高校生にイタリア語の恋愛詩を教えてみた

 高校生に向けて授業をせよと依頼され、はてどんな内容にしたものかと悩んだあげく、イタリア語の恋愛詩を取り上げることにした。現代のイタリア男の口説き文句がSNSでバズったりしてたから、中世のイタリア男の甘美な詩句もたぶんうけるだろうと踏んだのだ。
 よく知られている?ように、イタリア男の口説き文句には、天使がよく登場する。実はこれ、中世末期に活躍した清新体派と呼ばれる詩人たちが「開発」した比喩的表現なのだ。というわけで、グイニツェッリ、ダンテ、ペトラルカという3人の詩人から、それぞれ一作品ずつ選んで紹介した。ついでに、高校生も知っているだろう(場合によっては好きかもしれない)シェイクスピアの作品にも触れた。シェイクスピアはもちろんイタリア人ではないが、イタリアの詩の影響下に作られたものとして彼のソネットを紹介したのである。
 授業ということで、課題も設定した。授業中に紹介した作品の中で、気に入った表現をいくつか選んでその理由を述べなさい、というものである。
 さて、授業後に寄せられた解答を見て驚いた。答えの内容がほとんど被らず、しかもみなそれそに優れた考察を含むものだったのだ。集まっていた学生はたぶん優秀だったのだろう。しかし普通は、優秀な学生こそ似たような解答になるのものである。ではなぜ、今回は優れた解答が集まったのだろうか?
 理由はもしかすると、課題の内容の方にあるのかもしれない。詩はそもそも、無限の解釈を許す文学ジャンルだ。だから好き勝手に解釈してもらっても、たいてい誤りになることはない。だから求めれるのは、正しい解答ではなく、面白い解答なのだ。
 こうして考えてみると、一見全く役に立たなそうな詩という芸術も、案外捨てたもんではないようだ。いやむしろ、答えなき問題に挑む力の教育が求められる現代にあっては、詩こそが最高の教材となる…かもしれない。


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