題があった際には、「環境に良いエアコン⇨(温度を下げるために)空気を乾燥させる目的で熱を使わないエアコン⇨熱の消費を抑えな
がら空気を乾燥させる機能を実現する必要がある」というように言い換える必要があります。

Step2: Discover Natural Model
このプロセスでは、上記で考えた機能を「自然環境の中で誰がその機能を実現しているのか(Mentor)」を特定します。本来であれば、Mentor(植物や動物など)を深く観察・リサーチした上で、対象となる植物や動物などを特定するのですが、今回は2日間のプロジェクトだったので、インターネット検索に頼りました。

Step3: Abstract Biological Strategies
次は対象となる植物や動物などの機能を、デザイナーが真似できるレベルまで翻訳します。生物学の知識が要らない程度まで機能を翻訳しますが、ただの比喩表現にならないように注意します。最終的にはデザインしたい機能が一文で表されていることになります。ここで機能が比喩表現になってしまうと、ただの「自然に感化されたデザイン」になってしまいます。Neri OxmanというMIT Media Labの方がこの分野の第一人者で、それはそれで非常に優れたデザインの一種なのですが、究極的には「だから何なのだ」という問いを生むような気がします。

Step4: Brainstorm/Emulate Design Principle
最後にデザインしたい機能に基づいてブレインストーミングを行います。姿や形が対象としていた生物に似通っている必要はありません。一方でブレインストーミングした結果、本当に生物の機能を真似ているか検証するために、後続で紹介する”Life Principle”に即して評価します。

“Life Principle”とは、「本来どんな目的で生物がその機能を保有しているか」を一覧化したモノです。例えば、カメレオンが擬態するのは、天敵から身を守るためであり、それは上記写真中の”ADAPT TO CHANGING CONDITIONS”に該当します。生物が生態系の中で暮らしていくために必要な機能の一種であり、それに即することが”Design Across Biological Scale”の目標となります。

町田

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ビジネスとデザインの融合。外資系コンサル⇨Copenhagen Institute of Interaction Design。コスタリカに在住。Photography/Videographyに挑戦中。主にビジネスとデザインの関係性について書き連ねます。
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