練習運営編ヘッド

強くなるための部活動マネジメント(練習運営編)

※アメブロに書いていた記事を加筆・修正しnoteに移植しました。

1.はじめに

高校での硬式野球、大学でのアメリカンフットボールの経験と、経営工学、経営学の視点を組合せて「人材的、環境的に不利なチームが勝つにはどうするべきか」について考えをまとめて書いています。

大きく5つに分けて考えをまとめています。

①戦術編

キーワード: 環境が不利なチームは環境に恵まれたチームと同じ戦い方をしても勝てない

②練習運営編(今回)

キーワード: 練習効果 = 回数 × 1回当たりの質

③システム構築編

キーワード: PDCAサイクルの回転速度と同時回転数を最大化

④文化構築編

キーワード: PDCAサイクルの1回転当たりの質を最大化

⑤人材獲得編

キーワード: 共感の獲得


主に高校野球の経験は①と②に、大学フットボールの経験は②~⑤に反映されています。
(アメリカンフットボールは戦術について突き詰めて考えるのは当たり前なので、あえて①には入れませんでした。)

前回の①戦術編はこちら

2.練習運営編本編

今回は練習運営編です。
ここでの内容を一言でいうと、「練習効果の最大化」です。

弱いチームが強いチームに勝つには、1回の練習で強いチームよりも上手くならなければなりません。

そのためには練習の効果を最大化する必要があります。

それでは練習の効果とはなんでしょうか?

練習効果を簡単に分解すると、

練習効果 = 回数 × 1回当たりの質

と考えられます。

例えば、

シュートの回数 × シュートの質

ドリブルの回数 × ドリブルの質

パスの回数 × パスの質

打球数 × スイングの質

泳いだ本数(距離) × フォームの質

走った本数(距離) × フォームの質

などが考えられます。

練習効果を最大化するには、(1) 回数(2) 1回当たりの質をそれぞれ最大化すれば良いということがわかります。

3.(1) 回数の最大化

回数をさらに分解すると、

単位時間当たりの回数 × (練習時間 - 休憩時間 - ムダな時間)

と考えられます。

このうち強いチームと弱いチームで最も差が出るのは「ムダな時間」です

例えば、一日3時間の練習のうち、ムダな時間が30分違うとすると、大学4年間での差は、(月20日、10ヵ月練習すると仮定した場合。)

30分×20日×10ヵ月×4年 = 24,000分 = 約133日分

の差が出てしまいます。

チームとして133日の練習の違いがあったら戦力差は相当開くことは容易に想像できます。

もし、練習内容が時間ではなく決まったメニューの本数で定められているとしても、30分練習を短縮出来たら、その分筋トレ、食事、勉強、ミーティングなどに回せるわけです。

そして、ムダな時間が発生した練習に関わっている人数が多ければ多いほどその影響は大きくなります。

部員50名の練習が何かしらのムダで全体が1分止まった場合、その影響は単なる1分ではなく、50人分の1分、すなわち50分のロスを起こしているという事になります。

多くの人数がかかわるメニューについては特にムダな時間に対しては敏感にならなければなりません。

ではムダな時間とはどの様な時間でしょうか?

色々と考えられますがいくつかその短縮方法と共に例を上げます。

3-1.無駄な時間の短縮方法アイディア

1.離合集散

・複数人で行う練習の体型が整うまでの時間
・逆に全員が一度一か所に集まるまでの時間
・一本練習を行って再び元の位置まで戻る時間
など練習中の移動に関する時間はムダな時間と言えます。

《短縮方法》
・基本的に離合集散をダッシュで行う。
・戻りながら休まない。
・休憩をするなら、ダッシュで戻ってから休憩をする。
など。

2.待ち時間
サッカーのシュート練習や野球のノックを想定してもらえば良いのですが、やっている人以外は自分の番を待っていることが多いと思います。
もちろん待っている間に他人のプレーを見て学ぶというのも重要ですが、基本的にこの待っている時間というのはムダな時間と言えます。

《短縮方法》
・ユニット単位を減らす(4人一組の練習を3人一組にするなど)。
・複数のグループにわけてそれぞれが違う練習を行う。
・一人1本ずつで交代していたのを3本連続でやってから交代するようにする。
・2つの練習メニューの効果を1つのメニューで得られるようにメニューを工夫する。
など。

3.説明する時間
新しい練習を導入するときは、その練習の方法などを説明する必要があります。
効率の良い説明をしていないとどんどん時間を使ってしまいます。
これもムダな時間と言えます。

《短縮方法》
・事前に説明できるところはメールや練習前のショートミーティングで説明しておく。
・説明が短時間でわかりやすいように図を使ったりや短いデモを行ったりして工夫する。
など。

ここで挙げたムダな時間はあくまで一例であり、常にムダな時間を探し短縮していく意識が重要です。

4.(2)1回当たりの質の最大化

次に練習効果のもうひとつの要素、1回当たりの質の最大化についてです

1回当たりの質を最大化するには、そのための思考を身に着ける必要があります。

重要なポイントとしてここでは4つ上げたいと思います。

4-1.モチベーションは十分か?
4-2.全ての練習メニューに対して事前に目的や課題を認識できているか?
4-3.全プレーに対して修正の意識を持ってできているか。
4-4.試合を想定できているか?

4-1.モチベーションは十分か?

イチロー選手が「やらされた百発よりも、やる気の一発」という言葉を残されています。

これは、強制的に百回練習をさせられて得られた効果よりも、自分がやる気に満ち溢れてやった一回の練習の効果の方が上だということです。

1回当たりの質を上げるためは、モチベーションが十分であり、ポジティブに練習に取り組みワクワクできているか、ということに気を付けなければなりません。

その競技が好きだという気持ちを大切にして、次はこんなことやってやろうか、というようなチャレンジ精神をもって目をキラキラさせながら練習に臨むことが重要です。

このようなモチベーションを常に持ち続けるのは非常に難しいのですが、

「なんで自分はこのチームで活動しているんだろう?」
「このチームで活動することが自分の人生にとって何の意味があるのだとう?」


という自分に対する問いかけを行い、悩んだ先に、

「このチームで活動している意味は○○だ!」


と自信を持って活動できる答えを見つけることができればモチベーションが高い状態で活動できるのではないかと思います。

自分一人でその答えを見つけることは難しいですが、一人で悩まずにチームメイトと一緒に悩んでそれぞれの答えや悩みを共有し合いながら考えてみてはどうでしょうか?

4-2.全ての練習メニューに対して事前に目的や課題を認識できているか?

「上達する」というのは「理想に近づく」ということです。

その為には、理想と現在の自分の技術を「客観的」に認識できている必要があります。

自分の今の動きは理想と比べてどうなのかを認識して、理想の動きになるためにはどのような意識をして取り組まなければいけないのかを全てのメニューについて理解しているかどうか、が上達のスピードを決めます。

客観的に認識するために必ず全てのメニューを1度はビデオを撮って、自分の動きを確認した方が良いです。

その上で、「なんでこのメニューをやるんだっけ?」という問いかけを意識してください。

メニューをやる意味、自分の課題を強く意識して行う練習は効果が大きく変わります。

逆にいうと、意味のないメニューはやめて、他のメニューを考えて方が良いです。

また、それぞれのメニューに対して「チャレンジング」で「数値化」された目標を設定するとより緊張感が高まった練習ができると思います。

・自分の課題である○○を意識しながら今日のシュート成功率を△△%にする。
・自分の課題である○○を意識しながら連続で××回成功させる。

など、頑張れば出来そうな目標を設定すると集中力が大きく高まります。

4-3.全プレーに対して修正の意識を持ってできているか。

理想を「客観的」に理解していても、最終的には「主観的」に理解するところまで落とし込まなければなりません。

つまり、自分で思った通りに理想の動きができる状態です。

これが理想だと思う動きを沢山試してみて、先ほど書いたビデオを使って結果を把握し、理想と違ければ次のプレーで修正を掛けて試してみることが重要です。

主観的な理解を深めるために、映像で客観的に結果を認識し、主観⇒客観⇒主観⇒客観のように主観と客観をこまめにすり合わせる意識が重要となってきます。

全てのプレーに対して毎回フィードバックをかける、ということです。

4-4.試合を想定できているか?

練習でできたことが試合で出来ない、ということは良くあります。それはメンタル面が原因という事もありますが、多くの場合、準備不足・想定不足が原因です。

試合の想定し準備するためには非常に多くのことを考えなければならないのですが、例として

・最初の一本
・周囲の状況のイメージ
・仮想対戦相手の動き
・フィニッシュ

について説明します。

《最初の一本》
例えば、サッカーやバスケットボールにおいて試合でのシュートというのは二度と取り返しがつきません。
当たり前ですが、外した場合にもう一度同じシチュエーションでチャレンジすることはできません。
そう考えると、例えば練習の1本目でのシュートを外してしまっては、その後練習でいくらシュート成功率が高くても、試合での最初の一本目は外す、ということになり試合で一度しかシュートチャンスが訪れなかった場合は一点も決められずシュート成功率ゼロということになります。
私は高校の時に「練習の始めの一発目で出せる力が実際に試合で出せる力だ」ということを良く言われたのですが、まさにその通りだと思っています。
練習の最初に如何に精度の高いプレーが出来るかということを、毎日緊張感を持って臨むことが質の高い練習に繋がると思います。

《周囲の状況のイメージ》
また、試合の時の周囲の状況をイメージしながら練習できているかというのも重要です。
試合の時の景色はどんな感じか、屋外なら風は強いか弱いか、天気はどうだろうか、屋内なら観客席までの距離や床の色など、しっかりとイメージしながら練習をすることが試合で練習通りのプレーをするために大事です。

《仮想対戦相手の動き》
練習での仮想対戦相手の動きも大事です。
仮想対戦相手として練習台になってもらっている人の動きは本当に相手を想定した動きになっているのか。
試合においてスピードやパワーでは通用しないことが想定されるのに、仮想対戦相手の実力不足によって練習で通用してしまうがゆえに対策を怠っていないか。
また、逆に仮想対戦相手を有利な状況にして練習を行なえば、試合の時に練習よりも簡単になるので非常に落ち着いてプレーできます。
このように仮想対戦相手の質が試合でのパフォーマンスに影響してくるのです。

《フィニッシュ》
最後に、しっかりと試合を想定した「フィニッシュ」ができているか、というのも重要です。
「フィニッシュ」とは、プレーの終わり方の事を指します。
例えばアメリカンフットボールでいえば、パス練習の時にレシーバーはボールをキャッチして終わりではなく、試合ならばその後エンドゾーンに向かって走るわけなので、練習でもキャッチの後に15ヤードはエンドゾーンに向かってダッシュすることが試合を想定したフィニッシュです。
(ちなみに練習効果の最大化の所で離合集散はダッシュでと書きましたが、つまりここではパスを取ってダッシュをし、また元の位置までダッシュで戻って休憩、という形になります。)
バスケットボールの例を挙げれば、試合ではシュートを打った後にはリバウンドがあるので練習のシュート練習でもリバウンドの構えを取るまでがシュート練習のフィニッシュと言えるのではないでしょうか。
このようにフィニッシュをしっかりとしていれば、試合で活きる技術を練習で身に付けることができます。

5.さいごに

以上が強くなるための部活動マネジメント練習運営編です。

次回はシステム構築編となります。

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