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アフリカ生活報告 〜愛車を修理しよう PART 1〜

皆さんはタイヤがパンクした車で、アフリカのデコボコ道を走ったことがあるだろうか。

私は先日経験した。

欧州系スーパーに買い出しにいくため、車で街を走っていた時だ。運転していたのは、私の運転手のヤビさん(仮名)、私は助手席に乗っていた。愛車は93年製のホンダRAV4。日本で乗っていると恥ずかしいようなボロ車だが、ここコンゴではむしろ綺麗な方。エアコンが故障という決定的な欠損を除いてはおおよそ満足している。

それがつい先日、なんらかの金属片を踏んでタイヤが盛大にパンクした。タイヤに空気が残っているうちに、一旦停車できそうな路肩を探して車を寄せた。外に出て確認した時にはもうパンケーキ状態。

エアコンが全く効かないのは窓を開ければいいし、シートに穴が開いているのは布を貼ればいい。でもタイヤがパンクしたら、タイヤを交換するしかない。30℃を優に超える炎天下、運転手と汗だくになりながら、その場でスペアタイヤに付け替えた。

窮地は凌いだけれど、できるだけ早く新しいタイヤに変えなければ、これがパンクしたら次はない。早く新しいタイヤに変えなければ。来週は自動車整備工場に行こう。

コンゴで車を修理する時にまず必要なのは「情報」と「ツテ」。ぼったくってこない修理屋と、大体の価格の相場感を知っておくことがとても大切になる。こちらに長く住む外国人に雇わている運転手のツテで、ある車修理ガレージを紹介してもらった。サービスの質が比較的高く、正当な価格でなければ外国人の客はつかない。もし適当な仕事をしていたら、すぐに噂が広まり客は離れる。外国人コミュニティでは口コミが回るのが早い。と言うことで、このガレージに行くことにした。

私が住んでいるのは、キンシャサの中でも外国人が多く住むGombeというエリア。そこから車で走ること約20分ほど、生活感溢れるエリアに、お目当てのガレージはあった。確かにあった。ありはしたのだが、これが想像していたのとはかなり違った。

ガレージと言うからには、何か倉庫のような建物の中に、車を持ち上げるリフトとか諸々の修理機材があって、油で汚れたつなぎのおっちゃんが車の下で作業をしている、そんな風景を想像してたが、実際は全然違った。

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この目の前にある、この「ガレージ」と呼ばれるものは、どう見てもただの民家。庭にもう何年も走っていないであろう車の亡骸が数台並べられているので、かろうじて車関係の何かなのだろうと分かる。家の前の道にも修理中の車が2台あると言うが、故障した車を放置しているだけようにもとれる。

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廃車が並べられた庭では、お母さんたちがせっせとお昼ご飯の準備をしていた。車の写真を撮ろうとすると、料理をしていたお母さんが作業の手を止めずに口を開く。”Il faut payer”「お金を払いな」とのこと。私が「他の日本人にも宣伝しとくよ」と言うと、少し迷って、「一枚なら」と写真を撮ることを許してくれた。

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奥の方からこのガレージのオーナーだと言うおじさんが出てきた。「ボンジュール」と感じのいい笑顔で言うと、僕の方に肘を突き出した。ここ1年でコンゴでもすっかり馴染んだ、肘と肘を当てるスタイルの挨拶を交わす。コンゴ 鈍りの弱い聞きやすいフランス語を喋るので、頻繁に外国人を相手にしているタイプのビジネスマンだと邪推した。

早速、車を見てもらう。「まずタイヤを交換したい」と言うと、「それならまずタイヤを買ってきてくれ。やすい中古屋が近くにある」とのこと。前もって予約してたのだからその時に言っといてよと思ったが、それは日本人的「当然」であって、固定観念に囚われてはいけない。

オーナーの車に乗って少し走ると、地元民で賑わうアフリカンバーベキュー屋台の前で止まった。中古タイヤ屋はその奥にあると言う。客に奇異の目を浴びながら奥に進むと、店の裏にタイヤの山が見えてきた。この中から私の車に合うタイヤを探し出すわけか。タイヤの型番を告げると、タイヤ屋のおじさんは黒いゴムの山に颯爽と登っていく。タイヤの型番を確認しては、軽々と放り投げて次を引っ張り出す。せめて種類ごとに積み上げておけばどれだけ楽か。この国ではあらゆる場面で効率性は二の次である。

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経年劣化したタイヤのゴム臭とその中に溜まった雨水の匂いが混じって、なんとも懐かしい匂いがした。大の車好きの父に連れられ、何度か実家の近くの自動整備工場に行ったことがある。巨大なリフトで車が持ち上げれる様子は圧巻だったな。

おじさんは、タイヤの山の上から指定した型番のタイヤを何個か放り投げた。私と運転手のヤビさんは、降ってきたタイヤの品定めをする。乱雑に保管された中古タイヤなので質はピンキリ。中にはかなり擦り減ってもう使えなさそうなのもある。運良くほとんど新品なものが2つあった。おじさんに値段を聞くと、1個120ドルだと言った。

「前来たときは100ドルだった。今日は外国人と来てるから、ふっかけてきてるぞ」とヤビさんが私に耳打ちした。なるほど、と思い、「1個100ドルだと聞いてここに来た。良ければ次もここに来るし、他の日本人にも紹介する」と言うと、「分かった。頼む」とすんなり100ドルで売ってくれた。すぐに外国人にたかろうとする精神が、かえってこの国の経済が成長するチャンスを損なっていると日々感じる。

支払いを済ませると、二人でコロコロとタイヤを転がして車まで運んだ。そうすると、近くにいた人が集まってきて、半ば強引に、積み込むのを手伝おうとする。手伝ってくれるだけなら、なんと優しい人たちでしょうで終わる話だが、心が薄汚れてしまった私は「どうせチップだろ」と思ってしまう。実際十中八九そうだと思う。私は、自分でできるから大丈夫、と断る。正直、じゃぶじゃぶチップを渡せるほど、キンシャサの生活費は安くない。

こうして、ようやく修理を始められる。私ちは2本の中古タイヤと共にガレージに引き返した。

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